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相手がいない人を紹介してくれるのがお見合いでは?

作者: すじお
掲載日:2025/10/22

 光り輝く聖堂で、神官が淡々と紹介する。



「侯爵家の嫡男レオナルト様。ご結婚はされていますが、側室として――」

「……次」


 ミアは笑顔を張り付けたまま声を震わせた。


「王弟殿下。すでにご婚約中ですが、愛人としてなら――」

「次」


 淡々と進む紹介に、ミアの心はどんどん冷え切っていった。


 なんで既婚者ばっかり!?

 前世日本のOL時代、合コンで既婚者が混じっていたら「帰れ!」と叫んだものだ。

 転生してまで愛人にされるつもりはない。


「……お見合いって、相手が“空いてる人”を紹介するんじゃないんですか?」

「ですが皆さま、聖女さまを望んでおられます。本妻は嫌だそうですが」

「……お断りします」


 そう言い切った瞬間、会場の空気が凍った。


 

 沈黙を破ったのは、会場の端に立っていた青年だった。

 ぼさぼさの栗色の髪、飾り気のない服。

 辺境伯家の三男、カイル。


「じゃあ俺にする?」

「え?」


 冗談めかして肩をすくめる。

「俺、独身。婚約者もいない。辺境に行けば家族の干渉も薄いし、自由だよ」


 ふざけ半分の声に、ミアは吹き出した。

 ――まともな人、いた。


 

 後日、ミアはカイルの屋敷へ招かれる。

 辺境の屋敷は質素で、彼は家の権力争いから外れていた。


「兄貴たちは後継ぎ争いで忙しい。俺は好きに畑耕してるほうが性に合う」

「……畑?」

「うん。野菜うまく育てるの、楽しいよ」


 聖女なのに「愛人枠」に押し込められそうになった自分。

 けれどカイルは、聖女でも権力でもなく、「人」として接してくれる。

 ミアの心はゆっくりと溶かされていった。


 

 しかし、神殿と貴族たちは諦めなかった。


「聖女さまが辺境の三男と? 王子の側室にと考えていたのに不敬な!」

「やはり王家の妾に――」


 そう迫られたとき、ミアは聖女の力を解き放った。

 神殿の大広間に、聖なる光が降り注ぐ。


「私は聖女として、この国の人々を救うためにここにいます。 権力の飾りでも、愛人でもありません!」


 眩しい光に、婚約者持ちや既婚者たちは顔をゆがめる。

 ミアは神殿から去った。



 

 すべてを断ち切ったミアは、正式に辺境へ赴任することとなった。

 そこには、のんびり畑を耕すカイルがいる。


「おかえり、ミア」

「ただいま……って言うの、いいですね」


 日々、彼と一緒に畑を耕し、村人を癒やし、静かな時間を過ごす。

 彼は決して「聖女」としての彼女を特別扱いしない。

 ただ「ミア」という一人の女性として隣にいてくれる。


 やがて、収穫祭の夜。

 村の篝火を見上げながら、カイルは照れくさそうに言った。


「俺、君を“愛人”なんかじゃなくて――妻にしたい」

「……っ」


 ミアの瞳に涙がにじむ。

 前世でも今世でも、ようやく「相手がいない人」に選ばれた。

 それがこんなにも幸せだなんて。



 

 数年後。

 辺境の畑には豊かな作物が実り、村は笑顔であふれていた。

 聖女として、ミアは国を癒し続ける。

 けれど彼女にとって何より大切なのは、隣で笑う一人の夫――カイルだった。



「ねえカイル。やっぱりお見合いって、相手が“空いてる人”を紹介するものですよね」

「当たり前だろ。俺は最初から独身だったからな」


 二人は笑い合い、手を取り合う。

 こうして聖女ミアは、誰かの「妾」ではなく、一人の妻として幸せを手に入れたのだった。


愛人欲しくて責任取らないやつはまじ地雷

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― 新着の感想 ―
主人公が自分の望みを知り、それを叶えようとしない素晴らしい物語。彼女は自分の価値を知っている。聖人のキャラクターが本当に好きだった。
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