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最低学力者たちは学校を征服するようです?  作者: 雪原灯
第1章 格上ランクは弱いです?
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新入生歓迎作戦③

 ルイとは昼休みに教室に来るように約束を取り付けた。ルイは口角を少し上げて、少し喜んでいたように見えた。


 というより、完全に喜んでいた。それも子供のように。去り際はスキップしていたし、鼻歌まで奏でていた。


「(まさか向こう側から入りたい、とはな…。寧々と同じだな。)」


 俺は征服委員会を立ち上げる当初のことを思い出していた。


 最初の征服委員会のメンバーが入った時のことだ。


 □ □ □ □ □


 俺が学校側から気に入られてないのはもう分かったし、むしろこの学校から退学になっていないこと事態、奇跡と言えよう。


 入学前の実力テストは英語だけ満点だった。それ以外は無事死亡した。いや、死亡させられた、の方が正しいか。


 前の学校で反抗的なことをしてきたという理由からか、俺のテストは改竄された。そして、ランクCへと入学を強制された。


 学力至上主義だったから、この学校に来た。しかし、そう謳いつつも全ては『学校に従順な天才』を作るためだった。


 その事実を知っているのは俺くらいだろう。みんなは「天才を作る工場」にしか思っていないようだ。


 隠された事実を知り、俺は怒りを通り越して呆れた。そして、そんな学校ならいっそ乗っ取って脳の改革をしてやりたい、と思った。


「学校を征服してやろうか…。」


 小さく呟いた。しかし、その決意は固い。


「へぇ〜、面白そうだねぇ。」


「我ながら見事な考えだろ?」


「うんうん。それ、私も入っていい?」


「はっはっはっ、もちろん…って、うわぁぁあ!!」


 後ろの方からした声に、遅延気味の神経が反応した。振り向いた先には長い髪を垂らした女のお化け…いや、幽霊が存在するはずがない。俺はきっと夢を見ているんだな。


「いまぁ、お化けとか考えたでしょ?」


「……ッ!!」


 そりゃあ長い髪が顔を隠すように垂れていたら誰だってお化けだと思う。むしろ、思わない方がおかしい。


 お化けは髪を手で分け、顔を出した。


「隣の席の玖有だよ?」


「なんだ、お前か…。」


「うわぁ、なにそれ〜!お前には興味がないゼ、的な反応!いくら幼馴染だからってヒドイよぉ…ぐすん…。」


 手で目元を抑えて泣き始める。もちろん、嘘泣きだ。こいつが泣くことはまずない。むしろ、泣かされる。


 それくらい、寧々は恐いし、怖い。小学校の時からその情報取集能力、もといストーカー力は非常に高い。ちなみに当時の担任の彼女が隣のクラスの担任の彼女であることを突き止めたのも寧々だ。


 担任間が修羅場になると、クラス間でも修羅場になった。あの時の悲惨な状況は今でも忘れられない。


 問題はそれだけじゃなかった。その2人の彼女は途轍もなくブスだったのだ。寧々は修羅場の中、2人の大人を弄り…いや、イジメ始めた。


 グサグサと刺さるような言葉を投げかけ、ついに担任達は泣き崩れた。「もうやめてくれぇ!!」と大人とは思えないくらいに感情を剥き出しにして泣いていた。


 つまり、寧々はストーカー兼ドSという最悪な2つを持ち合わせたやつだ。


「お前の演技力には目を見張るものがありますわー、すごいすごーい。まじ、見習いたいわー。」


「やっぱり?分かってくれると思ったよ〜、あゆくんは幼馴染だもんね!」


 あと、「褒め言葉はそのまま受け止めてしま…受け止めることが出来る素晴らしい能力」も持ち合わせている。


 要するにアホの子だ。


「んで、用件はなんだ?」


「だーかーらー、その征服とやらを私もやりたいの!」


 こんな事があり得るとは考えにくいが、やっと寧々がマトモに人のことを考えられるようになったのだろう。少しだけ目頭が熱くなった。


「それは助かるし、ありがたい。ちなみに征服して、寧々は何がしたいんだ?」


「全部休日にするー!!」


 やっぱり、ただのアホの子だった。


 □ □ □ □ □


 昼休みになり、購買でパンを買った後、教室に戻ると教室の外に生徒が集っていた。みんな、「ヤバイヤバイ」と言いながら不安そうな目で教室を覗いている。


 遠くから中を覗くと、寧々と山上が論争をしていた。正直、いつものことだから放っておけばいいのだが、これでは作戦会議ができない。


 それにそろそろルイも来るだろうし、あまり初回から悲惨な状況を見せたくない。向こうから申し出てはくれたが、これを見て逃げ出す者も少なくない。


 ちなみにソースは設立から1ヶ月ほど経った時に刀を持った寧々と相変わらず銃を持った山上がガチ喧嘩をした時の俺自身の経験だ。今すぐにでも退団したかったが、何とか気持ちを抑えた。


 止めに入るために、普通を装って入ることにした。教室まで近づき入ろうとすると、生徒に止められた。


「み、峯崎!ヤバイって、いま山上と寧々が論争してるだよ!」


 しかし、それに気づかないフリをして、ドアを開けた。


「ほら、作戦会議始めるぞ〜。」


「あゆくん!今は女の戦いをしているから、突っ込まないでくれる?」


「峯崎っ!私はコイツを倒すために生まれたのだ…!入ってこないでもらいたい。」


 また厨二病みたいなことをほざいている。そろそろ、作戦会議を始めないと時間が足りなくなる。


 バチバチと火花を散らしている2人に近づき、その頭をめがけて一発かます。


「イデッ!」


「グッ…。」


 ゲンコツは見事に頭に命中した。


 2人はうずくまり、頭をさすっている。


「ほら、始めっぞー。」


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