『表裏一体』番外編 【 ガルシアの帰還】
人間界から天界に戻ったガルシアの日常?です。
「ただいまー。あーつかれた!」
「おかえりなさい」
天界の、主の住まわれる城でガルシアを出迎えたのは、癖のある栗色の髪を腰まで伸ばした長身の天使だ。
紫の長衣を見にまとい、緑の宝珠をあしらった杖を持っている。
「ララ〜!」
「大変でしたね。お疲れ様」
「うん、もー、ほんと大変だった!」
肩を揉みながら首を回すとコキコキと音がする。
その音を聞くとコリがほぐれたような気がするのだ。
「あのさ、勝手に天使を消されたらこまるんだけど」
突然子どもの声がして、ガルシアが表情を曇らせた。
声のした方を見れば、メガネをかけた少年が背後に仁王立ちしていた。
ブラウスにベストを羽織り、短パンである。
そしてその手には藍色の本を持っている。
「リズ…」
リズは短パン少年の姿をしているが、天界戦争の頃からいる重鎮の一人でもある。
「知ってると思うけど、天使の管理はうちがやってるんだよね。ガルシアさ、天使の処罰は立会人が居るって忘れてたでしょ?前に渡したこのマニュアルにも書いてあるよね?」
ご丁寧にページを開いてここだと指をさす。
「立会人ならディウスがいたよ」
「は?ディウスは今悪魔でしょ」
ガルシアの言い分に少年の姿をした天使は馬鹿なの?と一蹴して鼻で笑う。
「悪魔が天使の処罰の立会人なんて認められないよ」
「元天使だからいいじゃねーか」
「ねえ、本気で言ってる?馬鹿なの?」
「お前な、仮にも熾天使に向かって馬鹿はないだろう?!」
「トップなのにルールを覚えていない…つまり馬鹿でしょ」
「覚えてるさ!」
ビシッと人差し指を突きつけられ、悲鳴のように声を上げる。
「じゃあ覚えてた上でやった、と。そういうわけですね?」
「ファッ?!」
反対側から低い女性の声がしてさらにガルシアは震え上がった。
「シャミィ…」
振り返ると、腰まで長い藍色の髪をひとまとめにし、白いパンツスーツに身を包んだ長身の天使が微笑んでいる、ように見える。
「怒ってる?」
「ご自身はどう思いますか?」
「あ、あー、あ!……今日も可愛いねシャミィ、あれ、髪切った?」
「切っていませんし、俗な言葉は嫌いです」
「ばーか」
「報告書と反省文と査問委員会でどう御子にご報告なさるか期待しています」
にこやかに告げて、シャミィは去っていった。
「ざまみろばーか」
リズもまた捨て台詞を吐いてシャミィの後を追うように去っていった。
「ララ…」
「はい?」
「俺、堕天するわ」
暗い気持ちになって何もする気がなくなる。
「何言ってるんですか。ほら、仕事仕事。あなたが人間界にいた分溜まっていますよ」
「もうやだ堕天する堕天!」
「堕天されたら困ります。仕事が終わりませんし」
「ひどい!俺の価値は仕事だけなの?!」
空いガルシアの叫び声だけが廊下に響いていた。
終わり
ガルシアがだいぶ独断で動いていたので、それに対応する天界も大変なんだろうなーと思って書きました。
モデルの天使は
ララ=ラファエル
リズ=ラジエル別名ガリズルなのでそっちから。
シャミィ=サマエル
です。pixivに彼らのイラストはだいぶ前にアップしました。よかったら探してみてください^ ^