相手がいない人を紹介してくれるのがお見合いでは?
光り輝く聖堂で、神官が淡々と紹介する。
「侯爵家の嫡男レオナルト様。ご結婚はされていますが、側室として――」
「……次」
ミアは笑顔を張り付けたまま声を震わせた。
「王弟殿下。すでにご婚約中ですが、愛人としてなら――」
「次」
淡々と進む紹介に、ミアの心はどんどん冷え切っていった。
なんで既婚者ばっかり!?
前世日本のOL時代、合コンで既婚者が混じっていたら「帰れ!」と叫んだものだ。
転生してまで愛人にされるつもりはない。
「……お見合いって、相手が“空いてる人”を紹介するんじゃないんですか?」
「ですが皆さま、聖女さまを望んでおられます。本妻は嫌だそうですが」
「……お断りします」
そう言い切った瞬間、会場の空気が凍った。
沈黙を破ったのは、会場の端に立っていた青年だった。
ぼさぼさの栗色の髪、飾り気のない服。
辺境伯家の三男、カイル。
「じゃあ俺にする?」
「え?」
冗談めかして肩をすくめる。
「俺、独身。婚約者もいない。辺境に行けば家族の干渉も薄いし、自由だよ」
ふざけ半分の声に、ミアは吹き出した。
――まともな人、いた。
後日、ミアはカイルの屋敷へ招かれる。
辺境の屋敷は質素で、彼は家の権力争いから外れていた。
「兄貴たちは後継ぎ争いで忙しい。俺は好きに畑耕してるほうが性に合う」
「……畑?」
「うん。野菜うまく育てるの、楽しいよ」
聖女なのに「愛人枠」に押し込められそうになった自分。
けれどカイルは、聖女でも権力でもなく、「人」として接してくれる。
ミアの心はゆっくりと溶かされていった。
しかし、神殿と貴族たちは諦めなかった。
「聖女さまが辺境の三男と? 王子の側室にと考えていたのに不敬な!」
「やはり王家の妾に――」
そう迫られたとき、ミアは聖女の力を解き放った。
神殿の大広間に、聖なる光が降り注ぐ。
「私は聖女として、この国の人々を救うためにここにいます。 権力の飾りでも、愛人でもありません!」
眩しい光に、婚約者持ちや既婚者たちは顔をゆがめる。
ミアは神殿から去った。
すべてを断ち切ったミアは、正式に辺境へ赴任することとなった。
そこには、のんびり畑を耕すカイルがいる。
「おかえり、ミア」
「ただいま……って言うの、いいですね」
日々、彼と一緒に畑を耕し、村人を癒やし、静かな時間を過ごす。
彼は決して「聖女」としての彼女を特別扱いしない。
ただ「ミア」という一人の女性として隣にいてくれる。
やがて、収穫祭の夜。
村の篝火を見上げながら、カイルは照れくさそうに言った。
「俺、君を“愛人”なんかじゃなくて――妻にしたい」
「……っ」
ミアの瞳に涙がにじむ。
前世でも今世でも、ようやく「相手がいない人」に選ばれた。
それがこんなにも幸せだなんて。
数年後。
辺境の畑には豊かな作物が実り、村は笑顔であふれていた。
聖女として、ミアは国を癒し続ける。
けれど彼女にとって何より大切なのは、隣で笑う一人の夫――カイルだった。
「ねえカイル。やっぱりお見合いって、相手が“空いてる人”を紹介するものですよね」
「当たり前だろ。俺は最初から独身だったからな」
二人は笑い合い、手を取り合う。
こうして聖女ミアは、誰かの「妾」ではなく、一人の妻として幸せを手に入れたのだった。
愛人欲しくて責任取らないやつはまじ地雷




