Who are you
ムーンハイツにはもう大原逸美はいないと第7部の後書きにはあった。
しかし文夫はハイツに来てしまう。そこで彼を待っていた者は?
満月が明るく照らす深夜のハイツの前に文夫はたたずんでいた。なるほど
こういう事か、ここに綾瀬いや第6部、第7部で大原と彼女は名のっている
彼女はもう大原なのか、ここにはいない、では彼女は何処に居るのだろう。
彼女のいないムーンハイツに何故自分は来ているのだろう。
「こんばんは、児島 文夫さんですよね」
背後から男性に声をかけられ跳び上がるほど驚いた。振り向くと見覚えのあ
る若い男性が立っていたまだ20代だろう
「大原・・・・さん?」
ムーンハイツ201号室のご主人だ2,3度あったことはある。めちゃめちゃ
気まずい(どうされましたか?)と聞かれても答えようがない。
しかし彼は以外な事を言い始めた
「お待ちしておりました。どうぞお上がり下さい」
彼は2階へと階段を上がり始める
「え・・・どういうこと?」
階段の途中で立ち止まり振り返った彼は、なんの事か分からず立ち尽くす文夫
に無表情のままもう一度言った。
「どうぞお上がり下さい」
もう腹をくくるしかないようだ。しぶしぶ文夫は彼に続いた。201号室の前
で彼はドアを開け外で待って文夫に先に入るよう促した。
「いや、先に入るってのは・・」
「どうぞ」
彼は無表情のままだ。全てお膳立て出来ているという事かしかたなく文夫が部
屋に入ると大原は部屋には入らず外からドアを閉めた。
「はあーーーー」
長いた溜息が出た。煮るなり焼くなり・・・・いや・・それは止めてほしい。
「どうぞ、中へお入り下さい」
リビングへとつづくドアの向こうから聞きなれた声がした
{こ・この声は}
照明は点いていず満月の光だけが差し込むリビングは意外と明るかった。
セミダブルのベッドの中央に腰掛ける文夫の良く知る女性がこちらを向いて
微笑んでいる。
「奈・・・・緒・さん?」
部屋に入った右側にはアップライトのピアノが置いてある
「この部屋は・・」
「そうアロームの頃のうちの寝室よ」
右手で自分の右側に座るように示した奈緒さんはものすごく若かった。そう
新婚の頃の奈緒さんだ。パジャマもその頃のレースの付いたかわいいものだ
ネグリジェというのだろうか文夫はそれが好きだった。
「これ位しないと大原逸美さんには対抗できないからね。でも何も期待して
はだめよ、R15指定してないんだから」
「ほんまに奈緒さんなん?」
奈緒さんはクスクスと笑った
「大丈夫、大原さんのご主人とは何でもないよ。これは私の描いた物語の中
の事だから」
「綾瀬は大原になったの?ムーンハイツにはいないって?」
いったい何がどうなってるのか文夫はさっぱり分からなかった
「綾瀬さんは大原さんと結婚したのよ。でもムーンハイツに居たのは数日よ
すぐに離婚したのだから今は綾瀬さんね。Again第9部、ジャック第4部
もそして6,7とこの8部も私が描いているの」
「え・・・・な・・・・なんのこと」
文夫はパニックになった何も考えられない考えたくない、彼の脳はあらゆる
部分でシャフトダウンしていった。辛うじて残った思考で言葉をつなぐ。
「奈緒さんAgain・・読んだの?」
「ジャックも読ませて頂きました。すばらしいわ!」
文夫は全身の血液が凍ったような感覚に襲われた。
「な・・・・なんという事を」
「本人が自らすすんで書いた供述調書といってもいいんじゃない。極めて
信憑性が高いわね」
「ほ・・ほんまに奈緒さんなん?」
「あー疑ってるの?。まーこの寝室の様子も綾瀬さん知ってるしね。」
奈緒さんはしばらく腕を組んで考え左手の手のひらに右手の拳を当てた。
「そうだ、これならどう?読者の皆様、重大発表です。実は児島 文夫
は、かせい・・」
「わーわーやめてくれー」
「じんなんです」
「言うてる様なもんやん」
「いいやん皮くらい被ってても」
「も・もろですやん」
「まさか、綾瀬さん知ってないわよね」
奈緒さんはいつの間にか皮を引っ張り上げていた。
「わーーあ・あかんてR15指定してないんやろ」
{こんな事する人やったかな}
「いーじゃんこれ位サービスよ・・・ま・喜ぶ人もおらんけど」
文夫は奈緒さんの胸元に輝くピンクゴールドとシルバーのトップ
のネックレスを見た。まあ、彼女にはもともとプレゼントしてるからと
思っていると。奈緒さんはもう一つ左手に同じネックレスをかざした。
「ほら・もう一つあるのよ!」
「あ・・あの話は創り話で・・・」
「あるのよ!・・もう一つ・・だよね!・はい、これ文夫君が持っていて」
「な・・なんで」
「理由があるの必ず持っていて。必要な時が来る」
「綾瀬さんは今何処に?なんで奈緒さんがジャックを?・・これからどう
なるの?」
「私に任せて!綾瀬さんが今何処にいるか、私が何故ジャックを描いている
のか、物語の進行に伴って全ては明らかになるわ」
この物語はフィクションです従って児島 文夫は仮性包茎ではありません
児島 奈緒美




