第2話「ラフ・マーケットの薄いラベル」
[Mini HUD]
EI 69→71(+2) / PI 04→06 / 反射率 18%
関税:契約 3%/許し 1%/同行 2%/資格 +12%(加算)
フラグ:Caravanserai ポート 偽造ルート/「未開封条項」の箱(月光反射)
スロット:■ ■ ■ ■ ■ □(Token #2 再充電 完了)
夜は、噂を膨らませる技術を持っていた。
ラフ・マーケットの天幕は月光を薄く掬い、値札に塗る。資格ラベルは夕刻からゆっくり膨張し、真夜中には指先が触れるだけで弾けそうだった。
[Mini HUD]
EI 69→71(+2)/PI 04→06/反射率 18%
関税:契約 3%/許し 1%/同行 2%/資格 +12%(加算)
Flag:**Caravanserai ポート 偽造ルート/「未開封条項」の箱(**月光反射)
スロット:■ ■ ■ ■ ■ ▢(Token #2 再充填完了)
「泡だね」マリアンが看板を畳む。「この夜は、人が自分を尋問して、その代価として破片を買っていく」
「破片を止めるんじゃなく、尋問を翻訳する」俺はコーデックスを点す。「入場と同行へ」
陳列台の裏で、商人が囁きを交わす。
「Caravanseraiで押したらしい」
「重ね刷りなら、見つかっても合板だと言い張れる」
――重ね刷り。昼に見た薄さ。資格の表裏に入場/同行が透ける偽装術。根がポートなら、市場だけで殴り合っても終わらない。
「ポートへ行く」俺は言う。「流れの起点へ」
Caravanserai ポートは低く、遠く呼吸していた。
人と荷、噂とラベルが同じ門を使う。
検問官の問いは昼と同じ。「名前は問わない。足を問う。三歩」
左。停止。右。 ルシの足首リングが一度、二度、短く点る。承認。
台座には本日の Port税 図面。
ラベルプレス → 関税検印 → 搬出窓口までが細線で繋がる。
――検印の下に、ごく小さな回路遮断リングが一つ増設されていた。臨時回路。誰かが、何かを後貼りした。
「ここを通ると……」ロウェルが指で線を追い、止まる。「検印前に『幻燈区画』。そこで『資格』の紋様を上書きする」
「重ね刷りの正体」俺はコーデックスを近づける。
[検知]非認可補正板――鏡膜コーティング/反射率 上昇
「鏡」ジョラが低く。「白雪ラインの可能性」
「断定は早い」俺はポート台帳の余白に敷居を鉛筆で引く。「検印の手前に敷居を一つ。通過時、契約/許し/同行のみ反応。資格は無視」
「ポートに敷居?」検問官は目を細め、肩をすくめる。「今夜は破片が減るなら、こちらも助かる」
俺たちは Token #3 を小分けし、ポート側と分散支払いで合意した。
[Token Minting]時間1tick(俺)/体温1tick/ラ音1点/息一片/触覚二指 → 通行トークン ■
検問官の印。「敷居 設置/解除 権限 6h」
敷居が敷かれる。薄い光の段差――足が触れると、見えない頷き程度の抵抗。
一人目が通る瞬間、ラベルプレスが一拍ためらう。資格ラベルの重ね刷りが失敗し、代わりに入場が正式検印。
二人、三人――データが溜まる。
[リアルタイム]重ね刷り率 41%→18%/「資格」ラベル搬出 −32%/EI 71→68(−3)
「泡、最初のガス抜き成功」マリアンが俺の肩をコツ、と叩く。「でも夜にもう一度膨らむ。黒真珠サークルは二段上げ」
「二波目は浅い」ネレイアが海を見て笑う。「備えは、するけど」
その時、視界の端で月光が低い方へすべる。
アンナが残した漆の箱――ポート壁の影で文様が淡く滲む。
「未開封条項」ルシが箱の前へ。「部分開封テスト、今?」
「プロトコルから」俺は短く。「証人三、セーフワード一、拒否権 最上段。開き角 2度」
「セーフワード?」ロウェル。
「『停泊』。停止の禁句じゃなく、一時の錨」ルシが頷く。
半円に立つ。ジョラが盾で風路を塞ぐ。
俺はコーデックスを箱の脇に置き、ルシの喉を見る。「声を守れ。無理なら即停泊」
「分かってる」ルシが息を整え、極低音で音を置く。ラ――
舌先の空隙がくすぐる。ラ—が擦れていた同じ場所。今回は音がある。
「開封」俺は囁く。
2度開いた瞬間、月光が外へこぼれた。昼のポートなのに、箱の中の夜が溢れる。
空気が冷たく沈み、コーデックスが警告を鳴らす。
[警報]時間ループ残香(かぐや系)/発声減衰(術者)開始/EI 変動なし/反射率 +1
ルシの喉が一瞬震え、「――ハ――」と半音落ちた。
「停泊」俺が告げる。箱は即座に閉。月光は鞘へ戻るみたいに収まる。
ルシは手の甲で喉を押さえ、薄く笑う。「平気。半音は価格」
ログを確認。
[記録]箱内部キーワード――招待/約束/沈黙/ラ— 有意反応
「ラ—、合ってる」ネレイアが囁く。「無音合唱の最初の音節。今夜の舞踏会で合わせ直す」
その間も、ポートの敷居は黙々と働いた。資格の流れが弱まり、入場/同行が標準へ。
偽装プレスは鏡膜を上塗りするタイミングを外し、数枚はその場で不良として廃棄。
検問官が汗を拭う。「鏡膜の供給元さえ切れれば、今夜は……」
「切れない」マリアンが腕時計を見て言う。「彼らは夜にもう一度値を上げ、価格を跳ねさせてから、鏡法廷へ人を送る。資格尋問で」
真夜中前、再びラフ・マーケット。
一波の消えた跡へ、二つ目の泡が盛り上がる。
黒真珠サークルの行商人が月光瓶を開け、ラベルに当て、鏡膜を薄く擦る。資格が再びきらめき、群衆は足元を意識する。
俺はポートから持ち帰った図面を灯台の壁に貼る。
Caravanserai → 幻燈区画 → 検印 → 搬出
「この経路を公開する」
ロウェルが声を整える。「偽造ラベルは『敷居の後』で無効。敷居の前では、許し/入場/同行のみ両替してください」
ジョラが敷居を二段増設。盾がトク/トクと鳴る。
市場の中央で、鏡片奏者が弦を張る。薄いガラスが擦れ、音が立つ。人々の肩が硬直。
「尋問の前奏」ルシが目を閉じる。「音は私が取る」
昼と同じく、呼吸を合わせる。四、二。
ルシのラ—が立ち上がると、鏡の演奏が奇妙に調和した。
尋問を呼ぶ音型ではなく、招待の第一音節へ和声が変わる。
資格ラベルを胸に当てた手が、同行を指先で軽く弾く。
市場の価格表が入れ替わる。
[リアルタイム]「資格」取引量 −51%/「入場/同行」+43%/EI 68→66(−2)
「二つ目の泡、沈静」ロウェルが息を吐く。
「今はね」マリアンが付け足す。「次は場所を替える。市場から法廷へ。鏡を立て、自問自答させる」
彼女は小さな封筒を俺に渡す。「鏡法廷の召喚状。あなたも『敷居』の使用者として証言を」
封筒の文字は鈍く光る。Null/Curator/Pallor――三勢力の印が赤く重なる。
「全員招集?」ジョラが眉を上げる。
「今夜」マリアンが短く笑う。「階段広場で」
アンナの姿は見えない。代わりに、Seat#0の標識が舞踏会場の入口へ移されていた。
裏板のラベルスロットは空。0|0|0のパンチが月光の下で細く震える。
舌先を湿らす。ラ—はまだ少し空だ。だが、さっき二度開いた夜が、空白の形を教えた。
「整理」俺は言う。「ポートの敷居 維持――06:00まで。ラベル交換所は敷居の前に限定。鏡法廷へは契約/招待/証言だけ持っていく」
「『資格』は?」
「法廷では尋問じゃなく仲裁へ翻訳」俺はSeat標識をコツと叩く。「そしてSeat#0 実物確認――競売じゃなく規則で」
ネレイアが寄り添い、囁く。「合唱が始まったら、ラ—は私が先に」
「次は俺が受ける」ロウェルが笑う。「恐れは他人のもの。責任は俺の」
ルシは喉をトンと叩く。「停泊は準備済み」
月光が一瞬翳り、上段の鐘が一度鳴る。
市場は解け、階段広場から光の驟雨の用意音。
俺たちは夜の文を、次の節へ送った。
――ブリーダーカット:Port税 図面(簡易)
入口(足の証言) → 幻燈区画(非認可鏡膜に注意) → 検印(関税適用) → 搬出(敷居の前での交換のみ有効)
メモ:敷居は「契約/許し/同行」のみ感知、「資格/永遠」は無視。
Tips:ポート管理と分散支払いで敷居権限を取得(最大6h、Token 1枚=5要素を分割)。
[Mini HUD]
EI 66/PI 06→05/反射率 19%(+1)
関税:契約 3/許し 1/同行 2/資格 加算 維持(法廷 予告)
Plant:鏡法廷 召喚状/ポート敷居 権限タイマー 05:12/箱(未開封:2度 反応ログ)/Seat#0
スロット:■ ■ ■ ■ ■ ▢(ゲスト)
[Mini HUD]
EI 66 / PI 06→05 / 反射率 19%(+1)
関税:契約 3/許し 1/同行 2/資格 加算 維持(法廷 予告)
Plant:鏡の法廷 出頭状/ポート敷居 権限タイマー 05:12/箱(未開封・2度 反応ログ)/座席0
スロット:■ ■ ■ ■ ■ □(ゲスト)




