幼馴染み
ベタな設定シリーズです。
高校に入学して一ヶ月
新しい友達が出来た
新しい制服も慣れた
新しい教室にも慣れた
今は授業中、高校の授業にも大分慣れた
慣れてきたんだけど…
俺は高畑耕司
慣れて無いというか俺には一つ問題がある…
隣を見てみる…
幼稚園からの幼馴染みの女の子が居た
名前は高橋翠、幼稚園から小学校六年までずっと同じクラス、名字の関係で新年度はいつも隣の席…居て当たり前の存在だった
地域の関係で中学校は別々、実は翠が好きだった俺は中学時代一切連絡をとっていない…思春期って難しい…
入学式に三年振りに再会
一ヶ月経過
まだ一言も会話していない…
俺は超人見知りなのだ!
向こうから話し掛けてくるのを待っているが挨拶すらしてくれない…
忘れてるって事は無いと思うんだけど…
完全にタイミングを逃した感じだ…
「高畑、みんなでカラオケ行くけど行かね?女らも行くって」
放課後、高校から仲良くなった佐々木がお誘いに来た
「おぉ、行く行く」
このクラスは男女供仲がいい、よくこうして放課後遊びに行ったりする
俺も誘われれば当然行く
翠の方を見てみるがどうやら行かないらしい…賑やかなのが嫌いなのは相変わらずなのかもしれない
更に一週間経ったが翠とは相変わらずの平行線状態だ…
前から思っていたのだが翠はおとなしい、昔もおとなしかったが更におとなしい気がする…誰かと話しているのを見た事が無い…
いつも自分の机でぼーっとしている
その日の夜、暇だったので佐々木と携帯でクラスの女の子の話で盛り上がっていた
「高橋って仲のいい友達居ないの?」
話の流れから何気無く聞いてみた
佐々木は翠と同じ中学校だった筈だ
「…………お前…知らないの?」
「えっ?な…何が?」
「高橋に友達なんて居ないぞ、あいつ空気って事になってるから」
…………空気?………
は?何言ってんだコイツは……
「……どういう事?」
佐々木が言った事を良からぬ方に分析しだした自分を抑えて聞いてみる
「あいつ暗いだろ?何やってもダメだし…みんなフォローすんの疲れちゃってさ…いっその事居ないって事にし
ピッ
通話を切った
直接聞いていたらぶん殴っているところだ
ピリリリ
携帯が鳴る、佐々木だ
電源を切る
高校で初めて出来た友達もクラスメイトも翠の中学の奴らもまとめてぶん殴ってやりたかった
確かにあいつは無口だしトロかった…だから?
中学の三年間に何があったか知らないが空気って何だ?
高校まで引きずって?
この時一番頭にきていたのは人見知りとかいって一ヶ月以上気付かなかった俺だった
その日はなかなか寝られなかった
次の日
いつも通り教室に入る
佐々木は気まずそうにこっちを見ている
「翠」
翠はビクッとしてこっちを見た
「は…はい」
「おはよう」
「……お…おはよう…」
「おう」
三年振りの挨拶をして自分の席に座る
あれほどできなかった会話は実に簡単だった
周りの連中は意外そうな顔で俺を見ている、何だお前ら?
翠も不安そうな顔でチラチラこっちを見ている
仲良しクラスだと思っていたが別のものに見えてくる
全く違う視線を受けてそう思った
小さい方の視線はとても痛々しくとても懐かしくて…俺の心を締め付けた
俺は大丈夫だからそんな顔しないでくれ……
それから…
「ほら、帰るぞ?」
「耕君…待って」
衣替えが済んだ頃の放課後…
もたもたと鞄に教科書を詰める翠を待つ
「高畑、翠ちゃん、バイバイ」
「おう、じゃな」
「ばいばい」
挨拶をしたクラスメイトに二人で挨拶を返す
少しずつ変わったクラスメイトもいるが変わらないクラスメイトもいる
俺に対してのクラスメイトの反応も確実に変わった
「お待たせ」
笑顔で駆け寄ってくる
三年前にいつも見ていた懐かしい笑顔を見ると小さい事は気にならなくなる
自然に俺の顔も綻んでしまう
どうやら俺の気持ちが三年前に戻るのも時間の問題みたいだ
読んで頂いてありがとうございました、長くする予定でしたが30分程で書きあがってしまった短編です。