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おじさん異世界に行く!  作者: カネキ
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第 四 話 クレア

 異世界から肉体的異文化交流すべく颯爽と転移してきた俺、黒田 明。


 そして今、あるエルフの女性にどうしてもと乞われ行動を共にしている。

 確かに、女性が一人では色々と危険があるのだろうから、不安になるのは仕方がない事だな。

 だから、見るからに誠実であり真面目で強さの中にも優しさもある上にカッコいい俺を頼りたいって思うのは当然な事、自然の摂理であろう。

 騎士道精神の塊のようなこの俺は、か弱い女性の頼みを断る事など出来ようはずもなく、引き受けたって訳だ。

 感謝したまえ。


「……な、なに?」

 顔をあげると、エルフの女性が俺の顔をジッと見ていた。


「アキラ、お前、またよからぬ事を考えているんじゃないだろうな?」

 こ、この野郎、疑いしかない眼差しで俺に……

「ハハハ、ご主人様、僕が良からぬ事を考える訳ないじゃないですか、嫌だなあ、ハハハ」

 お前は、エスパーか!

 俺にだって妄想する自由くらいあるだろう。

「お前は、私の奴隷だという事を自覚しろ。

 そして、森で遭難して情けなく泣いていたお前を拾ってやった慈悲深いこの私に対する感謝を忘れるな」

 キリッとした眼で言われた。

 凛とした姿と生地面積の少ない衣装が女王様の様で素敵だ。

 凄く触りたいけど、この女は、心が狭く直ぐ怒るからな、我慢だ。

 全く、俺って理性の塊のような男だぜ。

「勿論、恩着せがましく言って下さるご主人様には、感謝しております!」

 一応、お礼を言った。

 実際助けられたしな、感謝しかないよ。

 それに一緒にいて目の保養になる。


「うむ。

 私に対する感謝を忘れる出ないぞ。

 ……ところで、アキラ」

「はいッ! 夜の御奉仕の事でしょうか!」

「違う」

 即答か。

 あ。

「……それは、今すぐ奉仕しろとの?」

 フフフ、しょうがねぇな。

 俺は、ズボンに手をかけた。


「うん。

 死にたかったら、その冗談を続けろ」

「は、ははは…… すいません」

 軽い冗談じゃないか。

 ソレをムキになって。 


「アキラ、お前は何者だ。

 死の森を一人で彷徨っていたが…… 魔物が潜む奥地からやって来たようだが?」

 質問しながら、この女、腰に付けた剣を抜きやがった!


「あのな、人にものを尋ねるのに脅すような行動はやめろ。

 やって良い事と悪い事も解んないのか?

 人に刃物を向ける事が良い事かくらい解るよな?」

 ビシッと注意をしてやった。

 全くもって常識と言うものをだな

「お前、まともな事を考えれたのか……」

「なっ?! 当たり前だろう!

 心底驚いた表情をするな、傷つくだろう!」

 全く失礼な女だ。


「ったく。 しょうがねぇな。

 ほら、そこに座って少し話すか」

「あ、ああ」

 座るのに丁度良い平らな岩があったので俺が指差すと、女が素直に座った。

 うん。

「よっこらせっと」

 俺も座る。

 女の横に。

「ち、近くないか?」

「いいから」

 俺はキリっとして、うるさい女を注意した。

 良い匂いがする。


「これからいう事は、あまり人には言って欲しくない事だし、俺がずっと秘密にしていた事なんだが……」

 俺は、シリアスに小さな声で言った。

 女の表情も真剣なものになり、俺の声を聞き逃さまいと身を乗り出してきた。

 ……やっぱ、綺麗だな。

 このまま、キスしたら怒られるだろうか?

 殺されるな。 止めておこう。


「俺は…… この世界と異なる場所からやって来た」

 ゴブリンの集落でベラベラと喋ってたし、別に秘密にして無いけど勿体つけて言ってやった。

 その方が俺がミステリアスで特別な雰囲気をだせるだろうからな。


「お、お前…… そんな事がある訳が」

 当然、疑うわな。 フフフ、バカめ。

「コレを見ろ!」

 俺はポケットからスマホを取り出し女に見せた。

 どうだ、これが証拠だ!


「……何、これ?」


 きょとーーんとされたし。


「ちょっと待て、ほら!」

 俺はスマホの中の画像を次々と見せてやった。

 風景とか犬とか他愛もない日常の俺の近所の写真だが。


「アキラ!」

 女が、俺とスマホの画面を交互に観ている。

 凄く驚いているが、凄く綺麗だ。

 なんだか、可愛い。

 意識すると顔が赤くなってしまう。

 

「ね。 あきらかに俺は、この世界の人間じゃないでしょう?

 そんで、お前の質問の答えだが、俺がこの世界に転移させられたのが、お前の言った森の奥地だったから。

 だから、俺が森の奥地から来たってのは、それ以外の意味はない事だ。

 大体な、俺に転移場所の選択権があるならもっと人のいるとこの近くにしてもらってるよ」

 

「そんな、バカな……

 それでは、伝説の勇者と同じでは無いか、貴様のようなバカでスケベそうな、しかも年齢がいってる奴が……」

「うん。

 驚いているようだが、残念ながら勇者は俺じゃない。

 別に3名程がこの世界に転移させられたみたいだから、そっちだな。

 神様かわかんないけど、若い奴等の事を勇者候補がどうのって言ってたからな。

 それと、バカとかスケベとかってサラッと傷つけないでください」


「そうなのか……

 勇者が現れたって事は、魔王もこの世界に出現したってことなんだな」

 女が真剣な顔でぶつくさと…… どうでもいいが、俺を罵倒した事に対する謝罪とかないんだ。

 まあ、いいけど。


「そこまで真剣に悩まなくて良いよ。

 俺が傍にいるからね」

 女の肩に手を回して、安心させてあげようと……

「ちょ、ちょっと」

 ああ、女が!

 拒もうとしないで大丈夫だから!

 焦るな、俺。

 焦るなよ。


「大丈夫、大丈夫」

 出来るだけ静かな声で言うと、俺はもう一方の手を女の手の上に置いた。


「俺はね、ホントに感謝してるんだよ。

 君に助けてもらって嬉しかった。

 こんなに優しくて、綺麗で、それに可愛い君に

 前の世界、この世界、どの世界でも君にかなう女性などいない」

 まあ、本当に優しかったら俺を奴隷になれとか、ボコボコになんてしないだろうが。

 前の世界で俺の知ってる女性より確実に綺麗だしな。

 この世界では、ゴブリン以外に会ってないから現時点で一番だ。 俺は、嘘は言っていない。


「そ、そんな、……あの、 ……私は、お前が困っていたから……」

 女が顔を染めて視線をずらした。

 て、照れてる! 照れてるんだよな?!

 ぶん殴られるか賭けだったが…… や、やった!


「名前を聞かせてくれないか?

 俺が愛した女性の名前を心に刻みたいんだ……」


「……クレア」 


「うん?」

 は?

 エクレア?

 お菓子か?

 ったく、声が小せぇな!

 もっとハッキリとだな…… いや、焦るんじゃない、俺!


「出会ったばかりなのに、貴様は! ……軽々しく愛してるなどと」

 真っ赤な顔をしたエクレアが突然、立ち上がったのでビビった。

 あぶねぇ。

 焦りすぎたか?

 置いてかれる?!

 ああ、立ち止まった。

 良かった。


「ェクレァ、ちょっと待って!

 俺は、真剣だ! 時間なんて関係ない。

 俺は、ェクレァ、を愛している! ソレが、偽らざる俺の気持ちだ!」

 名前がハッキリしてないからボヤっとした感じでいっておいた。


「ヒィィッ!」

 クルッと、エクレアが俺を睨んでいた。

 名前ぼかしたのがバレたか?!


「アキラ……

 このクレアを妻にするという事がどういう事か解っているのか?」

 ああ、クレアか。

 名前がちゃんと解って良かった。

 ぼかして正解だったな。


 ん? 妻?


 お前は、何を言っている?

 俺にとってはありがたいが、結婚って飛躍しすぎだろう。


「クレア!」

 名前がハッキリしたので、ハッキリ言ってみた。


「……」


「クレア。

 どう言う事もどうも無い。

 何故だか解るか?

 意味が無いからだ。

 お前の背景やお前に何があるのか、俺は知らない。

 だからどうした。

 無意味だ。

 俺が俺であり、俺の自由で俺の人生を生きているのと同様、クレア、お前もお前だ。

 無意味な事を考えるな!

 クレア、問題は、お前の意思がどうなのか? ソレだけの話だ!

 俺は、お前を受け入れる。

 どんな事があってもだ。

 それが、俺の自由意思の決定だ」


「アキラ!」

 はい?


 え?


 クレアが俺の胸に飛び込んできた。


「私、アキラと一緒になる!」

「うひょ?!」

 異世界にやってきて、一泊二日で嫁が出来た!

 マジか!

 43年間の苦労は、この日、この時の為にあったのだ!

 うひょぉぉぉおおおおお!

 ラッキィィィーー!!!!

「嬉しいよ、クレア。

 絶対に君を幸せにするからね」

 うん。

 絶対に幸せにしなくちゃ! 決意に燃える男、それが俺だ。


「ありがとうアキラ、それじゃ約束守ってね。

 浮気したら殺すし、他の女に色目つかったら良くて半殺しにするから!」

「ん?」

 いつそんな約束を?

「クレア?」

「それとぉ、私、嫉妬深いからぁ、他の女と会話禁止ね。

 それからぁ…… 隠れてやればバレないとか、思わない方が良いわよ」

 またまた、そんな冗談は、

「目が真剣!」


 ヤバい女だったのか?!

 俺は、早まった事を言ってしまったのでは?

 兎に角、落ち着け。

「クレア、本当に俺で良いのか?

 ほら、俺ってカッコ良くないし、クレアより背が低いし、弱いし、おっさんだし!」

 無理しないで良いから……

「アキラよりカッコいい男なんて、この世にいないゾ☆」

 なんたる勘違い!

 過剰なる評価でございます。


「それに、少し私強いから大丈夫よ。

 ソロで冒険者やってるけど、Sランクだから」

 ニコニコとクレア……

 Sランクって、SMのSじゃないよな?

 異世界物の小説でも冒険者のSランクって化物ぞろいじゃん!

 何なの?!

 俺のハーレム計画は?

 モテモテ、イチャイチャ、ウヒョーー! は?


「ハハハ、す、凄いなクレア。

 か、仮にだよ。

 仮定の話で、もしも、もしもだよ。

 もしも、ハーレムを目指す男とかっていたら、どう思う?」

 めっちゃ汗かいてる俺。


「フフフ、そんなの最低よね」

 ダメだ、クレアの目が見れない。


「だ、だよねぇぇぇぇ。

 も、もしも、俺がそんな男だったら?」


「……」


 ん?


「ひッ!」 

 死んだ魚の目のようなクレアが俺の顔を覗き込んでる!!

 怖えええええええ!!!


「アキラは、違うよね?」

 なぜ、瞬きしない。

 怖いんですけど。

 あ、あの、クレアさん?






 ……殺される?



「あ、当たり前じゃないかぁ」

 俺は必死に言葉を絞り出し、精一杯の笑顔で言った。


「良かったぁー!

 アキラは、そんな人じゃ無いって解ってたけどね☆

 私、人を見る目だけは、自信があるんだ!」

 クレアが喜んでいるようで、助かっ、いや、良かった。

 クレアの一番ダメな所は、人を見る目が無いって事だけは、理解したよ。

 ふう。

 ビビらせやがって!


 でも……


「こんな、美女が俺の嫁さんになるなんて、俺って幸せ者だな」

「もう! アキラったら!

 私、アキラのお嫁さんになれて良かった! キャハッ!」

 フフフ、可愛いものじゃないか。

 心配しすぎだったかな?


「……ああ、仮に、アキラがハーレム作りたいって思ってたら、殺しちゃうとこだったから、本当に良かったわ」

 うん。 クレア、笑ってない。


「よ、良かったね」

 言った俺にも笑顔は無かった。



 こうして、異世界に来て早速嫁さん1号を手に入れた、優秀な俺。

 ん?

 約束?

 知らねぇよ、クレアが勝手にいってるだけだろ、そんなもん。

 などとは、口が裂けても言えず、悟られてもいけないと強く心に誓う俺であった。

なんだかんだで嫁が出来ました。

夫婦仲良く活躍していけたら良いですね。

良かったらブクマ等宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 嫁が出来て良かったですね♪明さん! 非常に面白かったです! つづきも楽しみにしてます‼︎ 頑張って下さい!応援してます☆
2021/07/18 06:18 退会済み
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