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最低学力者たちは学校を征服するようです?  作者: 雪原灯
第1章 格上ランクは弱いです?
3/9

新入生歓迎作戦②

 ゆっくり目を開くと、そこは異世界だった。


 なんて、ことはない。うつるのは白い天井。いや、少し薄汚れた白だ。


 昨日のミッションは非常に疲れた。休憩を取るようにと自分で言っておきながら、今日の勧誘作戦のために作戦を練っていたら、いつの間にか朝が来ていた。


 急いでベッドに潜り込み、深い眠りについたはずだったが、時計は全く進んでいなかった。


 本日の睡眠時間1時間と少し。


 □ □ □ □ □


『通達

 2学年ランクC峯崎


 昨日はお疲れ様でした。

 今日はいよいよ新入生を引き込んでいきます。

 昼休み空いている者はいつもの場所に集合してください。』


 教室に着くやいなや、早速今日の招集をかける。目を通した数人がコッチに目で合図を送ってくる。


「さて…とりあえずは昼休みに下調べだな。」


「せやね。ということで、今日のお昼はあゆくん持ちで!」


「はいは…って、なんでだよ!」


 ピックアップリストを眺めていると、後ろから声をかけられた。寧々だ。


「いやぁ、だって…ねぇ?」


「よくわからないからスルーな。」


「えっ!?ドライブスルー!!私、モックのポテトL、たった5つでいいよ!」


「こりゃダメだ…。」


「やっぱりハンバーガー!」などとまだ妄想の世界に浸っている寧々を尻目に俺はそっと教室を出た。


 廊下は登校してくる生徒でごった返している。その中をかき分けるように進み、トイレへと逃げ込もうと考えた。


 やっとのことで辿り着いたトイレに入ろうとすると、また後ろから声を掛けられた。


「峯崎さん!」


 少し高めの声だ。振り返ると…、奥に人混みが見えるだけだ。


「気のせいか。」


 よく考えたらそうだ。俺のことをさん付けして呼ぶやつはいない。基本、呼び捨てだからだ。きっと睡眠不足が原因で幻聴が聞こえたのだろう。


「いや、下です!」


「は?」


 明らかに幻聴ではない。言われた通り、下を見るとそこには青髪の女の子がいた。


「(あれ?女子の制服ってスカートじゃ…?)」


「その目は、僕を女子だと思ってますね…?」


「ま、まさかぁ…あははは…。…女の子、だよね?」


 その女の子(?)は頰をぷくぅと膨らませて抗議してくる。


「正真正銘の男です!」


「なるほど、女装男子ってわけか。」


「女装じゃありません!!んん〜…っ!」


 ここは認めるしかないのか…?いや、でもどっからどうみても女…やめておこう。これ以上は俺の命に関わる気がする。


「んで、用件は?」


「えっ…え?」


「いや、呼び止めたの君でしょ?…ま、まさか幻聴!?」


「ちーがーいーまーす!1学年ランクCの葵 ルイです。峯崎さんですよね?」


 その名前に俺はピンときた。ピックアップリストに入っていた子だ。確か、交渉術が天才的なんだっけ?


 あの紙には『ライバル企業同士の協力関係の締結や和解交渉を成功させてきた。話術が人一倍長けており、彼の世界にすぐに呑み込まれるため、界隈では「青大蛇」とあだ名が付いている。』と書いてあった。


「青大蛇くんか。」


「はい?なんですか、そのあだ名みたいなの。」


「えっ?でも、ルイくんだよね?あの、交渉術のプロで青大蛇って呼ばれてる葵 ルイくんだよね?」


「青大蛇かどうかは知りませんが、なぜ僕のプロフィールを知っているのか小一時間ほど問いたださせて頂いてもよろしいですか?」


「(これは…、乗せられたのか?少し痛いな…。)」


 予定では本人の口から聞いて、それをあの紙と照らし合わせてひき入れるつもりだった。


 しかし、まさか自分から相手のプロフィールを言ってしまうとは…。稀に見る失態だ。


「ま、まぁそれは置いときまして…。用件は何かな?」


「なんか腑に落ちませんが…。そうですね。単刀直入に言いますが、僕を征服委員会に入れてください!」


 □ □ □ □ □


「寧々。このピックアップリストなんだが、どうやって調べ上げているんだ?まさか、ストーカーでもしたのか?」


 昼休みになり、教室で作戦会議を行うため峯崎を待っていたところ、ふと疑問に思った山上が寧々に尋ねる。


「あぁー、もうみんなひどい!あゆくんにも同じこと言われたのにぃ!!」


「いやだって、ストーカーでもしないとこんな情報入手できないだろ?」


「だーかーらー!たまたま帰る方向が同じだけで、たまたまスマホを拾って、たまたまよく知ってるお友達がいただけなのぉ!」


「つまり、ストーカーをして、恐喝をして、友人に脅迫をしたという認識で間違いないか?」


「とっても簡単に言えばそうだねぇ。」


「ストーカーじゃん。犯罪じゃん。ちょっと待て、いま通報してやるから。」


 そう言って山上はポケットからスマホを取り出し、電話をかけようとする。


「待って待ってぇ!そんなこと言ってるけど、ゆかりんも手にあるその銃。それマジもんだよね!?」


「あぁ、これか。これは私の愛用コレクションの1つ、グロック19だ。プラスチックが多く使われててな、従来のものより軽量化されているんだ。」


 銃を手で跳ねさせるように投げて話を続ける。ちなみに「それは甘えだ。」との事でセーフティは一切付けていない。つまり、引き金に指が強く当たれば…まぁ、想像通りの結果になるのは目に見えているだろう。


「へぇ、そうなんだ…。って、それこそ銃刀法的にヤバイよねぇ!?」


「…そんな法律は知らないし、そもそもバレなきゃ犯罪じゃない。」


「え、えぇ…。ていうか、つけてる時点でモロバレだと思うけどぉ…。」


「細かいトコを気にしていては、戦士になれん!大胆かつ優雅に殺す…いや、鎮めるのが真の戦士だろう!」


「いま殺すって言ったよ!?この人、殺すって言った!」


 この後も山上と寧々の論争は続いた。結局、どっちが犯罪性が高いかの自慢大会になってしまい、周りの生徒は「いつか殺されるんじゃないか?」という自然と湧き上がった不安に顔を青ざめさせていた。


 ちなみに周りの生徒は全員廊下に避難していた。セーフティが掛かっていないのは広く知れ渡った常識だからだ。


 生徒たちが論争の成り行きを見守っていると、その間を峯崎が通り抜けていく。


 それに気づいた生徒が峯崎を止めにかかる。


「み、峯崎!ヤバイって、いま山上と寧々が論争してるだよ!」


 しかしその忠告もお構い無しに峯崎は歩みを進め、教室のドアを開けた。


「ほら、作戦会議始めるぞー。」


「(その勇気はどこから来るんですか!?)」


 全員の思考が一致した。

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