操りし少女
1984年、彗星より巨神堕つる。
黒石となりてしばしの眠りにつき、
眠りから目覚めんとする、2054〜5年。
再び彗星から堕つる。
『巨神が目覚めし時、神の時代訪れん。』
「ん?何あれ?」
たまたま、勉強中自宅で窓から外を眺めていた、
女子高生、才川 明星。
彼女は、次第に大きくなる轟音と、それと共に包まれる辺りの景色、窓の外から見える強烈に発光する蒼い何かに顔をヒクつかせる。
「う、うわわわ、うわぁぁぁぁーー!!!!!」
家中に響き渡る、情けない声とともに、それは
窓から見える山の裏側に落下し、その衝撃で遠く離れたここまで地響きが起きた。棚の上にあるヒーローの人形が彼女の頭に落ちる。
「いたっ!?」
一体何が起きたと言うのだろう。突然起きた非日常的な出来事に彼女は驚きを隠せないでいながらも、好奇心が湧いた。そして、おずおずと窓から顔をひょこっと出して、山を覗いてみた。
山の裏側には煙が立ち、蒼い光が空に発光して広がっている。彼女は次第に目をキラキラさせ、一目散に外へと飛び出した。
「こういうの、待ってた!!」
彼女は好奇心旺盛で、お転婆な、女の子。
非日常に想いを馳せながら、いつも日常を送っていた。ついにきた、千載一遇の好奇。彼女はそれを逃すまじと外へと駆けた。
「な、な〜にこれ………?」
山裏には、直径10メートルはあろうかと言う巨大な跡、底の見えない穴があって。彼女は、ひょこっと覗いてみる。
「あの〜、誰かいませんかー?」
当然いるはずもないのだが、万が一宇宙人がいたら友達になれるかもしれないなんて想いを馳せる彼女。すると、穴の中からコーッと息を吐くような、声が聞こえてくる。
彼女はゴクリを唾を呑みながら、さらに深くへ覗き込む。その時だった。長い手が彼女の首を掴み、穴の中に引き摺り込む。
「わわっ!?」
彼女は持ち前の運動神経で、腕を掴み、引き剥がし、宙で前に一回転すると、掴んできた生き物を空中から一本背負いにして、地面に叩きつけた。
「グワァッ!?」
謎の生き物は呻き声を上げ、立ち上がれないでいる。ヒーローに憧れた彼女は、日々特訓を重ね、その成果が出たのだ!
「いきなり掴みにかかってくるなんて、失礼ね!わたしは才川 明星!あなた、私の友達にならない?」
しかし、そこにいたのは何と言うこともない普通の宇宙人。………普通の宇宙人!?
「ーーーーーーー……ーーー……。」
そいつは訳の分からない言葉を発したかと思うと、蒼い光に包まれ、やがて光そのものとなり彼女の中に飛び込んだ。突然の出来事に反応することもできず、彼女の中に光が入り込む。
「か、かはっ!?」
一瞬の強烈な吐き気の後、体がドクンと脈打った。
「………フフ、フハハハハハッ!!!!」
彼女?は狂気的な笑い声を響かせる。
「…………特に何もない!!!」
力が溢れるとか、不思議な能力に目覚めるとか、色々期待した彼女はガッカリした。いやもしかしたら、色々試してみたらまた違う何かがあるのかも知れないけど。
「はぁ……でも、まぁ、楽しかったわね。」
彼女はご機嫌に山を降りていった。
「あれ?みょーちゃんじゃん!!」
「あっ、幸子。」
山からの帰り道、同級生の片山幸子に出会った。幸子は気のいいやつで、いつも変わり者のわたしに付き合っていろんな話を聞いてくれる。
「なぁ、幸子。聞いてくれよ。さっきさ、宇宙人に会ってさ。」
「うんうん。………うん?」
「そんで私ん中入ってきたんだけど、何の変化も感じなくてさー、もっとこう光が溢れたりとか、力がバァーッとこう、溢れたりとか………」
「みょーちゃん。いよいよか。」
幸子は顔を手で覆い、天を仰ぐ。
「いよいよって何だよ。私はずっと本気だぞ。さっき、隕石みたいなのがビューンって落ちてきただろ?あれだよ。」
「あぁ!確かに!すごかったね。……でも、それと何の関係があるの?まさかあれの正体が宇宙人でしたー!とか?」
「フフフッ、そのまさかだよ幸子くん。私は選ばれし者となり、力を得たの………」
「あれ?何かあそこ、空、また光ってない?」
幸子が私を無視して、空を指差す。そこには、先程と同じ蒼い光を放つ隕石が落下しようとしていた。
「なんか、こっち向かってきてない?」
「まさか、幸子。冗談きついよー。」
いや、来ている。明らかにびっくりするぐらい一直線にこちらに向かって飛んできている。
「「う、うわわあぁぁーーーー!!!!」」
幸子と私は一目散に駆け出す。
目の前の星のスピードに勝てる訳もなく、一瞬でその距離は縮まり、目の前に光の隕石が迫ったとき、静かに私たちは最後の時を予感した。しかし、
『契約だ。私と契約を結べ。』
不思議な声が私の頭にこだまする。
「なに?する!するから助けて!!!」
『巨神運命の時に至りて、今ここに顕現する。』
ゴゴゴゴゴッ、とアルプスの山岳地帯に鎮座するそれは、光を帯びていた。
「えぇー、緊急ニュースです。1984年より現れた謎の体長54メートルの巨大な人型の黒石。突如眩い光を放ち、現地は騒然となっています。一体何が起こっているというのでしょうか?」
天空に座する塔。
そのガラス窓の奥に映る2人の男性は、
目を細め見ていた。
『ついに来たか。』
『あぁ。』
『滅亡か、救いか。命運を握るのは、少女か。』
『神の時代だ。変えられん。』
『運命に抗えるのは、人の意思だ。分からんぞ。』
『………フン。』
ドガンッ!!と、
耳を劈くほどの爆音が、目前で地響きと共に体を揺らす。今に光の隕石がぶつかって少女達が、塵となろうかと言う時、それは現れた。
「な、何これ?」
巨大な影が彼女達を覆う。
見上げると、上には呼吸をし、胸を上下するあまりにも巨大な何か。そして、目の前には隕石諸共、地面に突き刺した巨大な手が大きな影を作って、私たちを覆い、夜のような暗さを作りだしていた。
「………もしかして、私たちを助けてくれたの?」
それには応えることなく、一瞬の白い光に包まれた後、跡形もなく姿は消えていた。ただ目の前に巨大な穴があり、煙が立ち登り、事の真実を伝えていた。
「わ、わたしの力が目覚めた?」
開口一番彼女は手をわなわなと震わせ、
その拳を天に突き上げた。
「やったわ、幸子!私、やったのよ!」
後ろを振り返ると、幸子は泡を吹いて気絶していた。
「幸子ーー!!!!」
明星は、急いで幸子を抱えて病院へと走っていった。




