第十三話~激情~
「父さん!?」
龍が叫ぶ。
ジン、アスカ、咲が息を飲んだ。
モニターの中の龍一郎が言う。
『突然だが君たち、降参する気はないかね?』
「降参、だと………?」
ジンの眉間に皺が寄る。
「雪子を返せ!」
アスカが叫んだ。
それを知ってか知らずか、龍一郎は残虐な笑みを浮かべる。
『やれやれ』
一つため息をつくと、龍一郎はモニターから一度消える。次に映ったときには、右手に短剣を持っていた。
モニターの中の雪子の表情が、恐怖に歪む。
「まさか………」
龍が呟いて、叫ぶ。
「待って!父さん!!」
ジンの眉間の皺がさらに深くなる。
龍一郎は短剣を振りかざすと、勢いよく降り下ろした。
「雪子!」
短剣は、雪子の背に深々と突き刺さる。
『………っ………!』
雪子が痛みにうめいた。
傷口から、血が勢いよく噴き出す。
咲が目を見開いて口元に手をあてる。
アスカがモニターにすがりつくようにして、雪子の名前を叫んだ。
「雪子!雪子!!」
モニターの中の雪子は、ゆっくりと顔をあげる。その目はまっすぐにアスカを見ているようだった。
『ア、スカ………』
雪子がかすれた声でアスカの名前を呼ぶ。
「雪子!」
『………アスカ、今まで、ありがと………っ』
「雪子!?」
アスカが目を見開く。
「なに言ってんの!?ここで終わりなわけないでしょ!?ねぇ、雪子ってば!!」
泣き叫ぶアスカを、雪子はなだめるようにして言った。
『泣か、ないでよっ、アスカ………。泣くなんて、らしくない、でしょ………?』
雪子の口から血が流れる。
『ほんとに………楽しかった………。ありがとう、アスカ………っ』
「雪子!」
『死ね』
拳銃を手にした龍一郎が、銃口を雪子の頭に向ける。
ぱんっ、と銃声がして、モニターの左半分が真っ赤に染まった。
「!?」
龍は顔を背ける。
アスカはその場に座りこむ。流れる涙を拭うこともせずに、茫然とモニターを見つめていた。
「雪、子………?」
かすれた声で親友の名前を呼ぶ。
しかし、モニターの中の雪子の体は、ぴくりともしなかった。
アスカの瞳が絶望に染まる。
「雪子!雪子!!」
絶叫し、顔を両手でおおった。
龍一郎が気味の悪い笑みを浮かべる。
『並外れた戦闘能力を誇る人造異能者、ジン』
「なに………?」
名前を呼ばれて、ジンは驚愕で目を見開く。モニターの中の人物が、自分の名前を知っているはずがない。
『百発百中の的中率を誇る、藤神アスカ』
アスカの肩がぴくりと揺れる。
『炎使い、神村咲』
「………どうして………っ」
咲が口元に手をあてたまま、震える声で呟く。
『そして不死身体質、神崎龍』
龍は背けていた顔をモニターに戻す。
龍一郎は、残虐に微笑んだまま言った。
『もう一度言おう。今の娘のようになりたくなければ、降参することだ。さもなければ………』
「黙れ………っ」
唐突にアスカがうめく。そして、素早く銃を取り出すと、モニターに向かって撃ち始める。
「誰が降参なんかするか!アタシは許さない………っ」
モニターの画面がひび割れる。
アスカの瞳が絶望から怒りに変わった。
「絶対に許さないっ。アンタは、アンタだけはっ、必ずアタシが、この手で、殺す!!」
そう言うと、勢いよく部屋を飛び出していく。
龍と咲は茫然とその様子を見ていたが、咲ははっと我に返ると、急いでアスカの後を追っていった。
「父さん………?」
龍はモニターに向かって話しかける。
もちろん、壊れたモニターから返事が返ってくるはずがない。
ジンは眉間に皺を寄せて、考えていた。
次回、ジンの推理が炸裂します。




