表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おじさん異世界に行く!  作者: カネキ
6/59

第 六 話 夫婦円満

ダダダダダ……


「はぁ! はぁ! はぁ!」

 俺は、藪をかき分け、森の中を走った。

 心臓が破れるかと思うくらいに走った。


シュッタタタ……


 足音!


 凄い速さで近づいてる!

 振り返ってる時間があるなら進め! 俺!

 生きたいなら、足をあげろ! 腕を振れ! 前に進めぇ!


「無理だああああ」


 死を覚悟した俺。


「あああぁ! 誰かぁああああ…… あっ!」


 どうやら俺は、幸運の持ち主らしい。

 目の前、進行方向にビキニアーマーのデカい女!

 クレアよりデカいんじゃないの?!

 絶対強い奴!



ズザザァァァーーー!!


「お願いです! 助けてください!

 頭のオカシイ女に追われてるんです!

 どうか、どうかお助けください!」

 ビキニアーマーの女の前に滑り込むと、即座に縋りつき懇願した。

 デカい剣をもっているし、腹筋割れてるし、ハイレグだからエロ、いや、強そうだから、後ろからくる化物を何とかしてください!


「な、なんだ、お前は?!

 兎に角、その手を離せ! って、どさくさに何処を触って」

 えぇーーい、うっとおしい!

 そんなくだりなど、今は不要なんだよ!  


「おい、ビキニアーマー!

 お前は、困ってる人を無下にするのか!

 しないよな!

 こんなにも善良そうな俺が、殺されそうなんだよ!」

「なんだ? 突然現れて、怪しい奴め!」

「俺の何処をどう見たら、怪しいと?!

 可愛い顔してたら、何でも許されると思うなよ!」

「だ、誰が、可憐で可愛いって?」

 は?

「誰も可憐だなんて言ってねぇぇぇぇぇえええ!

 時間がないんだよ!

 ぼやぼやしてたら直ぐに来るだろ!

 って、きたぁあああああああああああ!!!」

 振り返ると、奴が直ぐそこまで来てた。

 俺は、ビキニアーマーの後ろに隠れさせてもらう!


「お、お前!」

「うるさい黙れ! さあ、行け!」

「行けって?」

 あああ、ビキニアーマーが俺の言う事を聞いてくれない!



チラッ


 恐る恐るビキニアーマーの影から覗くと…… クレアがゆっくりと歩いて近づいてくるのが見えた。

 

「……うわぁ。

 めっちゃ怒ってる」

 黒いオーラが出てるみたい。

 気を失いそうだ。 失禁待ったなしだぜ!


「お前は、何者だ! さっきから意味不明のことを。

 兎に角、私から離れろ!」

 バカ!

 ビキニアーマー、こっち見なくていいから!

「ビキニアーマー! あの悪魔をサクッと殺っちゃって!」

 ったく!

 これだから、指示待ち人間は。

 いいケツしやがって。

 うん。

 って! なんで、Tバックなんだ?!


「さっきから馴れ馴れしいし、偉そうだな、お前!

 本当に何だ、お前は! いい加減にしないと……  ?!」


「……」

 ……ほう、引き締まりつつも。

 褐色の肌も悪くない。

 デカいし、いいね。


「お、お前?! どこ見ている!」

 ん?

 うるさいな。

「お尻だよ」

 この女はうるさくてかなわん。

 もう少し慎みというものを知ってもらいたいものだ。


 うん、お尻、いいね!


「完全に変態じゃねぇか!」


「なっ! ビキニアーマー! お前こそ、なんだこの防具? 何処をどう守ってんだよ?

 露出狂か?

 いや、露出狂だよな! ごめんね、聞くまでもなかったね!

 お前に比べりゃ、クレアのほうがまだマシな服装で、常識あるよ。

 それに、優しいし。

 大体、お前みたいにキャンキャン言わねぇからな! バカが!」

 失礼なビキニアーマーに物申してやった。


「な、なんで、初対面のお前に、そんな風に言われなければ、ならないんだ」

 おっ? なんだ、わなわな震えて、悔しいのか?

 ん?

 どうなんだ?

 全く。


「ビキニアーマー! 勘違いをするな!

 怒るのは、筋違いだぞ。

 お前が、俺を助けてくれないで喧嘩腰で来るから、俺はそれに応戦したに過ぎない。

 お前には、優しさというものが感じられん。

 ああ、その点、クレアは違った!

 初対面なのに、困ってる俺を助けてくれたんだぞ!

 凄く綺麗なのに、俺なんかに手を差し伸べてくれた!

 変態露出狂のお前と大違いだぜ」

「お前、よほど、死にたい、らしいな」

 ビキニアーマーが青筋立てて剣に手をかけた。


「やれやれ」

 とんだ分からず屋だ。


「まあ、怒るな。

 お前の言いたい事くらい、ちゃんと理解している。

 私のような愚か者と違って、そのクレアさんは完璧な聖人君子なの?

 そう、問いたいんだろ?」

「誰もそんな事言ってな」

「当然、そりゃぁ、クレアだって完璧じゃないさ。

 欠点くらいあるよ。

 フフフ、ちょっと束縛がキツイって事。

 だけどな、それだって、俺を凄く想ってくれているから、出る行動なんだぞ!

 可愛いもんじゃないか。

 ビキニアーマー! 精々クレアと比べて、ダメな自分を反省するんだな!

 そして、おっぱい触らせろ」

「なんの話?!

 しかも最後にサラッと変な事を言いやがって!」

 

「……」

 おさわりは、無理か。


「お前、やっぱ変態じゃねぇか! いい年して! 恥ずかしくないのか!」

 なっ!

 失礼な!

「俺は、永遠の17歳だぁ!」

「やっぱ、頭おかしい!」

 こ、このビキニアーマー……

「何だとぉ! ソレが、年長者に対しての態度か!」

「永遠の17歳設定を秒で覆すな、じじぃ!」

 くっ! この野郎……



「そこまでよ!」



「「ああん」」


 俺とビキニアーマーが同時に言って、同時に声のした方を見た。


「あわわ、あわわ……」

 そうだ、忘れてた。

 殺されるところだったんだ。

 この、クレアに!


「なんだぁ?!

 この変態クソジジィの仲間か!」

「だれが、変態クソジジィだ! 俺はまだピチピチの43歳だ!」



「アキラ!」

「ヒィィ! ごめんなさい、クレア!」

 ビキニアーマーと言い争いをしようとしたが、クレアに名前を呼ばれた俺は、即座に土下座した。

 いや、していた。

 いつの間に?

 条件反射的な物なのか?


「アキラ…… ごめんね。

 私、束縛がキツかったよね。

 でも、アキラが、俺を想ってくれてるからだ! って言ってくれて嬉しかったよ」

 ホロリと、クレアの宝石のような瞳から真珠のような涙が……

 泣かないで!

 ああ、俺は、バカだ!

「違う!

 クレアが、謝る必要なんて一つもないんだよ!

 悪いのは俺さ!

 見た目が良いだけの俺だから、モテモテの俺だから、クレアが嫉妬したのは当然の事だよ!」


「見た目が良いだけの俺?」

 ビキニアーマーは、同じ言語を話しているハズなのに、この男が何を言っているのか解らなかった。


「うん!

 アキラがカッコよすぎるから、私、心配で!」


「え? うん、カッコよすぎるから?」

 ビキニアーマーは、同じ言語を話しているハズなのに、この女も何を言っているのか解らなかった。


「クレア! 愛してるよ!」

「アキラ! 私も!」

 多少の行き違いがあったが…… やはり、愛の力は偉大だと言う事だ。

 俺とクレアは、熱い抱擁をした。

 クレアの温もりが、凝り固まっていた俺のわだかまりを溶かしてくれていくのを感じた。

 やっぱり俺は、クレアを愛してる。

 離さないよ、クレア。



「……何コレ?」

 ビキニアーマーは、何を観させられているのだろうと思った。



「ところで、アキラ、こちらは?」

 仲直りしたクレアが聞いてきた。

 ようし、愛するクレアの聞きたい事なら、何でも答えちゃうよ!

「ああ、こいつは……

 ごめん、あんた、誰?」

 誰だ、コイツ。


「お、お前…… 多分、こっちの方が、ソレを言いたいぞ。

 お前と話をしていると、頭がおかしくなりそうだよ。

 ……私の名前は、ソニア。

 冒険者で、大剣のソニアと呼ばれている。

 死の森で依頼の魔獣討伐の下見に来てみたら、変なのに絡まれて凄く気分が悪い。

 お前な初対面の人間に対して、いかに失礼だったの自覚してるか?

 いい年して」

 ん?

 失礼な事?

 まぁ、人の受け取り方は様々だからな。

 些細な言葉でも受け取り方次第で人は傷つくからな。

 悪い事をした。

 だが、それを蒸し返してもビキニアーマーは思い出して気分が悪かろう。

 よって、無視。

 聞こえなかった事に。

 しかし、コイツも冒険者か。

 どうでもいい事だが、二つ名なのかソレを自分で言うのはどうなんだろう。


「私の旦那様、主人、夫が貴女に対して失礼な言動があったのなら、嫁、妻、女房である私が代わって謝罪いたします」

 なんと!

 クレアが、俺に代わって変態ビキニアーマーに頭を下げているではないか!

 いかん!

 完全無視を決め込むつもりだったが、ちょっと待て!

「俺も、ごめんなさい」

 慌てて俺も頭を下げた。

 クレア、お前だけに謝罪はさせないぜ!

「フフフ」

「ウフフ」

 頭を下げる俺とクレアは、見つめ合い、微笑み合った。


「……何コレ?」

 ビキニアーマーは、何を観させられているのだろうと思った。


「さてと、謝罪も済みましたし、ソニア、先程この私が控えめにアキラの妻だと、それとなく伝えましたが、理解なさってます?」

 クレアがビキニアーマーに毅然とした態度で話始めた。

 う、美しい。

 あまりのカッコよさに思わず見惚れてしまう。


「それとなくって……

 ああ、しつこいくらいに言ってたからな。

 ……それがどうした?」


「宅の主人に、色目を使うんじゃないわよ!」

 クレア?

「……は? えっ? お前は、何を…… どこをどう見て???」

 ビキニアーマーが困っている。

 そりゃクレアにいきなりそんな事言われても困惑するわな。

 しょうがねぇ、助けてやるか。

「クレア、俺に対してソレは、フフ、無理があるんじゃないか?」


「ふう……

 それも、そうですわね」

 クレアが理解してくれたようで良かった。

「ああ…… 解ってくれたみたいで良かった」

 ビキニアーマーもホッとしているようだ。


「アキラのように凛としたカッコいい男に色目を使うなと言う方が間違いですわね」


「ん?

 えっ?

 …………はぁああああああ?!」

 フフフ、ビキニアーマーめ。

 図星ってとこか?

「うむ、そういう事だぞ、クレア!」

 俺に惚れるなと無茶を言ってはイカン。

 

「お前! ただの変態クソジジィじゃねぇか!」

 ソニアがキレた。

 

「また、俺を変態クソジジィと言いやがったな!

 勘違いするな、俺は、まだ、43歳だ!!」

「ソニア!

 もう、強がらなくて良いのよ。

 本当は、ソニアもアキラの事を……」


「ち、違う!

 絶対にお前は勘違いしている! あり得ないから!

 何処をどう見てそんな結論になるんだ?!

 お前、その長い耳で何を聞いていたん……


 あ。


 エルフ…… クレア…… そして、その剣……」


 なんだ?

 怒ってたビキニアーマーが、クレアを見つめて固まっている。


「お、お前…… いや、貴女は、もしや、Sランク冒険者の…… クレア・レッドフィールでは?」


「そうだが?」

「俺は、黒田 明だ!」

 ソニアに軽く睨まれた。

 

「クレア! 私は、貴女に憧れて冒険者になりました!

 こんな場所でお目にかかれるなんて!

 あっ! 私は今、Bランクですが、貴女に憧れてソロで冒険者をやってるんです!」

「へー」

 俺が相槌うってやったのに、睨まれた。


「私に憧れている者が、私の男を取るつもりか?」

「こんなの、あげると言われてもいらないです!

 そんな事より、クレア、一緒に街に戻りませんか?

 お話も聞きたいですし!」

 こんなのって……

 いや、それは、クレアに対しても失礼なんじゃないの? 本当にクレアに憧れてるのか?

「話す事など無い。

 私は、アキラと街に行く。

 そう、アキラと二人きり、ラブラブでだ!

 ……それを、邪魔をしたら殺す」


「クレア、物騒な事を言うな。

 せっかく、お前に憧れてるっていってくれてるのに。

 おい、ビキニアーマー。

 いや、ソニアだっけ?

 俺達ともし街で合ったら、みんなで食事くらい一緒にしよう。

 クレアもそれくらいなら良いよな?」

「ぜ、是非……」

 大女のソニアが借りてきた猫のようになって不安な顔をしているが、どうだ?


「食事くらいなら…… アキラが良いなら、文句ないよ」

「うん、決まりだ!

 みんな仲良く、ソレが一番だ!」

 俺は、持ち前の爽やか笑顔で、この場を丸く収めた。

 大人の余裕を、いかんなく披露した俺。

 そして、フフフ、ホッとした顔をしているな、ソニア。

 この俺に感謝するがよい! 



 フフフ。

 フフフフフフフ。

 アーーーハハハ! 

 ウヒョォーーーーー!

 クレアの病的なまでのヤキモチの件もうやむやに出来たし、素晴らしいお尻のソニアとも知り合えた。

 これぞ、災い転じて福となす!ってもんですよ。

なんやかんやで、上手い事やったアキラ。

まあ、仲が良いことはいいもんだ。

って事で、次回も宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ