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マスクマン  作者: 十色市
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第16話〜卒業〜

センター試験の1日目は天気が悪くて、雪がちらつく中での試験となった。

この日の朝、僕は目覚まし時計を2つ用意しておいたものの、

目覚まし時計に起こされる前に自然と目が覚めた。

テレビをつけると、雪による交通の影響が流れていて、

センター試験受験生の人は注意してくださいと呼びかけている。

僕は少々焦って、自身がの乗るはずの電車が遅れていないか確認したが、

首都圏は特別大きな影響は出ていないらしいので一安心。


試験会場の大学に到着すると、見慣れた制服を着た人混みでざわついている。

僕と同じ会場でテストを受ける人は、ほとんどが僕と同じ学校に通う人ばかりで、

ほのかな緊張感は見慣れた顔を見て何処かに消えていった。


「あれ?まさか石橋と同じクラスで受けることになるとは…」

「おいおい、これじゃあいつもと何も変わらないな」

僕が受験する教室へと入ると、そこに青田がいた。

こういう状況で心が許せる仲間がいるというのは実に頼もしくて、

試験前だというのに僕らはついつい、はしゃいでしまい周りから白い目で見られた。

それから、頭の回転がよくなるという理由で青田が持ってきていたチョコレートを食べ、

着席5分前に僕は自らの席に戻り、意識を集中させる。

今までやって来たことをいつも通りやれば何も問題はない。

試験開始1分前。

僕は大きく息を吸って深呼吸をすると、試験開始の合図が鳴る。

始まってしまえば早いもので、裏返しに配られた試験用紙をめくると、

余計なことが頭から全て消えていき、あとはただひたすらに解答用紙を埋めていった。


1日目の試験を順調に終えた僕は日を変えて、2日目の試験へ進んでいく。

初日とは違い、天気も回復して寒さも初日に比べると幾分穏やか。

この日の試験も1日目と同じように問題なく終えることが出来た。


「よう、どうだった?出来は?」

「自己採点で680点ってところ。かなり出来は良かったよ」

「マジかよ!!俺は550点くらいしかとれてなさそうだ」

「川野にしては上出来なんじゃないのか?」

「上から目線だなぁ。まあでも確かに俺も手ごたえは悪くない」

センター試験を終えて、翌日の教室で交わす会話。

友人らの話を聞くと、皆とりあえずは問題なくこなせたようだ。

これでいよいよ前哨戦は終わり。

あとは受験本番をどう乗り切るかだけで、

暫くクラスメイトと顔を合わせることなく、

大学受験とその最終準備を家で行う日々が続いた。


僕が国立前期試験を受ける頃には、横山と智子が志望大学に合格したということを聞いた。

志望校が私立大学である彼女らは僕が受験する国立大学2次試験よりも、

早く受験を終えて合格発表も終えている。

一方、男性人はというと僕を初め、川野も青田も未だに合格通知は貰っていない。

滑り止めのつもりで受けた大学を落ちた僕は多少焦りを感じている。


そんな中、国立前期試験の2日前に僕らの卒業式が行われた。

受験と重なってこれなかった人や、

受験勉強の時間を1分でも欲しい人が来れなかったのが残念だったけれど、

卒業式で流れる校歌や担任の先生からのお別れの言葉を聞くと、

どこか冷めていた僕にも別れの寂しさがこみ上げてきた。


「なあ、みんなの受験が終わったら最後に卒業旅行に行こうな」

卒業式を終えて、皆が記念撮影で賑やかな教室で川野が僕に言う。


「ああ、そのときにはお互い笑って会えるようにしないとな」

「確かにね。みんな大学進学が決まっていて俺だけ浪人ってのは嫌だな」

横でうれしそうにクラスメイトと記念撮影を繰り返している智子を見る。

僕の前では僕の受験が終わっていないからか、自身の合格の喜びを余り伝えてこない。

彼女に気を使わせている自分が情けない。


「僕達の本番はこれからだ。それが終わればあとは暫く遊び放題。合格祝勝会の場所を考えておかないとな」

「おうよ。打ち上げは派手にやろうぜ」

クラスメイトとの記念撮影を終え、高校時代を共に過ごした仲間達とのお別れをして、

互いの未来が明るいことになるように願う。


2日後の前期試験を終えて、合格発表の通知を受けた僕は4月からは大学生になる。

それは友人との別れでもあり、新しい人との出会いでもある。


3月の終わりの卒業旅行を最後に、

僕らはクラスメイトから、別の大学に通う友人へと変わり、

大学に進んでからは、毎日顔をあわせるのが当たり前だった人と会う機会は滅法減り、

偶にする会話は携帯電話でのやりとりだけになる。

大学のサークルに入ると、今までの交友関係が一気に塗り替えられ、

古き友は記憶の片隅へと消えていってしまいそうだった。


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