縋る
「……気持ち悪い」
目も開けていられない。できるなら、すべての音をシャットアウトしてしまいたい。柔らかなベッドに身を沈めながらじっと鈍い苦しみに耐えていると、あの人が近づいてくる気配だけを感じた。
首筋にふれる彼の冷たさが心地良い。そうして俺がもう一度彼に訴えると、彼は静かにこう言った。
――大丈夫。
その音は、まるで直接身体の中に響いてくるかのようで。
そのたった一言で、少しだけ救われるのがわかる。
俺が体調を崩したとき。精神的に辛いとき。彼は絶対に「大丈夫?」と問いかけてくることはなかった。
ただ、大丈夫、と。一言そう断定して、俺のことを優しく包みこもうとする。
「頭痛い。気持ち悪い。吐きたい」
――良いよ。吐けそうなら吐いて。楽にして。僕はいつでもここにいるから、安心して。
「……うん」
俺は小さくうなずいた。近くて遠い彼の言葉が、俺の心を満たしていく。薬と同じ効果があるはずなんてないのに、不思議と身体が楽になる。
ああ、これでもう眠れそうだ。
微かな声で、ありがとう、と告げると、彼が小さく笑うのがわかった。それから、じゃあまたね、といつもと同じ響きで別れを告げる。
その響きが消えるのと俺の意識が落ちるのは同時だった。意識がおちる前、俺はまたいつもと同じ、あのことを考える。
俺はなぜ、こうも度々記憶の底からお前のことを呼び出してしまうのだろう。
お前はもう、いないのに。
初めましての方は初めまして、こんにちはこんばんは。
もね太です。
閲覧ありがとうございました。
久々の小説です。
夜中に体調悪くなって気を紛らわすために書きました。
気分悪いときのノリってこんな感じ!
BLタグ付けましたが、ラブ要素は殆どないです……。
甘くて切ないいちゃらぶ系を書いてみたい気もするけれど、
今の私には暗い話しかかけそうにありません(笑