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プロローグ
およそ四半世紀にわたって地域の人たちに愛されていた暖簾。
群青に白地のそれは夏の風物詩といって差し支えなかった。
しかし、その年は終ぞ掛かることがなかった。
また一人、力のある魔女が亡くなった。
それから十年が経った。
長いようで短かった。
暑い年だった。
駅の掲示板にぽつんと目立たない地味なポスターが貼られた。
女の子が背伸びをしてポスターを貼る姿は可愛らしく見えた。
そのポスターにはお世辞でも綺麗とは言えない文字が踊っていた。
『ひやし魔女はじめました』