初仕事の夜
やっとプロローグ回収出来ました。
「ハデス様、お仕事は満月の日だけと聞きましたが、他の日は何をしたら良いのでしょうか?」
「そうだね。特にする事は無いから自由にしてもらっても良いだろうけど、この村は何にも無いしつまらないだろうね。エマさえ良かったら、僕がご飯を作る代わりに僕の仕事も手伝ってくれないか?」
「ハデス様は種を蒔く以外にお仕事があるんですね」
「どっちかというと、月の卵の仕事の方がサブでメインの仕事は冥府の管理だから。僕の仕事の手伝いは最初の満月の日が終わってからにしようか」
ハデス様はこの後もお仕事があるらしく、私はセレーネ様の家に戻ることにした。
「ハデス様、ケルちゃんがついて来てしまうのですが」
「大丈夫、いつも村を自由に歩いてるし、大丈夫だよ」
ケルちゃんは私の家の中にも入ってきて、そこら辺をくんくん嗅いでる。
お風呂入りたいけど、着替えあるのかな。
クローゼットをみたら、セイレーンさん達が着ていた様な白い服があった。これでいいのかな?
それから数日、ハデス様の美味しい手料理を食べつつ過ごしていたら、満月の夜になった。
「今日は長い時間の仕事だから、夜食はピクニックにしようね。寒いかもしれないから、毛布も持って来たよ、暗くなると歩きにくいから、日の入り前から行こうね」
どこまでも気配りがすごいハデス様。
ハデス様と門をくぐり、山頂まで歩いて行く。坂道も緩やかなのでそこまでキツくはない。ケルちゃんも一緒についてくる。
頂上について、ちょっと休憩していたら。月が昇って来た。満月なのもあるけど、すごく大きく見える。
目の前に広がる月の卵の海。世の中はこんなにも恋に溢れているのか?
「はい、これ」
手編みの手袋みたいなものを渡された。
「これで色の変わった卵を撫でる様に拭けば楽だよ。僕が編んだんだ。簡単に綺麗になるように、ユニコーンのたてがみもちょっと編み込んだみた」
どこのオカンですか?
しかも、ピンクの縞々模様でむっちゃ可愛い。
「卵を見せるからこっちにおいで」
ハデス様について行くと、確かに乳白色の卵に混じって、緑っぽくなっている明らかに色が違う卵がある。
「これだよ、ゆっくり手袋で撫でてごらん。辛い恋をしているとこういう色になって来て、嫉妬で悪意が生まれてしまうと黒くなってしまうんだ。だから僕は悪意の詰まった卵を壊して、解放してあげるんだよ」
私は手袋をつけて、恐る恐る撫でてみる。
「無理して頑張らないで、きっとあなたにピッタリの恋が見つかる」というと。
卵はふるっと揺れていたが、だんだん揺れがおさまり、色が乳白色に変わっていった。
ハデス様はそれを見て。
「エマはすごいね。こんなにすぐに卵が反応するとは思わなかった。他のも宜しくね。僕は種まきにをして行くよ」というと、卵の畑にぽっかり穴が開いている所に行き、真珠の様なものを穴に落とし、そっと土をかけた。
「それが卵の種なんですか?」
「これはね、天使の涙だよ。ここから恋が生まれるんだ。壊れて無くなった卵があった所に蒔くんだよ。ちょうど穴が開いているしね」
ハデス様は優しく土を被せて、いい恋に恵まれますようにと小さく呟いて、次の種を蒔きに行った。
これでちょうど半分ぐらいなので、残りは明日以降に投稿します。
ハデス様はセレーナ様に良振り回されてましたので素直なエマが珍しいようです。




