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始まりの予兆

2015年   東京


 ガチャッ

爽空(そら)―!あんたまだ寝てんの?もう結衣ちゃん待ってるわよ。早く起きなさい!」

バッ!

布団を剥がされる。

「もーやめろよ。セクハラだぞ、母さん」

寝ぼけながらもちょっと言い返してみる。

「またしょうもないこと言って。遅刻するわよ。あんたはいいけど結衣(ゆい)ちゃんに迷惑かけちゃダメでしょ!」

頭を軽く小突き下へ戻っていった。


ふあーっ

大きく背伸びをし、あくびをしながらもそもそ支度をする。


 オレは柏木爽空(かしわぎそら)。ごくごく普通の高校生だ。

結衣ってのは隣に住んでる幼なじみ。

言っておくがこいつとは腐れ縁以外何もない。

色気なし、胸なし、女らしさ全くなし!無い無いづくしだがウマは合う。

いっそ男だったら良かったのに。


 アクビを連発しながらリビングへ降りていくと、ユイがコーヒーを飲みながらガハガハ笑っていた。

「おまっ!朝っぱらからテンション高ぇよ。人んちでくつろぐな。」

結衣がこっちを見てイーッとする。

「ソラが遅いからじゃんバーカ」

「人のことバカっていうほうがバカだ。バーカバーカ」

「もういい加減にしなさいよ!とっとと朝ごはん食べなさい!」

かあさんが一喝し、オレは慌ててご飯をかきこむ。いつもの朝だ。



教室に入ると藤森蒼汰(ふじもりそうた)がオレを見て二ヤっと笑う。

「おう。今日も夫婦でお出ましか?」

こいつは中学からの悪友。クールで爽やかとかで結構モテる。オレにはサッパリわからん。

が、まあ面白い奴だ。

「ソウタ君。いつも言ってるけどこいつと夫婦ってマジやめてよね。」

ユイが口を尖らしブツブツ言う。

「オレだっていい迷惑だ!オレはもっとこう…ボッキュッボンでロリータフェイスの小柄な子が好みなんだ!ナミちゃんみたいな…あれ?そういやナミちゃんは?」

ナミちゃんはソウタの彼女だ。3ヶ月前にナミちゃんから告白して付き合っている。

何故オレに惚れなかったかな…羨ましすぎる。

「ナミは今日朝練でもうじき来るんじゃね?つかソラ、お前変態なんだからナミに近づくなよ。」

「変態ってなんだよ。オレは健全なだけだ。」


 「ソウタ君おはよう~」

お、噂をすれば。今日も眩しいぜっ!

「ナミちゃんおは~。朝から可愛いねー。」

「あ、ソラ君ユイちゃんおはよー。ソラ君は今日もキモいねー。」

ブホっ!

ソウタが飲んでた牛乳を吹き出した。

「わ!ソウタ汚ね~よ。…ちょっとナミちゃんそれはあんまりです(泣)」

ソウタとユイがゲラゲラ笑ってる。

「ゴメンね。冗談だよ。」

そう言いながらニッコリ笑うナミちゃんはたまにグサッとナイフを刺す。←オレにだけ。

ソウタ 「そういうナミが大好きだよ。」

ナミ  「ナミもソウタ君大好きよ。」

ケっ!バカップルめ!

「ご愁傷様!」とユイがゲラゲラ笑った。




 放課後、オレはユイに数学を叩き込まれていた。

テストで25点という結果にユイがキレた。

「どうやったらそんな点数取るの!?放課後覚悟しな!馬鹿ソラ!」

で、今この状態である。

全く色気もクソもないな。目の前にかわいい子がいたらオレだって頑張るさ。

…でも黙ってるとかわいいんだよな。

少し茶色がかったサラサラの髪。クリクリの目。アヒル口だし。笑うと右だけえくぼ出るんだよな~。なんか結構モテるみたいだし。

なんてことをボーっと考えてたらバシッ!

丸めた教科書で頭を叩かれる。

「ボッとしない!この問題できるまで帰れないよ!」

…やっぱダメだ。こいつと付き合ったら尻に敷かれる。



 散々しごかれ、やっと解放された時はもう外は暗くなっていた。

ユイはそのまま塾に行くということで途中で別れ、、一人暗い夜道を歩いていた。

もうじき家に着くという時、前からフラフラした人らしきものが歩いてくる。

暗くてよくわからないが、下を向き腕はダランとさせ左右ユラユラしながら近づいてきた。


…何だ?酔っぱらいか?気味悪いな…。


そう思いながらすれ違おうとした時、いきなり顔を近づけてきた。

目はカッと見開き、ニターッと笑ってる口からはヨダレが垂れている。

そしてオレの耳元でしゃがれた声が聞こえた。


「オマエ…魔導士だろ」


なんだって?魔導士?何言ってんだ?

訳が分からずもう一度顔を見ると、目だけがランランに光り、体全体が真っ黒な煙みたいなもので覆われていた。

…こいつ人間じゃない!

オレは直感でそう確信した。だが恐怖で体が動かない。

ヤバイ!


っと思ったその時、少し後ろのほうから話し声が聞こえてきた。

「さっきのアレ面白かったよなー」

「あれは笑った」

ギャハハハと笑いながら何人か歩いてくる。

ホッとすると黒い奴はスッと離れ、ヒーヒヒヒ…と不気味に笑いながら暗闇に消えていった。



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