第5話〜先の見えない糸〜
「今、P(k) が正しいと仮定すると P(k+1) も正しい。P(k) より…」
4時間目の数学。
教師が数学的帰納法について説明しているところだけれども、
横山の一連の事件のことを考えていて、内容のほとんどは頭に入っていない。
そんな中、教師の口にした"仮定"という言葉がふと耳に入る。
仮定か…。
横山と大野はさっきの雰囲気から察するに友達同士なのだろう。
だけど、横山と大野は共にW大の推薦を狙っている。
横山が停学になるまでは横山のほうが大野よりもW大の推薦を受ける可能性が高かった。
大野はそのことを快く思っておらず、
僕に友人である横山を推薦されないようにしてくれと依頼した。
そして今、大野の望みどおりの結果となり彼女は推薦レースから脱落し、
推薦の有力候補として大野の名前が挙がるようになった。
だけど横山はその真相を知ることなく、横山と大野との友情関係は現在も続いている。
全ては僕の推測の域に過ぎない。
だけど、これが事実だとしても辻褄は合う。
だとしたら大野という女はおとなしそうな顔してとんだ食わせ者だろう。
友人を陥れたあげく、なんでもない顔してその関係を続けているのだから。
僕と同じように彼女もまた、
学校で見せている顔と心の奥に隠された顔を持っているのかもしれない。
おとなしそうな顔は仮面を被った彼女の顔か。
考えれば考えるほど、この一連の事の真相が知りたくて仕方なくなっていく。
学校での一日を終え家に帰る。
部屋にカバンを置き、PCの電源を入れ、
頭の整理と情報収集を試みようとした時に僕の携帯電話が鳴った。
-新着メール1件-
中沢からだ。
最近、彼女からのメールが増えた。
相変わらず学校での会話の数は少ないものの、
メールとなると明るい絵文字を使ったりと随分印象が違う。
携帯に届いたメールを眺めていた時に送信元アドレスが目に入る。
ふと、ある事が頭によぎった。
あの時、僕に依頼したメールアドレスに何かヒントがあるんじゃないか。
メールアドレスは自分の趣味やら誕生日を入れている人が多く、
アドレスを見れば誰のものなのか、あるいはその人の個性なんかが分かったりもする。
僕は中沢からのメールに対し、適当にメールを返信した後、
早速、あの時に届いたメールアドレスを調べた。
"smart-cat2008@XXX.ne.jp"
やはりというかなんというかメールアドレスにoonoなどの名前は入っていない。
そりゃそうだろうな。いくらなんでもそこまでバカではないだろう。
僕が抱いたあわよくばの期待は、僅か5分も経たない間に脆くも消え去った。
まあ、だけれども英語の文章にはなんとかなっているメールアドレスだ。
catという単語が入っているからには猫が好きな人からの送信なのか?
大野はどうなのだろう、彼女は猫が好きか?
そんなこと僕が知るはずもなく、
例え大野が猫が好きだと知ったところで決定的なものとは言えるはずもない。
アドレスから得たもう一つの情報。
ドメインを見る限りフリーメールのアドレスではなく、プロバイダーメールで送信している。
予測出来るのはこのメールを送ってきた奴は警戒心が薄いということ。
得たいの知れない僕みたいな人を相手に、
自分の情報に繋がるメールアドレスで送っているのだから。
警戒心の強い人ならフリーメールのアドレスか何かで送るのが普通だろう。
それともフリーメールだと相手にされないとでも思ったのだろうか。
アドレスから得た情報は期待を裏切る結果。
僕は依頼者を大野であると仮定し、
このアドレスを辿りにして、大野に結びつくかどうかを考えることにした。
例えば大野の家に入り、大野のPCアドレスを見ることが出来れば、
ほぼ間違いなく、大野であるかどうか特定することが出来るだろう。
ただ、これを行うのはかなり難しい。
大野の家に忍び込むか、
あるいは大野と僕が親しい仲になり家に遊びに行くという状況を作り出す。
そのくらいしか彼女の家のPCアドレスを見ることが出来ないだろう。
忍び込むことなんてリスクが大きすぎてする気になれないし、
大野と僕が家に遊びに行くほど仲になるというと彼氏になるくらいしか考えられない。
僕と大野とでは性格も合わなそうだし、
僕の友人である中沢の友人の横山の友人という、
ほとんど他人と言っていい存在だ。
わざわざ真実を知るために、
偽りの友情を作り出して僕から彼女に近づく気にもなれないし、
僕の好みのタイプじゃない。
何かいい方法はないか。
あれこれ考えながら、自分のアドレス宛に届いたメールを確認していると、
自分の目を疑うメールが届いていた。
【依頼したいこと】
送信者"smart-cat2008@XXX.ne.jp"
僕は早速、メールを開く。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
以前、横山のことでメールを送付させていただいたものです。
横山のカバンからタバコが見つかって、
停学になったのはあなたがやった事だと確信しています。
本当に感謝しています。
さて、実はあなたにもう一つ頼みたいことが出来ました。
B-1に青田という人がいます。
彼の女癖の悪さは酷すぎます。
私は彼に泣かされた多くの人を見てきまして、心が痛みます。
方法はどんな方法でも構いません。
彼をこらしめて欲しいです。
宜しくお願いします。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
間違いなく、このメールの送信者は僕が探している奴と同一人物だ。
僕は僕の友人に対する依頼は受けないと決めているので、
このメールの依頼を受ける気はサラサラない。
それに内容もお粗末なものだ。
確かに青田は僕の知っている範囲でも、多くの女性を泣かせるような行動はしているようだ。
だけど、彼に泣かされたという女性陣も彼といて楽しかった事だってあっただろうし、
そもそも彼女らが望んで彼と一緒になったのだ。
それで彼に泣かされたとか、裏切られたとか言うのは如何なものか。
彼を信じて騙された。そして騙された人は可哀そうだって?
笑わせるなよ。
信じたそいつがバカなだけだ。
僕に言わせれば可哀そうでもなんでもないただの頭の悪い女だ。
さて、どうするべきか。
依頼は受けない。それは決定事項だ。
だけど、せっかくの手掛かりをこのまま放置するのは勿体無い。
このメールに返信することで依頼者の情報を更に引き出せるのではないか?
だけど、僕は今までメールを送ってきた依頼者に対して返信したことはない。
返信するということは少なからず僕自身の情報も漏れる可能性がある。
僕は自分自身の情報が漏れることを徹底的に嫌っているので、
返信することは一切せず、依頼を受けるのか受けないのか、
事件の実行者が自分なのか、それとも他の者が行ったことなのか。
そういったことに答えることもしてこなかった。
悩み、頭を抱えていると、
机の上に転がっているサイコロに目が留まった。
サイコロを振って"1"が出たら気に入らない内容でも実行するというルール。
「今まで返信したことはなかったが、どうするか天に任せてみるか」
"1"が出たら返信しよう。
僕はそう心に秘め、サイコロを投げた。
コロコロと音を立て転がり、サイコロが出した数字は"1"。
「決まりだな」
僕は一人呟き、メールの"返信"をクリックする。
さて、どうやってこの依頼者の情報を引き出すか。
"名前を教えれば実行してやる"
なんて送ったところで名前を教えてくれるとは思えないし、
だからといって了解しましたなんて送ったところで何も得ることは出来ない。
僕はパソコンの前でメールを書いては消し、書いては消しを繰り返し、
よくやく完成させたメールを確認し終え、"送信"をクリックした。
依頼者の反応が楽しみだ。
そのとき、僕が想像していたのは大野の顔だが、果たして本当に依頼者は大野なのだろうか?
それに青田と大野に繋がりなんてあるのか?
気になることと暑さで、この日はなかなか寝ることが出来なかった。
「おはよう」
翌日、僕が教室に入ると大石が話しかけてきた。
「おはよう。あれ?髪を切ったの?」
かなり短くなった彼女の髪を見て思わず口にする。
「うん。ちょっと切りすぎたかもって後悔してるけどね」
そう言いながら自分の髪を触る彼女。
少し照れる姿に愛嬌を感じる。
「前のも悪くないけどさ、今の髪型も似合ってると思うよ。これからはもっと暑くなるし、短い髪型も格好いいよね」
「そう?ありがとう」
なんとなく僕と大石がいいムード。
「おっす。おはよう」
そんな二人の空間に割り込んでくる声。
青田だ。
彼に悪気があったわけではないのだろうけれども、
せっかくいい雰囲気だったのに少し残念だ。
僕はやり場のない怒りから青田の顔をジーっと見る。
僕の視線に対して不思議そうな顔を浮かべる彼。
僕は青田に聞きたいことがある。
"大野って奴を知っているのか?"
"最近、また女を泣かせたりしたのか?"
他にも色々とあるのだが、大石がいるこの状況では切り出しにくい話題ばかり。
「そうだ。大石、借りてたCD返すよ」
青田が大石にそう言い、CDを渡す。
タイトルを見ると以前に僕が借りていたものと同様のものだ。
青田は大石を僕の家から送ってから、大石からCDを借りたりしているのをよく見るし、
何かと青田は大石と話をしたがっているように見える。
それだけではなく、僕らとの会話でも大石の事を話すことが多い。
ひょっとすると青田は大石に気があるのだろうか?
もしそうだとしたら僕にとっては大問題だ。
友人同士での恋愛問題で友情関係にヒビが入るなんて絶対に避けたいし、
プレイボーイで評判の彼が気があるとしたら、
いつの間にか僕が彼らの仲人にだってなりかねない。
僕があれこれ考えている横で楽しそうに話す青田と大石。
この日ばかりは朝のホームルームの始まりを告げるチャイムの音が、
追いつけめられたボクサーのゴングと同じくらいうれしい音だった。
昼休み。
いつものメンバー、すなわち僕に青田、川野の3人で食堂でのランチタイム。
僕は朝の反省を生かして、青田に聞きたいことをストレートに言う。
「青田。お前、B-5クラスの大野って女を知っているか?」
「大野?誰だそれ?全く知らないぞ」
青田はキョトンとした顔で僕に言う。
とぼけている感じではない。
どうやら本当に知らないようだ。
「そうか。いやなんかその大野って女がお前の事好きなんじゃないかという噂を聞いてさ」
大野が青田の事が好きなんてのは全くのデタラメだ。
なんで?と聞かれる前に適当な理由をつけてこの話をやめにしようと思った。
僕としては青田が大野の事を知らないのであればもはやそれ以上、
この話をする必要はない。
「ほう。俺は全く知らないなぁ。可愛い子ならこちらからお願いしたいくらいだけどね」
青田がおちゃらけた口調で言う。
「あれ?今、彼女いないんだっけ?」
川野がミートソース味のスパゲッティーをクルクルとフォークに絡ませながら青田に言う。
「今はフリーだよ。I am Free Man」
「なんだ、この前まで付き合っていた相手とはもう別れたのか。お前の女性関係は本当に良く分からないな。羨ましいよ」
川野が呆れたといわんばかりの言い方で青田に言った。
僕はもう一つの聞きたいことを切り出す。
「お前、また女を泣かせるようなことをしたりしてるんだろ?」
「またってなんだよ。またって。俺は女を泣かせるようなことはしたことはないよ」
「よくもまあ、白々しく言えたもんだ。今までの恋愛を振り返ってみたらどうだい?思い当たる節が沢山あると思うが」
「プレイボーイだからな俺。モテる男は辛いよ。いつだって悪者にされてしまうのはモテるほうさ」
よくもここまで言えるものだ。
とはいえ、これで本当にモテているのだから僕も青田を見習うべき部分は沢山あるのだろう。
女心ってやつは良く分からない。
「そういう石橋君。君は最近やたら大石と仲いいじゃないか。大石のこと好きなの?」
川野がニヤニヤしながら僕に言う。
思わぬ展開に僕は一瞬たじろぐ。
「友達としては仲がいいけどね。好きだとか嫌いだとかそういう関係ではないよ」
なんだか芸能人の熱愛報道の否定コメントみたいだな。
自分で言っておきながらそんなことを思う。
「またまた。髪型が似合ってるとか言ってニヤけていたくせに」
川野、お前は見ていたのか。
昔、"家政婦は見た"という番組があったが、どこで誰に覗き見されているか分からない。
気をつけないと写メールで撮られているなんてこともありそうだ。
その時の僕の顔がニヤけていたとは思えないけれど。
「中沢とはどうなんだ?なんか二人で帰ったりしていい雰囲気なんじゃないの?」
今度は青田が言い出す。
「二人で帰ったって鍋パーティーの帰りの話か。あれは普通に駅前のスーパーに用があって、そのついでも兼ねて送っただけだよ」
いつの間にか僕が質問攻めにあっている。
大体なんで青田が鍋パーティーの帰りに僕が中沢と帰ったことを知っているんだ?
まさかこいつ確信犯なんじゃないだろうな。
「青田、そういうお前はどうなんだ?お前だって大石と二人で帰ったりしてるだろ。次のターゲットは大石か?」
ここでそうです。
なんて言われたら言われたで僕は困るんだけれども、
青田の本心を聞きたい。
「なんだお前ら。俺だけ仲間はずれでいつの間にか二人とも大石と中沢とチチクリあっているの?ちくしょう。きったねー奴らだ」
「川野、お前はその性格をなんとかしないとどうしようもないと思うぞ」
「それなら青田先生、僕に恋の方程式を教えてください」
「方程式なら石橋のほうが得意だろう」
そこで僕かよ。思わず心の中で突っ込みをいれる。
「僕は数学の方程式は説明できるけど…恋の方程式は解けないよ」
ちょっとキザな言い方で言ってみたものの、誰もウケない。
苦笑いを浮かべるしかない。
「さてと、教室に戻ってポーカーやろうぜ」
僕に対する突っ込みもないしに、話題を変える青田。
結局、青田と大野の繋がりも分からないし、
青田が大石のことをどう思っているのか分からない。
青田が大野のことを知らないのに、大野は青田を陥れてくれなんて言うのだろうか?
僕が探している人物は大野ではないのか?
頭の中を様々な憶測が駆け巡り、真相に近づいたかと思うとまた霧の中へと消えていく。
ある日の帰り、僕はいつものように自転車で家に帰るつもりだったものの、
偶然居合わせた大石から、
「図書館に用事があるから一緒に帰らない?」
と誘われ、図書館まで一緒に行くことになった。
僕が彼女の誘いを断る理由は一つもない。
学校から市立図書館に行くのは、学校から僕の家に帰る道と同じ道を進めばいいのだから。
二人で歩く帰り道。
彼女とは友人として仲がいいとはいえ、
思春期真っ只中の男女二人が、
学校から二人きりで歩いて帰るというのはやはり気になってしまう。
体の左側が緊張しているのを感じた。
大石は僕のことをどう思っているのだろうか?
そんな事が頭をちらつかせる。
「で、そこのゲーセンで撮った智子のプリクラが凄く可愛くてさ、私も今度撮りに行こうと思って…って聞いてる?」
僕が上の空で彼女の話を聞いているように見えたのだろう。
不満そうな顔で僕に語尾を強めて言う。
「ああ、聞いているよ。あそこのゲーセンは大きいから色んな種類の機械が置いてあるしね」
彼女の話を聞いていなかったわけではない。
中沢が大石ではない友達と横浜駅近くにあるゲームセンターでプリクラを撮り、
それを大石に見せたところ、凄く可愛いプリクラだったそうだ。
僕は大石のプリクラの話には正直言って全く興味がないが、
それでも大石と二人で話していることは楽しかった。
他愛のない会話をしながら歩くこと15分程度。
目的地の図書館に到着。
「それじゃあ、また明日」
彼女が僕にそう言うと、図書館の入り口に続く階段を上ろうとした。
このまま別れるのが名残惜しくて、僕はなんとなく聞いてみた。
「本を借りたってどんな本借りたんだ?」
「内緒」
悪戯っぽい笑顔を見せる大石。
「内緒と言われると余計気になるんだけど」
「あんまり詮索しないでよ。そんなに大層なものじゃないからさ」
そう言って階段を上がっていく大石。
なんだか彼女が遠くに行ってしまいそうなふうに思えて、少し寂しさ感じた。
家に帰りいつものように「ただいま」と言い、PCの電源をつける。
昨日、僕が依頼者に送信したメールの返信が返って来ているか期待していたものの、
期待通りにはいかず、返信はない。
青田は大野のことを知らないと言っていたし、メールの返信もなし。
収穫ゼロ。
手掛かりもほとんどなし、これじゃあどうしようもない。
僕は冷蔵庫から麦茶を取り出し、
残り少なくなっていた中身を一気に飲み干した。
容器をそのまま台所に置き、ベッドに寝転んでどうするべきかを考えるけれど、
何一つ良いアイデアが浮かんでこない。
暫く待ってそれでも返信がないようなら、何かしらの行動を起こすしかないだろうな。
投げやりなことしか思いつかない。
依頼者を躍起になって探すつもりでいた思考が、たった1日でなくなりつつある。
というのも、今日は大石とのことのほうが依頼者を見つけ出すことよりも、
僕の頭の中のウエイトの多くを占めている。
大石は僕のことをどう思っているのだろうか?
青田は大石のことをどう思っているのだろうか?
そして僕自身、大石のことをどう思っているのだろうか?
ただの友達?それとも恋愛感情を持ち始めているのか?
自分でも良く分からない。
そういえば、大石は何の用があって図書館に足を運んだのだろう?
僕があれこれ考えていると携帯電話が鳴り出した。
中沢からのメールだ。
内容は今流行の月9ドラマの話題。
今までの月9のイメージとは少し違いコメディー要素が多く含まれている、
どこぞの大学の天才指揮者とピアニストの恋愛話。
その天才指揮者役の役者のあのシーンが良かったとかそんなメールだ。
中沢とメールのやりとりをしていると、彼女からメールが終わることはほとんどない。
まさか中沢は僕に気があるのだろうか。
だとしたら僕に大石、青田に中沢と四角関係が完成する。
なんだかよく分からなくなってきた。
僕は青田はもちろん、大石、中沢とも友人であることに間違いはない。
しかし、思春期の男女数人グループが仲良く友達のまま卒業なんてことは、
ほとんどないの現実だ。
思春期真っ只中の僕らにとって、目の前に異性がいたら少なからず意識してしまう。
それが魅力的な異性なら尚更で、
自分に好意を持っている異性でも当然あれこれ考えてしまう。
僕は今までのクラスメイトや友達の恋愛情勢からす、
仲が良かった男女グループが恋愛関係のもつれから、
気まずい関係になっていることが少なくないことを知っている。
まいったな。
昨日までなんともなく過ごせていたものの、
明日から今まで通り、彼女達と話すことが出来るか心配になってきた。
彼女達からしてみれば、僕が急にこんなことで悩んでいることなんて知るはずもない。
おそらく今まで通りに僕と接してくるだろう。
そこで僕がテンパるわけにはいかない。
平静を装う必要には、本心を見えない仮面で隠し学校生活を送らなければならなくなる。
本当の自分はこんなことがしたいんじゃない。
だけど、環境がそうさせてくれなくって演技ばかりしている。
これが大人になるってことなのか?
社会では大人は自分勝手に生きてはいけない、チームワークが大切だ。
なんて言うけれど、それで自分自身に嘘をついて生きていくことが、
大切なことなのだろうか?
そんなことよりも真っ直ぐに自分の思うことを貫き通すことのほうが大切なんじゃないか?
僕はそう思った。