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おじさん異世界に行く!  作者: カネキ
17/59

第 十七 話 到着、僕の村

「アキラ!

 村! 村が見えてきたよ!」

 クレアの弾むような声が聞こえた。

 村が見えただと!


「ムググ、ムゴ、ムガゴ!」


「こうして、村が見えると、やって来たんだなって思えるね……」

 クレアが感慨深げにいったが、俺も思えると思ってるのか!


『あ、あの奥様、もうアキラ様の……』

 オクル、助けて!

「ん?

 オクル、ブヒブヒいって、何言ってるか解んないわよ」

 ダメか!


「ムググ、ムゴ、ムガゴ!」

 

 両手両足を縛られたうえに目隠しされ猿轡を噛ませられている俺。

 いったい外はどうなっているのだろうか?

 こんな状態じゃ、状況が解らない。

 そして、俺を無視して黙るな!


 おや?

 軽い衝撃を受けたが、もしかして馬車が停まったのか?

 

「!」


 猿轡が外された?


「どう? 反省した?」

 クレア……


「このっ、ふざけんじゃねぇよ!

 何で俺がこんな目に合わなきゃなんないんだよ!」

 夫に対する不当な扱いに断固として俺は抗議の声をあ

「腕と足、どっちがいい?」


「ヒィッ!」

 もう折られたくない!


「ごめんなさい! 反省した! 反省しました!

 クレア! クレアさん! 俺が悪かったから、許してください!」

 昨日の夜、護衛してくれてるソニアの肩を揉んだだけなのに!

 なんで、俺がこんな目に。

 その時、首筋に軽くチュッってしただけなのに。

 その後、ソニアを後ろからハグしただけなのに。

 そして、キスしようとしただけだ!


 完全にクレアが寝たと油断した俺が悪かった……


 現場を押さえられ、軽く殺されかけた俺は、クレアが寝付くまで枕元で「愛してる」と連呼させられた。

 朝起きて俺が生きていたら回復魔法を使ってもらえるとの約束は守ってもらえたが、こんな姿にさせられ、そのまま馬車に乗せられた。

 不当だ!



「……」

 謝ったのに、何故黙っているのですか?

 もしや、またお仕置き?!

 嫌だ!

 俺はまだ、ソニアのおっぱいに触れるどころか、キスすらしていねぇ!

 首筋にチュッとしたけど、そんなのカウントに入んないだろう?

 せめて、生乳を拝ませてもらっても良いじゃないか?

 罪と罰が釣り合ってないじゃないですか。

 確かに、クレアが嫉妬深いのに軽率な行動だったかもしれない。

 だけど、無視する事無いじゃないですか!

 ううぅ……


 よし、サクッと謝りつつクレアの怒りを鎮めよう。

 いや、鎮めて、許してもらうんだ!




「なぁ、クレア。

 俺にも悪いとこはあったかもしれないが、お前だって俺に対する仕打ちがやりすぎって少しでも思うなら、この拘束を解いてもらえないだろうか?

 も! 勿論、これからは、クレアの事をもっと愛するし、夜も頑張るからさ。

 少しでも俺に対する情けがあるなら、許してください。

 俺にとって、クレアに嫌われる事がこの世で一番辛い事なんだよ。

 解るだろ?

 俺は、クレアの事を世界で一番愛してる。

 それに、クレアが世界で一番優しい女だって知ってるから…… なぁ、頼むよ、クレア」


 その時、目隠しが外された。

 俺の真摯な訴えがクレアの心を開く事が出来たのだろう。


「ありが…… オクル?!

 あれっ? クレアは?」

 俺の目の前にオクルがいた。

 俺の必死の説得は? あれ?


『奥様なら、外に出て村の代表者と話をしているブヒ』

「……」

 到着?

 いや、その前に、違うだろ?

 何で俺を放置していく。

 ハハハ、そんな馬鹿な。


「クレアが俺を放置していく訳が無いだろう。

 いいから、俺の縄を解いてくれ」

 まあ、馬車の中は俺とオクルしかいないように見えるが。


『直ぐに解くブヒ』

 オクルが俺の縄を解きにかかったが……


「おい、大丈夫かよ?」


『……』


 手間取っている。

 中々解けない縄に苦戦しているようで、俺の質問にも答えやがらねぇ。


「オクル、刃物でも持ってきて切った方が早いんじゃないか?

 馬車を降りてった奴らに刃物かりてきなよ」


『……』


「おい、オクル」

『うるさいブヒ!

 アキラ様がゴチャゴチャ言うから全然解けないブヒ!』


「お、おう…… すまん」

 何で、俺が怒られるんだよ?

 

『あ゛ーーー!!

 もう、無理ブヒ!』

「オクル、自棄になるんじゃな、うおっ!」

 縛られてる俺は、自棄になったオクルに抱えあげられた!




「領主のゴンゾーラ様のお使いの方から伺っておりましたが、こんなお綺麗な方がいらっしゃるとは!

 クレア様、ようこそカラパ村へ!

 この村の村長を務めさせていただいておりますラムダと申します」

 カラパ村、村長 ラムダがニコニコとクレアに言った。


 クレアがラウルの使いに紹介されたこの村の村長ラムダ。

 頭頂部がハゲてサイドに残る白髪、口ひげも白くなっている小柄な男。

 人の良さそうな老人、クレアはそんな印象をもった。


「ラムダ、これから宜しく頼むぞ。

 私の夫がこの村の所有者になったからには、私も協力を惜しまないから」

「このような小さな村の長をさせていただいておりますが、私は人を見る目だけは自信があります。

 貴女は、誠実な方だとピンときました。

 お綺麗ですし。

 貴方の夫であれば、立派な方なのでしょうな」

 ラムダはニコニコと、チラッチラックレアの太ももを見ながら言った。


『奥様ーー』


「ブヒブヒと何事…… オ、オークだあああああ!」

 ブヒブヒ言う声にラムダが振り向くと、こっちにオークが走ってくるのに気づいた。

 当然、アキラを担いだオクルである。


「ラムダ、心配いらない。

 あのオークは夫の友達で、オクルという名をもっている。

 オークだからと不当な扱いをしたら私達は許さないからな」

「ほ、ほんとに大丈夫なんですか?」



ドサッ!



「痛いっ!

 オクル! もうちょうっと優しく降ろせ!」

 クレアの前に無造作に投げ捨てられた俺。


「なんですか、こいつは?

 ……ああ。

 大方、クレア様達を襲った盗賊か何かでしょう。

 身の程もわきまえず、クレア様ご一行を襲うとは、とんでもない奴ですな!

 私は人を見る目だけは自信があります。

 この男は、ロクでもない奴だとピンときました」


 俺を見降ろして、なんだ、このジジィ。

 初対面の相手に、ボロクソだな、おい。


スバッ!


 クレアがナイフで俺を拘束しているナイフを切ってくれた!


「クレア、ありがと!」

「コラッ! 貴様、クレア様に馴れ馴れしい!」

「痛っ!」

 いきなり頭を殴られた。

 またお前か、ジジィ!


「ク、クレア。

 こちらの、おボケになられた、おじいさんは何者?

 俺、村長に挨拶したいんだけど」

 額に青筋をピクピクさせて、地べたに座る俺はクレアに聞いた。

 いくら腹が立っても老人に怒る訳にはいかないからな。


「誰が、ボケジジィだ!

 この罪人め!

 挨拶? バカめ、私は、お前になど用はない!」

「ちょ、ちょっとやめろ!」

 なんだ、このジジィ、殴りかかってきやがった!

 止めろって!


「村長、それが夫のアキラだ」


「そう! お前のような、はいっ?!」

 俺の胸倉を掴むクソジジイの手が、クレアの言葉にとまる。

 助かった。


 村長?


「え?」

 村長が俺から手を離し、俺の胸倉の辺りの衣服を整え、肩のほこりを手で払った。

 俺に笑顔を一度見せると頷き、一歩大きく下がる。

 かかとをつけつま先を開き、お腹のへその辺りで右手を左手で掴むようにして重ねた状態の姿勢からお辞儀。

 そして、俺に微笑みかけ?



「いらっしゃいませ、アキラ様!」

「ふざけんじゃねぇ!!!!」

 

 こんなのが村長で大丈夫か、この村。

ながい道程を経て、アキラは村に到着した。

アキラの所有する事になった村に。

これからどうなっていくのだろうか。

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