第 十四 話 わらしべアキラ
「何だ、本題って?
お前の持ってきた商品なら、買い取ったけど、まだ何かあるのか?」
「おうよ、ラウル、もうちょっと付き合ってくれ!
実は、もう一つ、お前に購入してもらいたい、俺的にはコイツが本命って商品があるんだよ。
んで、クレア。
悪いけど、席を外してくんないか?」
俺は、隣に座るクレアを見ると、クレアは俺の考えを理解しているように頷いてくれた。
「ああ。
私がいると、ヤりにくいだろうからな。
アキラ、任せたぞ」
クレアがそう言って、席を立つと部屋を出て行った。
ああ、任せとけって。
「アキラ、どういう事だ?
クレアがいると何か問題でも……」
訳が解らないと言った顔をしているな、ラウル。
「まあな。
俺と、お前、男同士の方が忌憚なく意見をかわせると思ったから、クレアには席を外してもらった」
「それは一体、どういう事だ?」
「フフッ。
多くを語るより、まずは、物を観てもらった方が良いな。
ヘイッ! オクル」
俺は、パチンと指を鳴らす。
「……」
「……」
「……」
「……すまん、オクル。
俺のリュックとって」
指をパチンと鳴らして持ってきてもらおうなど、打合せしてない事をやろうとしたのが間違いだった。
『どうぞ、ブヒ』
「ありがと」
オクルからリュックを受け取ると中を物色する。
ラウルはどういった感じのが良いのやら……
「あ、そこの人もこっちきて、座って!
ラウル、いいだろ?」
ラウルの後ろに立つ使用人のおっさんは、ラウルの様子を伺っている。
「セバスチャン、構わない。
俺の隣に座れ」
「……失礼いたします」
よし。
この部屋にいる男が勢ぞろいしたね。
「本日の目玉商品!
美術品とでも思ってくれ。
そんじゃ、まっ、こんな感じでどうだ!」
俺達の間に置かれたテーブルに数冊のエロ本を置いた!
「こ、これは!?」
「ラウル様、本の様ですが…… これは!?」
俺の目の前の二人が目を見開き驚いている。
だが、当然だぜ!
材質、写真、モデルさん。
全てが初めて見るものだろうからな、存分に度肝を抜かれろ!
俺は、ニヤリと笑う。
「さて、とりあえず、熟女もの、女子高生風の、巨乳の、ロリっぽいのと幾つか並べてみたが、どうだ?」
お前達の好みはどれだ?
表紙のお姉さん達が良い仕事しているから、中々魅力的でしょう?
あんまり過激なのは、刺激が強すぎるからな、リュックに温存だ。
「ラウル様、とても絵とは思えませんし、その……」
使用人のセバスチャンが言いにくそうにラウルに。
「エロ、いや、美しいでしょ?」
微笑ましいので、俺はにっこり笑顔で聞いてみた。
自信満々だぜ、俺は。
多くの人達による努力と知恵が詰まった結晶。
そして、人類が作り出した芸術文化の頂きにある物。
ソレがエロ本だからな!
「フフフ。
さあ、二人とも。
手に取って、中を存分に検めてもらおうか!」
俺は、この日一番の笑顔で言った。
ラウルと使用人のセバスチャンが顔を見合わせ、エロ本を手に取った。
「げ、下劣な!」
ページをめくりながら、ラウルが言った。
「全く、けしからんですな!
ああぁ、こんなポーズまで……」
セバスチャンが、抗議の声をあげつつ、熱心にページをめくる。
「セバスチャン、見た事の無い衣服を身に纏う、異国の女性を見ろ!」
「ラウル様、こちらの女性も中々ですぞ!」
「すげぇ!」
「たまりませんなぁ! ……いや、けしからんです」
異文化に触れ、知的好奇心が否応にも刺激されているのだろう。
正に俺は、文化親善大使とでも言える存在ではなかろうか。
「しかし、この本の材質はなんだ?! 表面がツルツルとして…… 柔らかいのに丈夫そうに見えるが」
ラウルが俺に聞いてきた。
「紙だよ」
「これが、紙だと?!」
凄い驚かれた。
「この世界に現存するのは、俺が持っているのだけだ。
断言する。
これは、ここにあるモノ以外に存在しない。
って事は、これらの芸術作品は、宝石や金以上の価値を秘めたお宝と言えよう!」
ビシッと言ってやったぜ、俺は!
「確かに!」
熱心に読書にいそしむラウルが素直な反応を見せた。
「こんな貴重な物……
各国に知れたら、奪い合う戦争が起きるやもしれませんぞ!」
「ああ、全くだ!」
ラウルとセバスチャンがエロ本から視線を移さずにお話してる。
「その懸念は、大いにある。
俺の故郷では、戦国時代、名品と呼ばれる茶器をめぐり戦いがあったのだが…… 俺としては、戦国時代の名だたる英雄達が欲した茶器を超える価値が、この本にあると思う!」
「ああ、その通りだ」
「ぷっ」
何がその通りなのか知らないが、ラウルが真剣な表情で言ってきたので噴き出しそうになってしまった。
あぶない、あぶない。
「さて本日は、そんな貴重な商品であるこの本をお買い上げいただけると、俺とラウルの友情の証として、もう一冊無料で差し上げますが、いかがでしょか?」
「セバスチャン。
この家に、金がいくら残っている?」
「ラウル様、これだけ貴重な品です。
領地の金をかき集めても、1冊か2冊買えるかどうかといったとこでしょうか……」
ん?
俺としては、高く買ってもらいたいと思うが、お前等、たかがエロ本如きを無理をして買おうとしているんじゃ無いだろうな?!
急に、怖くなってきた。
変に煽らなきゃよかった。
「それならば、一冊でも手に入れなければ!
だって、今なら、もう一冊ついてくるんだもん!
一冊は、我が家の家宝にするだろ、そして、無料で付いてきたのを王家に高値で転売すれば……」
ラウルがアホな事をブツブツと言いだした。
「や、やっぱ、売るの辞める」
テーブルに乗ったエロ本を回収する俺。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!
買うから! なんとしてでも金をつくるから、待ってくれ!」
「いや、それが重いから!」
必死に言ってきたラウルに言った。
「アキラ様、ラウル様の願いを聞いて頂きたい!」
エロ本片手にセバスチャンがキリッとして俺に言った。
なんだ、お前!
「もう! お前等が手にしてるのあげるから、無理しようとするのやめて!
あと、コレもあげるからさあ!」
回収したエロ本をラウルの前に置いた。
詐欺みたいな事をしようとして、申し訳ありませんでした。 だから、許してくれ。
「こんな貴重な物を、こんなに!!
アキラ、この領地からコレに匹敵するお返しなど、到底無理だ!
はッ!
そうだ、俺の体を好きにしてくれ!
ほら、この女みたいに縛ってもらってくれても良い!」
……何を言っている?
「ラウル様お一人を犠牲に等出来ませぬ!
私も…… ああ、これが良いですね。
恥ずかしいですが、四つん這いになって私の秘部をアキラ様に!」
「お前等、アホかぁああああ!」
ほんのり顔を赤らめてるのが、イラっとくるぞ。
大体、ソレで俺が喜ぶとでも?
一体、俺をどんな人間だと思ってるんだ?
「……いや、シュンとしなくていいから」
見ると、ラウルとセバスチャンが項垂れてた。
大きな声を出して悪かったよ。
てか、なんで落ち込んでんの?
「あ」
そうだ。
「ラ、ラウル。
あの、その本あげるから、頼み事していいか?」
「……やはり、俺の体を?」
「違う」
なぜ、お前は自分の体を売りたがる?
「あのな、厚かましいお願いなんだけど……
この領地の外れで構わないからさ、少し土地を分けてもらえないか?
そこで、小さな集落というか村をつくりたいんだよね」
俺の夢(女の子一杯のハーレム)が近づくのではないかと思ったから提案してみた。
『アキラ様の夢の村づくりですね!』
「ああ、その通り」
オクルが嬉しそうだけど、ラウルがどういうか。
「それは、この領地を全て明け渡せと?」
「お前に脳はあるのか?」
どうして、そんな結論になるラウル!
いちいち決断が重いんだよ。
「あのな、頼むから話をちゃんと聞いて。
俺は、小さい村っていってるでしょ?」
「小さい…… 村……」
「ラウル様、カラパ村ならば、アキラ様の御希望に添えるのでは?」
「セバスチャン、カラパ村ってお前。
あんな寒村じゃ、失礼だろう」
寒村?
いいじゃない!
そんな場所なら、気が楽だ。
「ラウル、そこで良いよ!
貧しくて人が少ないって村なんでしょ?
そんなとこで十分だよ! 欲しい!」
「ええぇ、あんな場所で良いのか?」
なんだ、その顔。
俺が、良いって言ってるのに。
「良いよ!
塩とか結構いい金額で買い取ってもらったから村経営の資金もあるし!」
「アキラが良いなら、全然こっちとしては構わないぞ。
むしろ、申し訳ない気持ちになってしまう」
「いや、そんな事ないって!
村が手に入るなんて、凄く嬉しいよ!」
「そうかぁ?
……なら、せめてアキラの村は今後税を免除させてくれ」
「マジか?! やったぜ、助かる!
ラウル、お前、良い奴だなぁ!
クレアも村が手に入ったと知ったら、喜ぶぞ!」
エロ本が村に化けた。
わらしべ長者のような男、それが俺!
女の子を向かい入れる為にも、もらった村を豊かにしないとな。
さあて、これから忙しくなるけど、頑張るぜえ!
数冊のエロ本で村を手に入れたアキラ。
やったね。
やはり、エロ本には不思議な力があるのかもしれない。