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プロローグ
見上げれば、胸が痛くなるほどの青い空。
見下ろせば、うごめく黒い群衆。
彼らの顔に浮かぶのは憎悪。
怒り、悲しみ、哀れみ、嘲笑、侮蔑、恐怖、好奇。
その視線を受けながら、ゆっくりと目を閉じる。
隣で罪状が読み上げられれば、観衆から聞き取れないほどの罵声が飛ぶ。
だれかが投げた腐りかけの果物が髪や服を汚した。
これ以上の暴動が起こる前にと、慌てた様子で刑の執行が告げられた。
痛みはない。
熱さも感じない。
すべての感覚はすでに麻痺し、あるのは空虚な意識だけ。
そして、私は炎に包まれながら密やかに笑った。
ああ――これで終われるのだ、と。
最後の瞬間、懐かしい声が聞こえた気がした。
けれど、それを確認する間もなく、私の意識は闇に呑まれた。