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孤独な青年

作者: アダマ


 それは強い信念のある者にしかなることのできないもの。


 信念のある者は何十億といる人の子の中でもほんのわずかしか存在しない。


 信念のある者は神から特別な贈り物を授けられる。


 それは、この世界の真を見抜く『目』である。


 彼らは世の中がどんなに誤りの多い思い込みや、うわさが出回ろうと動じることは無い。彼らは生まれながらにして愚かではないのである。


 『目』を持つ者は自分のその目が神から与えられた贈り物であるとは思ってはいない。ただ皆一様にこの世の愚か者を消し去るべく武器を手に一人孤独な世界へと足を運ぶのである。


 が、目を持つ者のほとんどが途中で倒れてしまうのであった。


 ある賢人は無数のしょう兵に囲まれて生きて帰ってくることは無かった。また、別の勇者は無数の商人に説き伏せられて目を失った。


 目を持つ者は、神が作り上げた真を取り戻すため、真を汚す者がついえるまで永遠狩り続けるのであった。


 目を持つ者は常に自分が濁り切った瞳に支配されてしまうのではないかと狂気じみた心境を持っていた。


 実際、自身の目に疑いを向けて目を潰す者もいた。神の意図する真に確信が持てなくなってしまったのであった。


 今日も一人、目を持つ青年が亡くなった。


 彼は自分が目を持つ者であることを自覚することなく一人、孤独に死んだ。


 彼は自分の中に住まう真を飼いならし続けてはいたものの、武器を握る勇気が欠けていた。


 また、自分の目を信用することもなかった。


 目を持つ者がしょう兵たちに狩られていくのを目にして彼は自らの目をえぐり、中に隠した。


 彼は誰からも目のある者として認識されなかったものの青年自身の信念は捨てることは無かった。


 彼は目を持つ者、同僚にも気が付いてもらえなかったばかりか誰にも理解されることなく一人、自分の信念にふたをしたまま殺されてしまった。


 彼は同僚に殺されてしまったのである。


 殺した後で青年の中から目が見つかった時にはもうすでに手遅れであった。


 目を見つけた青年を殺害した同僚は彼の信念を共に抱え一人また狩場へと向かっていった。

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