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おじさん異世界に行く!  作者: カネキ
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第 九 話 冒険者ギルド!

 広大な死の森を抜けた東に、ゴンゾーラの街がある。

 死の森に生息する強い魔物をもとめ、多くの冒険者が集まる街。

 その為、田舎の街にしては、ここの冒険者ギルドは王都のギルドに比べれば小さいが、中々の規模であるらしい。

 クレアがそう言ってたから間違いないだろう。


 街に到着した俺達一行。

 その足でクレアに案内され、クレアが宿泊してるって宿に行き俺達の部屋も確保しに行く。

「す、凄いね……」

 Sランクの冒険者ともなれば、セキュリティもしっかりしてそうな、それなりの宿。

 一泊いくらくらいなのだろうか?

 不安な気持ちになったが、クレアが平然としているので俺も平然を装う事にする。

 この宿で荷物を預かってもらってから、ここの冒険者ギルドに行くのだ。

 クレアが冒険者ギルドに用事あると言うから、それなら俺もって言ったんだよね。

 だって俺も冒険者ギルドに行ってみたかったからな。



 冒険者ギルドの中に入ると、冒険者であろう屈強な男や可愛い魔法使いとか色んなのがいて中々にぎわってるようだ。

 俺とオクルが変な目で見られたが、クレアが一緒だからか絡まれる事もなく建物の中を進む。


「アキラ、そしたら私、ちょっと用事を済ましてくるから、そこのバーで飲んでて」

 そう言うと、クレアが俺にお小遣いをくれた。

 ギルド内にバーが併設されているみたいで、結構飲んでる人が多い。

「ありがと、クレア。

 オクルと大人しく待ってるから、ゆっくり用事済ませてきなよ」

「うん」

 クレアは俺に笑顔で答えると奥の受付カウンターの方へと歩いて行った。


「そんじゃ、オクル、俺達なにか飲んで待ってようぜ」

『は、はい。 アキラ様』

 キョロキョロして。

 堂々としてればいいんだよ、俺達は別に悪い事してる訳じゃないんだから。


「ん?」 

 受付でなにか話していたクレアが戻ってきた。

 なんでも別室でギルドマスターと話をするんだと。

 俺も一緒にとクレアに言われたが、面倒くさいし俺はギルドマスターとやらに用事が無いので、ここでオクルと待っていると断った。

 その際、「大丈夫?」「イジメられたらちゃんと言うのよ」「怖かったら、直ぐに呼ぶのよ」「心配だわ」そう何度も言われた。

 そんなに、俺って信用無いのか少々不安になったが、これはクレアの優しさだと思う事にしよう。


「結構にぎわってるな」

『アキラ様、怖そうな人間が多くて凄く怖いんですけど』

「大丈夫だって、心配しすぎだよ」

 俺よりデカいオークの癖にビビりやがって、俺のように、でーーんと堂々といれば良いんだよ。


 見てみろ。

 皆、俺の醸し出す威厳に恐れをなしてか、遠巻きに見てるだけで話しかけてもこないじゃないか。

 まあ、先程のクレアと俺との会話を聞いて、クレアに睨まれたら嫌だとかで、触らぬ神に祟りなし状態ってのが正解かもしれんな。

 だが俺は俺の都合の良いように解釈させてもらう。


「女の子は、みんな可愛いよな?

 お前は、どの女の子が好みだ? ん?」

 クレアが傍にいたら、じっくりと観察できないであろう女の子達を眺める俺。

 冒険者も受付も可愛い女の子が多いじゃないの!

 うひょぉ。

『人間でしょ? やっぱり、俺はオークの女が良いですね』

「……え」

 あれっ?

 おかしい。


「だって、オークって人間の女を凌辱するのが仕事みたいな感じじゃないのか?」

『どんな、変態ですか?』

「違うのか? そして俺が変態な妄想する奴みたいに言うんじゃない。

 あのね、俺も、聞いた事があっただけなんだから…… ハハハ」

 そう言ったが、向こうの席の女達の視線が…… 何か俺をチラチラみてコソコソと話をしてるし。

 絶対に今の会話聞かれて、俺の事を誤解したんだ!

 俺が女を凌辱したいように思ってるみたいに思われたんだろうか?

 ……いや、そんな訳ないよな。

 俺は、こんなにもジェントルマンなんですもの!


 一人で悩んで一人で解決したセルフの男、それが俺だ。


「おいおいおいーー! なんで、ギルドに魔物が居るんだ?!」

 悩みを自己解決した優秀な俺の耳に、デカいガサツな声が聞こえた。

 俺のオクルの事を言ってるんだよな?

 振り返ると、ガラの悪そうな男達が俺達の近くに立ってこっちを見ていた。


「魔物ってなんの事だ?」

 少々イラつきながらも俺が前に出る。



「わぁ、あいつ等、今来たから知らないんだ」

「死んだな」

「クレアの連れに手を出す気かよ……」

「かわいそうに」

 ヒソヒソとアキラを遠巻きに見ている冒険者達がざわついた。 


 

「魔物って、そこのオーク以外いないだろ? クソジジィ

 オークを売りにきたのか? 新鮮だろうな、生きてるから!」

 こ、この野郎……

「あ、あのな、コイツにはオクルって立派な名前があるし、俺の仲間だ」


『アキラ様、あの人間なんて言ってるんですか?』

「オクル、気にすんな。 お前を見て驚いているだけだからな」

 

「仲間って、そのブヒブヒ言ってるオークがが?!」

 そう言って、男は笑った。

 その取り巻きの連中もだ。

 そうですか。


「何がおかしい!

 お前に迷惑かけてねぇだろうが! クソガキが調子に乗るんじぇねぇ!」

 頭に来たので、軽く注意してやった。

 反省しろ!


「……なんだと、このクソジジイ」

「?」

 なんだ、怒ったのか?

 男と取り巻きの連中が俺を凄い睨んでいる。

 たかが、これくらいの事で……


「おいおい、落ち着けよ。

 お前達も冒険者なんだろ? そんな短慮でどうする。

 兎に角、落ち着いて、そこに腰かけろ、何か飲むか?」

 冒険者ギルドの一階は、簡単な飲食が出来るバーが併設されている。

 俺とオクルはクレアにお小遣いをもらって、待ってる間、飲んでいるからな。


「チッ、クソジジイが……」

 男が俺に奢られるとでも思ったのか、そこのテーブル席に着席を……

「おらっ!」

 俺は俺から視線を外し油断した冒険者の頭に椅子を叩きつけた!


「これは、オクルを侮辱した分だ!」


「クッ、このクソジジイ、ふざけやがっ…… !」


ドゴッ!


 流石、冒険者タフだな。

 態勢を立て直そうとした男の腹を思い切り蹴った。

 まだまだぁ!

「おらぁーー! これは、俺の分だ!」

 俺は、椅子で男を滅多打ちにした。

 椅子が壊れたので別の椅子で更に打つ。

 それも壊れたので、男の剣を取り上げ、ソレで打つ!

 斬ったら死んじゃうから、刃のついてないトコでバシバシ叩く!

 餅つきの要領だ!

 日本人に生まれて良かった。

 木の椅子と違って、コイツは鉄だから頑丈だ。

「解ったか、いじめは、最低だと!

 お前みたいなのは、言葉で言っても理解しないからな、体で覚えさせる!

 言葉で言ったとこで、口先で謝るだけだからな、お前のような輩は。

 だから、俺が疲れるのにこうやって体に覚えさせてやってんだ、感謝しろ!

 そして、俺に謝れ!

 誰がジジイだ? 俺は、ピチピチの43歳!!

 オクルの分の仕返しは終わったがな、俺の分は、まだまだ続くぜぇ、死ぬなよ、この野郎!」

 教育しつつ仕返しもする。

 これぞ、一挙両得というものだ。


「ふう、いい汗かいた」

 手がつかれたし、やめた。

 男の剣を、ポイっと捨てる。


『アキラ様、どうしましょう?』

「ん? なにが?」

 一仕事終えた俺にオクルが話しかけてきた。

「そうそう、オクルの仕返しちゃんとしてやったからな、喜べ」

『その男の仲間がアキラ様に向かって行こうとしたので、止めようとしたんですが……』

 みると、俺が餅つきした男の仲間が倒れていた。

 全く……

「コラッ! 暴力はダメだぞ。

 まあ今回は、俺を助ける為だからな、良いだろう」

『アキラ様は、優しいブヒ』

「よせよ、強さの中にも優しさがあるって? 照れるじゃないか」

『そこまで、言ってないブヒ』



「クソジジイ…… 殺す!」


「お、お前……」

 流石、冒険者。

 普段から鍛えてる奴は違うな。

 あんだけ打ち込んだのに、立ち上がりやがった。


「フフフ、負けたよ。

 ここは、お互い、痛み分けということで」

 喧嘩の後は、ノーサイド。

 俺は笑顔で、手を差しだ

「一方的にお前が殴って来たんだろうが!」

「……」


 男の癖に細かい事をグジグジと……


「俺は、Cランク冒険者のザコウ。

 そこのオークを嗾けるなら好きにすればいい。

 そこで寝ているE、Dランクの奴等なら勝てたかも知れんが、俺様はCランク! オーク如きに遅れは、うぎゃあああああああ!!」

「うるさいわね。

 アキラ、私がいない間にどうなってんの?」

「クレア」

 用事が終わったらしくクレアが戻ってきた。

 そして、男の腕を捩じりあげている。

 可哀想に、その男がケガしたらどうするんだ?

「おい、もう殺すとか物騒な事は言わないよな?」

「い、いわない。 そ、そのオーク、いや、オクルの事も受け入れる」

 あらやだ。

 素直じゃないのさ。

「よし!

 はい、クレア、そいつを離してやりなさい。

 俺は、暴力が嫌いだ」

 クレアは、俺の言葉に従い、男から手を離してくれた。

 男は床に膝をつき捩じられた腕に手をあてていた。

 かわいそうにな。


「大丈夫か?

 ああ、こんなにケガをして……」

 俺は男に優しく語り掛けた。



( お前が言うか? )

 この部屋にいた全員がそう思った。

 


「クレア、用事が済んだか?

 終わったなら、オクルの服を買いに行きたいのだが」

「ゴメン、この街の領主のとこに挨拶に行かなきゃなんなくなっちゃったの」

 Sランクともなると、冒険者ギルドや地元有力者とのしがらみとかあるんだろう。

 クレアはどうって事ないみたいな事を言ってたが、俺なら御免だね。


「そうか、そんなら、俺とオクルで街を散策しながら買いにいくよ」

「大丈夫なの? アキラに何かあったら、私……」

「大丈夫! ほら、オクルも一緒だし!

 オクル、俺達二人で大丈夫だよな」

『二人で、お出かけブヒ』

「この命に代えても俺を守るから、クレアは心配しないで行ってきてください。 だってさ」

 俺は、クレアにオクルの言葉を通訳してあげた。

『そんな事言ってないブヒ』

 うるさい、黙れ。

「そう? オクル、アキラが怪我したら、許さないわよ」

『アキラ様、奥様は、なんと?』

「俺の護衛を頼むって!」

『任せてくださいブヒ!』

「頼んだぞ、オクル。

 クレア、オクルが任せてくれってさ。

 それと、俺からの頼みなんだが、オクルの服を買うのに、お小遣い頂戴」

「え? さっき渡したので、足りない?」

「いや、ここの人達に迷惑かけたら、酒の一つでも奢ろうかと思って……」

「……仕方ないわね」

 クレアが追加でお小遣いをくれた。

 やったね。

「流石、クレア! 助かるよ、

 お金は稼いだら直ぐに返すからな!」

 俺は、最初にもらった金貨の入った袋をもって、バーカウンターの所へ走る。


「みんな! さっきは、騒ぎを起こしてすまん!

 俺の名前は、黒田 明!

 それと、そこのオークはオクルって名前で俺達の仲間だから、仲良くしてやってくれ。

 挨拶と謝罪をこめて、皆に一杯づつだが、酒を奢るから、飲んでって!」 


「マジか!」

「今日来てラッキーだぜ!」

「魔物をテイムしてるだけだろ、気にすんな!」

「クレアの仲間なら、俺達の仲間だぜ!」

「お前は不細工な癖に、クレアに馴れ馴れしい!」

「なんで、お前なんかが、あのクレアと!」

「クレア、綺麗だ!」


 冒険者ギルドのバーに冒険者達の歓声が上がる。

 俺に対する声がネガティブなものだったような気がしないでもないが、喜んでいるみたいで良かった!


「アキラ、私の夫ならば、みみっちい真似をするな!

 今日は、私の奢りだ!

 皆、好きなだけ飲んで行ってくれ!」

 クレアが大声で、男前発言をすると、部屋の中の熱気が更に上がった。

 俺の奥さんは、カッコいいぜ!


 って事で、最初にもらった金貨の袋はそのまま頂いて追加のお金もそのまま借りておこう。


 

「ちょっと、オクル」

 クレアは、オクルを呼び出し、部屋の隅へ……


『なんだブヒ?』

「ブヒブヒ言ってるわね。

 いい、アキラが浮気しようとしたら、ちゃんと報告するのよ」

『ちょっと、人間の言葉は解らないブヒ…… ヒィィィ!』

 クレアが、死んだ魚のような目でオクルを見ていた。

「いいから。

 いい、アキラが浮気しようとしたら、ちゃんと報告するの、解ったの?」

『ブブブブブブブブブブブブヒブヒブヒブヒ」

 恐怖でオクルはガタガタと震えた。

 だが、答えないと殺されるとオクルは本能で強く理解した。


『ブ、ブヒィ』

 頭を下げるオクル。

「ちゃんと、アキラを監視するのよ」

「カンシ、ブヒ、アキラ、ブヒ、ホウコク、ブヒ」

「ちゃんと言えたじゃない。

 嘘ついたら…… ね」

 そう言い残してクレアは、冒険者ギルドを後にした。


『こ、怖いブヒ! 奥様、何時もと違ったブヒ!』

 恐怖の余韻で震えていたオクルの元へと、あの男がやってくる……



「おう! オクル、お前の服を買いに行くぞ! 着いて来い!」

 俺は颯爽と、オクルの元へやって来た。

 ん?

「なに震えてんだ、お前?」

 オクルの奴が、なんでか知らんか少し震えていた。

『な、何でもないブヒ』

「半裸でいるからだぞ、バカだな、風邪ひくぞ!」

 優しさの塊である俺は、半裸でウロウロしてるオクルを連れだし、冒険者ギルドの外へ出た。


「さあて、っと!」


 クレアもいないし、異世界交流と洒落こみますか!

街に到着しました。

ロクな事を考えないアキラはクレアが不在を良い事に邪な考えを……

次回、どうなってしまうのか?!

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