第 十一 話 お仕事しましょうか!
いやはや、昨日は酷い目にあいましたよ。
ちょっと女の子を口説いていただけで、両腕をへし折られちゃった。
まあ、それは俺が全面的に悪いので、文句は言えないのだけれども、納得が…… いや! 俺が悪かったし反省すべきだな、うん。
しっかし、やっぱりクレアは優しい!
両腕を魔法で治してくれたんだもん。
さてと。
「これからは昨日の失敗を生かして上手に女の子と仲良くなっていこう!」
そんな前向きな俺は、クレアとオクルと共に宿を出た。
「クレア、ベッドで眠れて良かったな!」
地面じゃ無いから膝が痛くなくて良かった。
流石に日本のベッドみたいにクッション性が良い訳ではないが、地べたに比べりゃ雲泥の差だ。
宿なので大きな声は出せなかったが、ソレはソレで良かったな。
うへへへ……
「アキラがよく眠れたみたいで良かった」
艶々な肌のクレアが嬉しそうに言った。
昨日の夜、頑張ったのが良かったのだろう!
俺の奥さんは最高だぜ。
「よし! クレアは冒険者ギルドに行くんだろ?
俺もやる事あるし、二手に分かれますか!
おっと! 俺の事ならオクルが護衛してくれるから、心配無用だぜ」
俺はウインクしてクレアに言った。
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「冒険者ギルドの依頼をこなさなくて良いのか?」
「大丈夫よ、ありがと、心配してくれて」
クレアの、声のトーンが…… もうちょっと笑顔でも良いんじゃないか?
……まあ、昨日の件があるから、警戒されているんだろうけど。
全く。 そんなに俺が心配か?
『今日は、何をするブヒ?』
ん?
呑気なオクルが聞いてきたが、そっか、言ってなかったもんね。
「おう、本日は、ちょっと物を売りに行きたいと思います!」
俺をただのイケメン中年と思うなよ。
ちゃぁーーんと、先々の事を考えて行動しているんだからな。
さぁ、褒めろ!
「売るって? その大きな肩に担いでる袋の中身?」
フフ、クレア、鋭いね。
「そっ」
俺は二人に自信満々に答えた。
「おっと、そうだ!
せっかくクレアが一緒に行動してくれるんならさ、俺の持ってきた商品を売れる場所を教えてくれよ!」
「そうね…… ある程度の物なら、冒険者ギルドで買い取りしてるけど、何を売るのか聞かせてもらわないと、なんとも言えないわよ」
ありゃりゃ、クレアを困らせてしまった。
「そりゃそうだ。
無茶言ってすまんね、クレア」
俺は、辺りを見渡す。
うん。
「ちょっと、そこの路地に入るぞ」
少しだが人通りがあるので、俺は二人を連れて人気の無い路地に入る事にした。
大切な商品だから、人に見られて面倒な事になっても嫌だからだ。
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この辺でいいか……
「よいしょっと」
辺りに人がいない事を確認した俺は、リュックを降ろす。
「大変ね、そんな大きな荷物って。
マジックバックなら、それくらいの荷物なら簡単に入りそうだけど……」
「そうだよな、クレア。
異世界物の定番の沢山荷物が入るアレだろ?
ホント欲しいよ。
このリュック結構重いから、疲れてかなわん」
「大変ね。
このマジックバックなら、それくらいの荷物余裕で入るのに」
クレアが腰に着けた小さなバックを見せてくれた。
「へーー、ソレが、マジックバックなの?」
そんなに沢山入るようには見えない、小さい鞄だし。
ふーーん。
「……え?」
俺は、普通に言ってきたクレアの顔を見た。
いや、クレア。
ん? なに? みたいな顔をするんじゃないよ。
「クソ重いこのリュックを背負って苦労してたんだから、そんな便利なモノを持ってるなら早く教えて!
一生懸命リュック背負ってた俺がバカみたいじゃないの! 可哀想だろう!」
『アキラ様、そんな事より早く中を見せてくださいよ』
「……え?」
そんな事?
「オクル、お前はクレアの言葉が解らないから、そんな事っていうけどな」
「過ぎた事を言ってもしょうがないでしょ?
それより、早く中を見せてよ」
そうですよね!
クソッ! オクルの言葉が解らない癖に同じような事いいやがって。
「お前達は、俺に対する優しさってもんがなぁ!
……いや、もういいよ。 怒るのも馬鹿らしくなってきた。
そんじゃ、開けるぞ!」
はいはい、ちゃんと聞かなかった俺が悪いですよね。
少々イラっときたが、お披露目と行きますか!
リュックを開け、地べたに売ろうと持ってきた物を数点置いた。
そんじゃ、説明しようかい。
「ほら、このビニールに入ってるのは、塩。 こっちは砂糖で、これは、胡椒。
まあ、これは定番だし、結構持ってきた。
それから、今回の目玉商品!
貴族とか金持ちに高値で売るつもりで持ってきた古本屋で大量に仕入れたエロ本。
売るのはそんなとこで、後は、水筒に袋麺、鍋に包丁、鉈、料理や農業、DIY関連の本ってとこかな」
「真っ白な塩や砂糖、そして胡椒がこんなにあるのが凄いって思うんだけど…… コレって?」
クレア、そんな汚物を見るような顔をするな。
「こんなの、この世界の人間はまず見た事が無いハズだ。
事実、写真なんて無いだろ?
見た事ある?」
「うううう、……無いけど」
認めたね、クレア君。
しかし、まだ何か言いたげなご様子で…… フフフ。
「エロには、人は金を使う!
それは、世界の真理なのだよ!」
「で、でも、金持ちなら、妾や、簡単に女を!」
フッ。
「クレア。
この本のモデルさん達みたいな女性が、この世界にいるか?
いたとしても、珍しいんじゃないんですか!」
「はっ!」
クレアが目を見開いた。
「だろう?
それと、良い事を教えてやる。
男にとって、一人でする行為は別物!
それは、秘めたる行為。
各自のスタイルがあり、男の嗜み、大人の男の神聖なる儀式なのだ!!
だから、そのお手伝いに、この本があると便利でしょ?」
「はうあっ!」
クレアが雷に打たれたようなショックを受けているのが伝わった。
「……売れる。
アキラ、これは、とんでもない金を生むわ!」
フフ、解ってくれたな。
「クレア。
エロは、世界最強の売れ筋商品なんだよ」
キリッと俺は言った。
『……確かに、往来じゃこんなの広げられないですよね』
オクル、冷静に言うんじゃない。
エロ本の商品価値について熱弁してたのが恥ずかしいじゃないか。
「さてと、そう言う事で、いっちょ行きますか!
俺はコレが売れた資金でやりたい事があるからな」
「やりたい事?」
クレアが不思議そうに聞いてきた。
もしや、俺が考え無しに行動していたとでも思ってたのか?
いや、それは無いな。
だって、俺って思慮深い顔をしているもん!
まあ、そこまで深い考えなど無いけど。
「いやね、俺の村って言うか、集落みたいなの造りたいなぁって考えてる。
そこに暮らす皆が便利で快適な生活が出来る村」
そして、俺の女達が一同に生活する村なのだが、クレアには黙っておく。
流石に死にたくないからな。
なので…… 今は秘密だ!
『その村には、オーク族が入れますか?!』
「うおっ!?」
何?!
オクルが凄く食いついてきた。
「お、おう! 当たり前じゃん。
しかもオクルは俺の仲間だからな、幹部だよ。
そりゃもう、お前、オークの女なんて、入れ食い状態だぜ」
『うおおおおおおおおおお!!!!』
怖ッ!
凄い興奮状態じゃねぇか!
「アキラ!」
「ヒィッ!」
入れ食い状態とか言ったから、殴られるのか??
「偉い!
アキラが、みんなの為にそこまで考えてるなんて!
貧しい人、迫害されている人が幸せに暮らせる村を作りたいなんて」
「いや、そんなの言ってな」
「決まりね!」
何が?!
クレアが俺の言葉を遮って、何か納得してるし!
「アキラ、ここの領主の所に行くわよ!」
「は?
……いや、商人のトコにまずは、塩とかを売りにいくんじゃ」
クレアがやる気になったのは、良いのだが、なぜに領主のトコへ行く事になるんだ?!
「ほら、さっさと荷物戻して! 早く行くわよ!」
俺の話を聞かないスタイルか!
って、ああ早いって、ちょっと待ってよ!
オクル! お前、言葉解らない癖に、さっさとクレアの後をついて行くんじゃないよ!
「ク、クレアァ~~」
俺は急いで荷物をまとめ、クレア達の後を追った。
下種な夢をかたる中年主人公アキラ。
だが、なぜかクレアが勘違い。
そして、売りにいくって言ってるのに、この地の領主の元へと行くと言い出した。
どうなってしまうのか?!
次回も、よろしくお願いいたします。