第 十八 話 決意に燃える俺
俺は、俺の力で手に入れた俺の村に到着した。
領主のラウル・ゴンゾーラにエロ本あげた代わりにもらった村だ。
俺の人徳からか、領主のラウルから、この村から税を取らないと言われた。
納税する分が丸々俺の懐に入る訳だから、村の発展の為に大切に使わさせてもらおうと思いますよ!
「ご覧ください、ここがカラパ村! 貴方の所有する村です!」
村長のラムダが村に向かって両手を広げた。
「そうか。 ここが、俺の村なんだな」
感慨深いものがある。
ざっと辺りを見渡したが、家が点在している閑散とした農村って感じの村で確かにラウル達が言ってたように、ここは寒村なのだろう。
だが、それがどうした。
これからこの村は良くなっていくんだから!
俺の所有する村だと思うと愛着がわいてくるぜ。
「今はこんな村だけど、いずれ豊かに楽しく皆が笑って安心安全に暮らせる村にして見せる!」
「ん? なんですか?」
村長……
「い、いや。 何でもないよ」
村長のラムダに少々不安を感じたが、なんとかなるだろう。
「アキラ、無事到着って事で、任務完了でいいな?」
俺が村を眺めていると声をかけられた。
おっと、そうだったな。
「おう、ザコウ。
助かったよ、護衛ありがとな。
報酬の方は先にギルドに支払ってあるから、街のギルドに戻ってコイツを渡したら報酬をもらえるらしいぞ」
冒険者ギルドで護衛が終了したら渡すように言われていた完了証明の半券をザコウに渡す。
これをギルドに残る半券と合わせて合致したら報酬が支払われるとの事らしい。
「なに、こっちが礼を言わなきゃな。
こんな楽な仕事で金を貰って悪いくらいだぜ」
お前は、ソニアのおまけで雇っただけだとは言えないが、喜んでもらえたみたいで良かったよ。
それに一緒に行動してみて解ったが、コイツは口が悪いだけで根は良い奴だと思う。
仕事は真面目だし、ちゃんと依頼主の事を考えて行動しているのが伝わった。
だから前に椅子でぶん殴って悪かったと少し思う。
だけど、そん時はコイツもオクルや俺をバカにしたからのが悪かったのだから、やっぱ俺は悪くないのか?
ま、いっか。
コイツも俺もそんな些細な事など全然気にしてないし、どうでもいいや、忘れた。
「ここが、アキラの村になるんだな。
寂れ、長閑で良い村じゃないか」
「ソニアもお疲れさん! 大丈夫? 疲れてないか? 少し休んでいくか?」
俺は、この大柄な女性ソニアの素晴らしい尻を堪能したかったから村へ向かう道中の護衛として雇ったのに、クレアのおかげで、ほぼ楽しめなかった。
しかし考えてみれば、純真な下心で雇ったソニアに手をつけて不倫をするなどという、人の道を外れた行動をする事無く清い関係を保つ事が出来たのだから良かったのだ。
ただ、心残りや残念って気持ちもある。
いやいや、ダメだぞ、俺。
俺にはクレアという綺麗で可愛くて優しい妻がいるんじゃないか。
だけど……
ソニアも俺の事をまんざらでもないような気がするし、諦めてはいけないのでは?
人間、諦めたらそこで終わりですよね。
そうだよな?
うん。
そんな事よりソニア。
今、寂れたって言おうとしてなかったか?
「今は、廃れて閑散とした村だけどな、俺は、この村を世界一の村にする!
皆が笑って、安全、快適に暮らせる村。
何より俺自身が楽しくいられる村にするんだ!」
そうだよ。
俺が楽しくいられるように、クレア以外の女性も俺の嫁さんにしちまえば良いじゃないか。
それなら不倫じゃない。
希望が見えた! ハーレム作ってウハウハだぜ!
「そうか、大変だろうけど、頑張れよ」
フフ、ソニア。
頑張れじゃないだろう? 頑張ろうだろ?
「ソニア!
良かったら、一緒に村づくりに参加しないか?」
俺の嫁として。
その尻を逃してなるものか!
「アキラ、ソニアは冒険者で忙しいから無理を言ってはいけないわ」
クレアが笑顔で俺に教えてくれているが、お前も冒険者じゃないか。
そして、俺に、ソニアを早く帰せと圧力をかけてくるんじゃない。
「クレア、冒険者の仕事なら、ここでも出来るだろう?
村にとっても魔獣とかの危険な事とかに対処出来る冒険者がいてくれた方が安心だよな?
なっ、村長!」
俺は、村長のラムダに言った。
「それは、そうですけど……
こんな村に来てくれる冒険者などいませんよ」
「こんな村って、お前、村長だろ!
まあ、冒険者が欲しいのは解ったよ」
よし、言質とったり。
「ほらな」
村長の貴重な意見を盾にクレアに言った。
「ほらなって……
それなら私がいたら十分でしょう? オクルもいるんだし」
「バカ、クレア!
クレアのバカ。
お前な、俺の愛する奥さんをだよ、そんな愛する奥さん一人にそんな危険な仕事を任せらんないだろ?
もっと俺を、そして、人を頼れ。
いいか、確かにクレアにもこの村の治安と防衛を頼みたい。
オクルにもだ。
安全安心な村にする為にもな。
だけど、オクルの言葉は俺以外解らないんだから、色々不都合があるだろう?
シフトを組めるちゃんとした人材がいた方が良いだろう?
あ、そうだ。
ザコウの拠点もここにしてもらえば良い。
シフトに穴が出来た時とか、仕事の無い時とか村の治安警護やってもらえば良いんだよ」
ゴチャゴチャ言ってるが、要はクレアとソニア、タイプの違う二人に傍にいて欲しいんだよ。
「アキラ、私はこの村に残るなど、一言も言っ」
「バカ、ソニア!
ソニアのバカ!
お前な、冒険者としてクレアに憧れてるんだろう?
その憧れのクレアの傍にいて、クレアの技術とか盗もうとか、そういった向上心が無いのか?
もっと俺を、そして、人を頼れ。
いいか、確かにそんなつもりが無かったのかもしれない。
だが、Sランク冒険者の傍で学べる機会なんてそうそう無いだろう?
チャンスを逃すな!
何より俺は、お前がこの村にとって必要な人材だと思っている」
ソニア、帰らないでください。
「俺はゴンゾーラの街に家族がいるし、この村に移住するなど出来ないぞ」
「ああ、そう。
無理言って悪かったな、ザコウ。
それで、クレア。
ソニアの件、どうか考えてもらえないか?」
人には都合があるからな。
俺は、無理強い嫌いだから。
うん、残念。
「お前!
ソニアと扱いが違うくないか?!
ついでみたいに答えて、サラッと流して次の話題にいくんじゃない!」
「ザコウ、家族は一緒にいた方がいいぞ。
それで、ソニア、どうだろうか?」
「ほら、それだよ、それ!
片手間に俺への返答をするんじゃない。
何だお前は!
もうちょっと俺に残って欲しいとかって粘らないのか?!」
「黙れ、おまけ!」
人が一生懸命な時に、全く。
困った奴だぜ!
「お、おま……」
ザコウは、アキラの身勝手な言葉に言葉を失った。
『アキラ様は、無茶苦茶だから気にした方が負けブヒ』
ザコウの言葉が解らないながら、気持ちを察したオクルがそっとザコウの肩に手をかけた。
「……いや、ブヒブヒ言って何言ってるか解らないんだけど」
困惑するザコウ。
「決めた!
憧れのクレアの元で、もっと力をつけさせてもらう!」
……やったぜ。
俺は、爽やかな笑顔で頷いた。
頭の中は、スケベな妄想で一杯だぜ!
「もう、仕方ないわね。
ソニアだけなら、またアキラのスケベな目的かと思ったけど、ザコウも来るならね。
……アキラ。
ごめんなさい! アキラがこの村に真剣に向き合ってるのを、今更ながら理解したわ!」
「ああ!」
俺は、クレアに力強く言った。
そんな事より、よ、夜が待ち遠しくてたまらん!
クレアとソニア!
か、体がもつかしら? おじさん困っちゃう。
「そんじゃ、カラパ村 改め、アキラ村!
代表である、俺、黒田 明!
副代表 クレア
そして、オクル、ソニア、ザコウを幹部として、住み良い快適な村を目指して頑張っていくぞ!」
決意表明だぜ!
「わ、私は?!」
慌てた様子でラムダが聞いてきた。
こんな村でも権力欲があるのか、自分の地位を不安視しているのだろうか?
村長なんて、名誉職、面倒事しかない気がするのだが……
「ああ、引き続き村長を頼む。
今まで片手間に村長をしていたと思うが、専任して報酬も支払うし、権限も少し与える。
ただし、報告、連絡、相談を徹底。
俺達の指示に従い、村民をまとめ管理に努めてほしい。
この村を熟知しているラムダには、期待しているからな!」
「はっ!
このラムダ、アキラ様に忠誠を誓います!」
ラムダが俺に頭を下げた。
最初、俺の事を犯罪者と言っていたが……
うん。
コイツの発言は、言葉半分以下に聞いておこう。
「ちょっと待てぇ!
俺がサラッと幹部になって村に来ることになっているのだが?!」
ザコウが喚いた。
全く、うるさい奴だ。
協調性が無いというか、自分勝手というか、兎に角困った奴だぜ。
「ザコウ。
お前の都合で良いんだ。
お前がこの村に来たいと思った時に来てくれ。
その時、俺は、お前を幹部として迎え入れる。
……へへへ、だって、俺達、仲間じゃん」
照れくさそうに言っておいた。
クレア、ソニア、俺って友情に厚い男でしょ? そうカッコつける為だ。
どうせ、ザコウはこの村に来ないだろうからな。
口先だけならいくらでも、綺麗ごとを言わせてもらいますよ、へへへ。
お疲れさまでした。
そして、さようならザコウ。
「うっ、ううぅ……」
ん?
「は?」
ザコウ、何故に泣いている??
「ア、アギラァ。
お、お前って奴は、知り合ったばかりの俺の事をそこまで……
任せろ!
男として俺は、お前の期待に応えて見せる!
なに、冒険者の仕事ならここでも出来るだろう。
街に今回の報酬と家族を呼びに戻るが、待っててくれ。
俺は、このアキラ村に移住させてもらうぜ!」
「あ、ああぁ。
そうなんだ……」
バカ、俺!
俺のバカ!
余計な事を言った数秒前の自分をぶん殴ってやりたい気分だ。
……いや、この寒村にとって人材は貴重だ。
若い男の労働力なんていくらあっても足りないくらいだろう?
結果、良かったんじゃないのか?
「ザコウ! 待ってるからな!」
俺は心からの笑顔でザコウに言った。
そうだよ、ザコウを村に呼んで良かった!
ラッキー、労働力ゲットだぜ、俺。
村に来た初日で村民が2名増えた。
いや、ザコウの家族もいるし、もう少し増えるか。
俺って、有能。
「よっしゃ、みんな!
俺が、否、みんなが快適な村を作ろうぜ!」
これから始まる村の経営の成功を願って俺は力強く言った。
なに、大丈夫だ。
このチームなら、何とかなるだろう。
クレアとソニアを見て俺は、決意と股間を固くした。
村のオーナー経営者となったアキラ。
家族のクレアとオクル、雇われ店長のラムダで頑張るぜ! とばかりに意気込むアキラ。
初日で移住者2名を獲得したアキラ。
みんなも、誠実なアキラを応援しよう。