第十四話~真実~
「大変です!」
部屋に咲が飛び込んできた。
ジンは組んでいた腕を解く。
「どうしたんだ?」
龍が尋ねた。
咲が息を切らせながら言う。
「藤神さんが、神城さんの仇をとるって、一人で………っ」
「え!?」
龍が驚く。
ジンは二人に言った。
「藤神の後を追う。準備して宇宙船で待っていろ」
龍と咲は頷き、走っていく。
ジンも部屋を出たが、向かうのは二人とは逆方向。ほまれを探しているのだ。実験室の前で立ち止まる。
ドアが少し開いていた。中から話し声が聞こえる。
「………はい………それでは………」
「………」
ジンは耳をすます。なにを話しているのかはわからないが、相手は男のようだ。
ほまれが電話を切る。
ジンは、タイミングを見計らって部屋に入った。
「次は誰を殺すつもりだ」
ほまれの肩が揺れる。
ジンはポケットから折り畳みナイフを取り出した。それをほまれへと向ける。
「なにを言っているんだ、ジン」
「とぼけるな」
ほまれの眉がぴくりと動く。
ジンはほまれの携帯電話にちらりと視線を向けた。
「誰と話していた」
ほまれはなにも答えない。
「人間サイドのリーダーではないのか?」
「………」
「答えろ!」
ジンが怒鳴る。
「市村ほまれ。お前は、俺たちの味方ではないな」
ほまれの肩が小刻みに震える。そして、声に出して笑い始めた。
「ふふふ、あはははは………っ」
ジンの眉間に皺が寄る。
ほまれはひとしきり笑うと、今までとは違う口調で話始めた。
「さすがだねぇ、ジン。いつから気づいていたんだい?」
ほまれはにやりと笑う。
「お前は今回、神城も戦闘に向かわせた。それは、あいつを殺すことをリーダーとあらかじめ決めていたからだ」
「へぇ、それで?」
「神城は相手の名前がわからなければ能力を使えない。神崎が異能者サイドにいる今、あいつの父親であるリーダーの名前がばれるのは時間の問題だ。だから神城を始末した」
ほまれは肩をすくめる。
「『神城雪子を戦闘に向かわせたのは事実だが、捕まってしまったのはたまたまだ』と言われたら、どうするつもりだ?」
「まだあるぞ」
ジンは続ける。
「お前はここにきたばかりの神崎を戦闘に向かわせた。それは、リーダーの名前が神崎の口からばれることを防ぐためだ」
ほまれは笑って聞いている。
「最後に、人間サイドのリーダーは神村の名前を知っていた。俺や神城たちの名前ならまだしも、ここにきてまだ日の浅い神村の名前を知っているなんておかしすぎる」
ぱちぱち、とほまれが手を叩いた。
「なるほどね。神城を戦闘に向かわせ、かつ人間サイドのリーダーと連絡をとれた人間は、私だけって言いたいわけだ」
「いつから向こう側だった」
ジンがナイフの先をほまれの首もとに向けながら言った。
「………いつから、ね」
ほまれは再びにやりと笑う。
「最初からに決まってるだろう、この人造異能者がっ」
「………っ」
ほまれが懐から拳銃を取り出す。
ジンは目を見張った。
拳銃はジンに向けられている。
「さすがは私の造った『最高傑作』。ここまで優れた『人形』だったなんて、我ながら驚きだよ。でも、気づくのが少し遅かったねぇ」
「なに………?」
「あんたはあの島にいる子どもたちを『操り人形』だと言っていたけど、私たちにとってはあんたがいちばん、『操り人形』らしかったよ」
ジンは唇を噛む。ナイフを持つ手に自然と力が入った。
ほまれはおかしそうにけたけたと笑う。
「『次は誰を殺すつもりだ』って言ってたね。………今決めたよ」
ほまれは拳銃を構えた。狙いは頭だ。
「ああそれと、冥土の土産に教えておこう。ここにはお前たちの味方は一人もいない。全員、人間サイドだからね」
「なんだと………?」
ほまれは残忍に笑う。
「かわいそうながきども。異能者は、全員滅びるべきなんだ」
「………ちっ」
ジンは舌打ちをする。
「死ね!最後の人造異能者!!」
ほまれが引き金を引く。
ジンは銃弾をぎりぎりでかわすと、ほまれとの距離をいっきにつめて、彼女の喉元をナイフでかっ切った。
鮮血が飛び散る。
ほまれの体が音をたてて崩れ落ちた。
ジンはそれを無感動に見つめる。
「………」
ジンは実験室をあとにした。
次回、アスカが暴走します。




