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ハデス様とセレーネ様

ランチの後、私はハデス様のお家にやってきた。


家の作りはほぼ同じだが、キッチンが充実してる。レストランの厨房みたい。


私がキッチンを見ているのに気がついて、

「料理は趣味でね。セレーネは全くできないから、彼女の分も作ってたら、仕事が忙しくない時は、みんなの分のランチも作る事になって。夜と朝はみんな各自で食べてるよ」


「セレーネ様の家には食料品が全くなかったんですが、どこで買えます?」


「エマの分は僕が作るから、お腹が空いたら家に来て」


え、こんな美形の男性が私の専属シェフ。そして神。。罰当たりではないのかしら?


ささっと紅茶を入れてくれたハデス様。


「さてどこから話そうかな。まずセレーネは僕の弟の嫁なので、義妹になる。でも最近、気になる人間の男性を見つけたって言ってたから、会いたくなって君に仕事を押し付けたんだな」


え?セレーネ様は結婚してたの?それで彼氏を作ろうとしてる?


「なんで私なんでしょう?セレーネ様は男の匂いがしなくて、すごく普通で良いって。。。」


最後の方はなんだかボソボソとした話し方になってしまった。


ハデス様は私の頬に手をあてて、

「普通かな?とても可愛いと思うけど。セレーネはきっと自分だけ遊びに行くのに罪悪感があったのかな?僕の好みの子を選んでくれたんだね」


私はびっくりして固まってしまった。

ハデス様の好み??この地上の者とは思えない(神だけど)美形の男性が?


美しいものを見過ぎて、感覚がずれてるのかな?


「感覚はズレてないと思うけれどな、信じてもらえる様に頑張るよ」


あ。。ハデス様も考えている事がわかるのか。


「僕が聞きたいって思ってる時だけね。全部聞いたら面白くないし」ってウインクされた。


「さて月の卵については聞いてる?」


「はい、人間の命って聞いてますが」


「。。。。セレーネがそう言ったの?」


「あれは命ではなく、人が恋すると出来るものだ。セレーネは恋多き女だから、命と同じなんだろうな」


「あ、命のような物って言ってましたね。じゃあ割れた時は死んだ時じゃなくて」


「恋が終わった時だ」


よかった。割れる度に人が亡くなるとか怖かったから。


「では違う色の卵があった時は拭いて周りと同じ色にしろというのは」


「それは間違った方向に進んでいる恋を正す為に汚れを拭き取るんだ。放っておくと黒くなってしまうのでね」


「あ、黒い卵を見つけたらハデス様を呼んでと言われました」


「そう、それは僕が壊さなきゃいけないから」


「え?壊すんですか?ヒビが入っているのでも触っちゃいけないと言われてたので」


「そう黒の卵をそのままにすると周りの卵が引きずられて、色が変わったり、割れるんだよ」


なるほど。


「色が変わった卵は適当な布で拭いてっていうのも」


「て。。適当、それは僕が用意するよ。エマは神の手が無いから、普通の布じゃダメだろうし」


セレーネ様の言った事と全然違うな。ある意味清々しいレベルで違う。




初めに勘違いすると、どんどん話が変わってきちゃうます。

ハデス様はちゃんと確認するタイプで良かった。

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