第十一話~驚愕~
「へぇー。この子が龍のカノジョさんかー」
「ちょっ、藤神さん、咲さんは彼女じゃありませんよ!」
月に帰ると、アスカが咲を見てそんなことを言った。
ジンはさっさとどこかヘ行ってしまったようだ。
「よろしくお願いします」
咲は頭を下げる。
「なんだか人形みたいな子ね。可愛いわ」
雪子が微笑んで言う。
「まったく、アンタもすみに置けないねぇ」
「だから、違いますって」
アスカが腕を組んで横目で龍を見やる。
龍は必死で弁解しようとする。
「あの………」
龍とアスカのやりとりを見ていた雪子の服の裾を、咲が軽く引いた。
「なに?」
雪子が首を傾げる。
「お願いがあるんですけど………」
咲は雪子の耳元でぼそぼそとなにかを言っている。
それを聞いた雪子は、微笑んで頷いた。
「いいわ。そういうことなら、私に任せて。得意なの」
そう言うと、雪子は咲を連れて部屋を出ていった。
残された龍とアスカは、まだいろいろと言い合っていた。
「そういえば」
龍が思い出したように切り出す。
「藤神さんは、ジンのこと聞きました?」
「ジンのこと?」
アスカが首を捻る。
龍はジンに聞いたことを、アスカに話して聞かせた。
アスカは首を横に振る。
「初めて聞いたよ、そんな話。それ、ほんとにジンが自分でしゃべったの?」
「はい。そうですよ」
アスカは腕を組んで考えこむ。そして記憶を手繰るように言った。
「その話、アタシが聞いたことないから、たぶん雪子も知らないだろうね。ジンが自分のことを誰かに話すなんて、今までなかったし」
「そうなんですか?」
アスカは頷く。
「アンタ意外と、ジンに好かれてるのかもよ?」
「………だといいんですけどね」
龍は苦笑いだ。
アスカは真面目な顔で返す。
「いやいや、冗談じゃなくて。たぶんアンタが初めてだよ」
「………そう、ですか?」
龍が嬉しそうに微笑む。
そのとき、部屋のドアが開いた。
「お待たせ」
雪子が笑顔で部屋に入ってくる。
アスカが尋ねた。
「あれ、咲ちゃんは?」
雪子は軽く微笑むと、ドアの外に向かって声をかけた。
「入って」
すると、ドアの外の気配が動く。そしてそれは、おずおずと部屋に入ってきた。
龍とアスカが一斉に声をあげる。
「うわぁっ、すごい………っ」
「かわいー」
部屋に入ってきた咲は、頬を真っ赤にして俯く。腰の辺りまであった黒髪が、肩につかない程度にまで短くなっていた。
雪子が説明する。
「さっき、髪を切りたいって言われたの。龍君を驚かせたいって。どう?我ながら、いいできだと思うんだけど」
「なるほど。雪子、髪の毛切るのうまいもんねー」
アスカが納得したように頷く。
龍もがくがくと頷いた。
「すごい。可愛いよ」
咲はさらに真っ赤になる。
「ありがとう、ございます………っ」
すると。
「ごほんっ」
ドアの近くでわざとらしい咳払いが聞こえた。視線を向けると、そこにはほまれとジンが立っている。
先ほどの咳払いは、ほまれのものだ。
ほまれは、持っていたファイルで手のひらを叩きながら言った。
「………せっかくのいい雰囲気を台無しにしてしまって悪いんだが、仕事だ。今回は全員で行ってこい」
今回は、ちょっとほのぼのでした。
次回は、最後の新キャラが登場します!




