第十話~再会~
地球に着いた二人は、揃って街中を歩く。
龍にとっては、久しぶりの街だった。
宇宙船は、街はずれの丘のところに置いてある。
龍が尋ねる。
「咲さんの家に行くのか?」
ジンが頷く。
「一応、説明はしなければならないことになっている」
龍は俯いた。自分のときにあったことを思い出す。
「あれ………?」
ふと顔を上げた龍は、少し先に目を凝らす。
ジンもつられたように目を凝らした。
「………あれは」
「咲さんだ!」
龍は声を上げて走り出す。
ジンも後を追った。
「咲さん!」
こちらに向かって歩いていた少女が顔を上げる。そして、信じられないものでも見たかのように目を見張った。
「神崎くん!?」
龍は咲の前に立つと、笑顔になった。
「久しぶり」
咲はまだ驚いているようだ。
「どこに行っていたんですか?学校に行ったら神崎くんの席が消えていて、びっくりしたんですよ?………?」
そこで咲はやっと、ジンの存在に気付いたらしい。
「………こちらの方は?」
龍に尋ねる。
ジンは短く答えた。
「ジンだ」
「ジンくん………?」
咲はぱっと表情を輝かせる。
「もしかして、神崎くんのお友達ですか?」
「は………?」
ジンは間の抜けた声をだす。
「いや、俺は………」
「そうそう、僕の友達。向こうでできたんだ」
龍がジンの言葉を遮る。ジンは睨んだが、龍は気にしていないようだ。ふと、真剣な顔つきになった。
「実は、咲さんに話があるんだけど」
咲は首をかしげる。しかしすぐにどんな話か察したのだろう、彼女は場所を替えようと言った。
龍とジンは、咲についていくことにした。
「ここなら大丈夫です。話ってなんですか?」
咲が龍とジンの両方を見て尋ねる。
咲に連れてこられたのは、街はずれの丘の上。龍たちが乗ってきた宇宙船から少し離れたところだった。
ジンが無表情に言う。
「こい。お前を月へ連れていく」
龍のときと同じ台詞だった。
「月、ですか………?」
咲は龍を見る。
「神崎くんは、今まで月にいたんですか?」
龍は頷く。
「うん。それで、戦争をしてたんだ」
「人間とですか?」
「………うん」
龍の返事は小さくなっていく。
咲は少し考えると、もう一つ龍に尋ねた。
「これからも、神崎くんは月にいるんですか?」
「いるよ」
龍は即答する。
すると咲は、にっこり笑って言った。
「じゃあ、行きます」
「え………?」
龍があっけにとられる。
木の幹にもたれて目を閉じていたジンは、片目を開いた。
「行きます」
咲はもう一度言う。
龍は慌てた。
「咲さん、本当にいいの?もうここには戻ってこられないんだよ?それに、親にはなんて言うつもり?」
「大丈夫です」
咲は制服のポケットから携帯電話を取り出す。そしてどこかへ電話をかけたかと思えば、ものの数分で電話を切った。
「親は説得しました」
「本当に?」
龍は心配になって尋ねる。
咲は頷いた。
「はい。今の親は、本当の親ではないので」
「え………?」
龍は怪訝そうに言う。
ジンはちらりと、咲の方へ視線を向けた。
咲はなんともないというふうに言った。
「今の両親は、本当の両親の友達なんです。本当の両親は、何年も前に交通事故で亡くなりました」
「それならなおさら………」
「いいんです。居候を続けるのも、そろそろ限界かなって思ってましたから」
龍はなにも言えなくなる。
そんな龍にかわって、ジンが口を開いた。
「いいんだな」
咲は頷く。そして龍を見て言った。
「月に、神崎くんがいるのなら」
「………」
龍は俯く。しかしすぐに顔を上げると、ジンに向かって小さく頷いた。
ジンも小さく頷き返すと、宇宙船の方へと歩きだす。
龍も咲の手をひいて歩きだした。
次回は、ちょっとほのぼの(?)かもしれません。




