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星と太陽、セピア色の想像

作者: 村雨


明日には何も残らなかった。


色の消えていく映画を見ていた。内容は忘れた。埃が積もったような印象だった。彼女はずっと遠くを見ていた。

「どうだい」と尋ねてみた。彼女は曖昧に笑った。求めているものが違った。

手を繋いではいけないような気がして、しばらく何もしないでいた。一つに結んだ髪がときどき揺れた。

「私はね、もっと綺麗な時間が欲しかったの」

それはきっと手に入らなかった。いつか見つけようとも思えなかった。

もう、心の中には彼女がいないことが分かった。だから、黙って立ち上がってスクリーンの向こうに行くことにした。少しずつ色が褪せていった。


世界について考えてみた。

たとえば、目の前で人が死んだとする。それはきっといけないことで、なんとかできたのではないか、と考えられた。それでも、誰も何も見ることができなかった。

星が置いてあった。金星とか土星とか、他にも知らない星が底に沈んでいた。太陽だけ見つからなかった。

向こう岸に何かが閃いた。走って追いかけた。それでもやはり、彼女しかいなかった。


そこに札束が積んであったら、きっと立ち止まって這いつくばっていただろう。でも、今は汚い羽根が落ちているだけだった。一つ拾ってみた。空は飛べなかった。

泣くことだけは、どうしてもできなかった。


少年兵が手榴弾を持って立ちすくんでいた。声をかけようとしたとたん、大人たちが手錠を持ってやってきた。

「それはもう終わったんだ。もう休みなさい」

少年兵は栓を抜いたが、もう爆発はできなかった。代わりに闇が降ってきた。


結局のところ、何も失うことはなかった。新しい宝石を見つけることも、自分自身の時間を送ることもできなかった。

信号が変わった。歩き出したら彼女が見えた気がした。雲の向こうに星が見えた。



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