七音探偵事務所
未熟者ですので、文法的に破綻している部分等ありましたらご指摘頂ければと思います…
2/12 0:15 何故か紛れ込んでいた謎の文字列を削除
9/12 1:52.pm
七音探偵事務所
昼も過ぎ、日も空の頂を少し過ぎたところ
二人の女性がガラスの天板を張ったテーブルを挟んで向かい合わせのソファに座って話をしていた
落ち着いた茶色の髪を肩程度で切った探偵事務所の主たる七音 千花と、跳ねた黒髪を左右で結って止めた依頼を持ち込んだ女性である
「つまり、昨日の深夜…2時から3時頃
自宅の玄関付近で吠え声が聞こえた
そこまでは御愛犬を確認できた訳ですね?」
「あの…朝起きて捜しても見つからなかったので、不安で不安でしかたなくて」
心底疲れきったように、それでいて平常心を維持しきれない様子で訴えかけてくる女性を見ていると、朝から今まで必死に捜していたのだということが解る
愛犬が突然失踪した焦りが大きいようで、いまいち話に纏まりがない様に感じる
「…そうですか
では、御愛犬は私共が責任を持って捜します
ご安心ください」
少し落ち着いたようだが、それでも不安は拭いきれないようで未だ顔を青くして話す依頼人である藤堂 三千代を宥めすかしながら引き続き話を聞いた
結局、その日は必要な情報だけ聞いて報酬等の話は後日とした
依頼人の女性の自宅はこの事務所から程近い所にあるので、一度近辺を調べる為に赴くことにし、部屋の隅でパソコンを使った作業をしている青年…竹中 律にその旨を伝えて事務所を出る
9/12 3:32.pm
公康アパート前
「ここ…ですか」
4階建てのアパートメントを正面に臨みながら呟く
依頼人の藤堂さんはこの建物の1階にお住まいらしい
そして、逃げ出した犬が向かいそうな場所と言ったら…
「こっち…ですかね?」
千花は無言で後ろに振り返り、そう呟いた
彼女の視線の先には、秋篠自然公園と言う名の市営の公園の入り口である生垣の切れ目が見えた
そこにはアーチが架けられ、『秋篠自然公園』と彫られており、この近辺では一番の広大さをたたえるその公園の名を示していた
脱走した犬は、普段散歩に使われている場所を隠れ場所として選ぶことが多い
探偵業の基本でもある
「とりあえず、調べましょう…」
9/12 5:30.pm
秋篠自然公園-噴水前
七音はこの公園のシンボルでもある巨大な噴水を前にして考え込んでいた
結局、情報の≪じ≫の字も見つからなかった
だが、それは寧ろ想定内だ
この公園に来たという確証もなく、犬が逃げ出したのなら普段散歩に使われているであろうこの公園に来ている可能性が比較的高いと考え、ここに張ったので、見つかる確率の方が低かったとまで言える
しかし、そんなことよりも更に気になることができた
なぜか動物を全く見かけることが出来なかったのだ
絶好の散歩コースである筈のこの公園に犬を
野良猫の楽園とまで言われていた公園に猫を
毎日餌を啄みにこの公園を訪れている筈の小鳥達でさえ
今日の公園では、見かけることはおろか、鳴き声すら聞こえなかったのだ
明らかな異常性を感じたものの、それについて詳しく知る方法も無い為一旦事務所に戻ることにした
9/12 7:14.pm
七音探偵事務所
「ただいま戻りました」
事務所の扉が開け放たれて、茶髪の女性が姿を見せる
七音 千花である
「…遅かったですね」
男性にしては長めの髪を持った暗い雰囲気の青年…竹中 律がそう返答する
ここで、千花はパソコンに向かう律を見て、思い立った
「そうですね…少し調べて欲しい事があるのです」
インターネット上になら公園に動物が見当たらなかった理由があるかも知れないと考えたのだ
「動物が居ない?」
「えぇ、見落としただけかも知れませんが、何だか違和感を感じたので」
「…解りました
少し座って待っていて下さい」
パソコンに向かった律はキーボードを叩き始める
パソコンを使ったことの無い千花にも、それが並みではない早業だというくらいは解る
数分後、律が戸惑った様子で見せた画面にはこのように、表示されていた
『秋篠自然公園、ホームレスが姿を消した』
『深夜の自然公園に近付くと神隠しに遇う』
『秋篠自然公園から突然動物が消えた』
『9月11日深夜を境にホームレスが居なくなった』
『自然公園に住んでいる友人と連絡がとれない』
『家から飼い猫が居なくなった』
『知り合いの飼っていた犬が失踪したしたそうだ』
…
たて続けに見せられたWebページに書かれていた内容を一部抜粋すると、こうだ
半端都市伝説のように語られたそれは、現在まで自分達の耳に入らなかった事が不思議なほどの情報量だった
インターネット上で噂にはなっていたものの、マスメディアの目は及んでいなかったようだ
事実、千花は職業柄ニュースなどには敏感であるが、新聞でもテレビでもその様な情報は見受けられなかったのだ
この情報達が事実なのかは分からなかったが、今日の公園の様子には事実と思わざるを得ない『何か』があった
「大量のホームレスと動物の失踪…?」
「あの女性だけじゃ無かったみたいですね」
恐らくペットが失踪したのは…だろう
「…神隠しか何かっすかね?」
続けて律がそう発言した
そんな訳はあるまい
そんな事を思い浮かべた千花だが、そう考えないと納得出来ないことが多くもある
まず、ホームレスが一人も見当たらなかったこと
当初は疑問を持たなかったが、これは確かにおかしい
あの公園には大量のホームレスが居た筈だ
しかし、一人も見つけることが出来なかった
普段はベンチや芝生の上に寝ていたり、ゴミを漁っていただろう
しかし、一人も見られなかった
次に動物だが、散歩中の犬どころか、自由な小鳥や普段食べ物をねだって摺り寄ってくる野良猫でさえ見かけなかったのだ
一晩にして動物が消え失せるなどということは
現実的にはあり得ない
しかし、あり得ないと言わせない異常性を感じたのも事実だった
…
「噂通りならば深夜に自然公園に行けば何か分かるはずですよね」
突然、千花がそう発言した
「…俺も着いていきます」
深夜に女性を一人で出歩かせる訳にもいかないので律も覚悟を決める
「では、私は牛乳とパンを買ってきますね」
「千花さん変なところで雰囲気大事にしますよね」
「まぁ、要らないと言うならそれでいいんですけどね」
「…お願いします」
刑事ドラマの観すぎだ
と指摘する人間は何処にも居らず、ただ和やかに時は過ぎていった
物語はクトゥルフ神話風で展開していきたいと考えております