エピローグ
エピローグです。
日本のどこか。人が滅多に訪れないような場所。
ジンはそこに立っていた。左手には花束を持っている。
目の前には慰霊碑。神城雪子、神崎龍、神村咲のそれぞれの小さな慰霊碑と、そのすぐ後ろに、歴代の異能者の大きな慰霊碑があった。
ジンは花束を四つの慰霊碑の前に置く。すると、背後で人の気配がした。
「アンタがそんなことするなんて、らしくないねえ、ジン」
アスカだった。彼女はまだ怪我が回復しきっておらず、右腕を包帯でつっている。
アスカはジンの半歩後ろに立つ。
「アタシはさあ、ジン」
アスカは、独り言のように語った。
「………もし、戦争が終わるとしたら、終わらせるのは、アンタだと思ってた」
「ああ」
ジンは力なく答える。
今のジンにいつもの覇気がないことに、アスカは気づいていた。
ジンがぽつりと言う。
「あいつは、俺に言った」
「なんて?」
あいつとは、龍のことだ。
「………人間の気持ちがわからないと言った俺に、わかっていると」
「へえ」
「そのときは意味がわからなかったが、今ならなんとなくわかる」
龍が死にそうだったとき、ジンは泣いた。今思えば、あれは悲しかったからだ。
「龍がそれ聞いたら、きっと喜ぶよ」
アスカは空を見上げる。雲ひとつない快晴だ。
「………俺は、とめるべきだったと思うか?」
アスカはジンの背中を見る。
「………さあ。でも龍は本気だっただろうから、とめても意味なかったんじゃないかな」
「………俺は、なにもできなかった」
ジンはさっきから慰霊碑を見つめたままだ。
「ジンは見届けたじゃん。あの戦争が終わる瞬間をさ」
なにもできなかったのはアタシの方。そう言って、アスカは自嘲気味に笑う。そして、ジンの隣までやってくると、三人の慰霊碑のところにキャンディを一つずつ置いた。
「そろそろ行かなきゃ」
アスカは言った。
「実家に帰るんだ。戦争が終わったとたん、親父が『帰ってこい』ってうるさくてさあ」
「そうか」
「ジンはどうすんの?」
まともな答えが返ってくるとは思っていなかったが、とりあえず聞いてみる。
「俺は………」
ジンが言いよどむ。
「神崎の家に、行こうと思う」
龍の家に行くのは、龍と龍一郎が死んだことを、母親に伝えるためだ。母親は、どんな気持ちでこの事実を受け入れるだろう。自分のように泣くだろうか。
「そっか」
アスカはくるりとジンに背を向ける。
「じゃあね」
「ああ」
短いアスカの挨拶に、ジンも短く返す。
アスカの気配が遠ざかっていった。
「………」
ジンはなにも言わずに、慰霊碑を見つめ続ける。しかし、やがて視線をあげると、背を向けた。
「じゃあな」
肩越しに慰霊碑に声をかけ、左手を軽く振ると、歩き出す。
その顔は、うっすらと微笑んでいた。
完結です。
最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございました。楽しんで頂けたなら幸いです。
ご要望があれば、ジンを主人公にした過去編も書けたらなあ、と思っています。ちょっとでも読んでみたいかな~、と思った方は、遠慮なくおっしゃってください。
読んでくださって、本当にありがとうございました!




