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おじさん異世界に行く!  作者: カネキ
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第 一 話 やってきました異世界に!

宜しくおねがいします。

 突然だが、俺は異世界にやってきた。

 俺が願ってやまなかった異世界にこれたのだ。


 俺の名前は、黒田 明

 43歳。

 身長 160㎝

 体重 60kg

 ガッチリ体形で短髪のナイスガイ。

 俺は日々、異世界に行きたいと願っていた夢見る中年。

 知的な俺は、表紙に可愛い女の子の絵が描いてあるそんな文学作品を手に取った。

 本屋で見つけたそれは、異世界ものの小説。

 その世界観に魅了され、いたく感銘を受けた俺。

 ハーレム物を読み、異世界に行く事を決意したのはごく自然な事であろう。

 そんなハートフルでドリーミーな俺は、それからというもの異世界に行きそうな高校生やブラック企業に勤める人とかの観察を始めた。

 それもこれも、あわよくば、異世界転移に巻き込まれたいからだ!

 まあ……

「そんなんだから、会社を解雇され、近所からは変わり者のレッテルを張られるようになったのだけども……」

 思い出し、少し暗い気持ちになった。

 いや、会社をクビになったおかげで、異世界転移しそうな人の観察に時間をさけたんだ、良しとしようじゃないか。


「そうだよな! 変人扱いを受けたが俺は後悔等してなどいない! なぜなら、現にこうして異世界にやって来たんですもの!」

 握り拳を高々と掲げて俺は叫んだ!

 森の中、一人で!


 さてと。


 俺は冷静になり辺りを見渡す。

 木。

 草。

 人影なし。

 空には太陽が二つ。

 少なくとも地球ではないのが解り、安心する。

 うん。

 異世界。


 どうやって、俺は異世界にやってこれたのか?

 それは、日課である下校中の高校生の観察をしに行った時、男1名と女の子2名の足元に魔方陣が現れたのを目撃したからである。

 俺の目の前でその高校生達が光を放つ魔方陣に吸い込まれるように…… そりゃ俺も行くっきゃないでしょ? そんな感じで無我夢中で俺は迷わずに飛び込んだ。

 そしたら俺の予想通り異世界であろうここに、やって来ることが出来たって訳だ。


「ああ、そういや、転移の最中……」


『何で、呼んでない変なおっさんまで居るんだよ!』

『どうやら、巻き込まれたようですが、付与スキルや加護とか、どうしましょう?』

『どうしましょうって、お前、予定してない人間に与えるスキルとか用意してないぞ

 勝手に加護なんかつけてみろ、絶対問題になるからダメに決まってんだろ!』

『戻しますか?』

『お前、無関係な人間を巻き込んだのバレたらクビどころの話じゃないんだぞ!

 戻す為に転移門を開いたら履歴が残るだろ! 絶対バレる!』

『でも、そしたら……』

『……捨てよう』

『え?』

『この子達、勇者候補から出来るだけ離れた場所に捨てるんだよ』

『え?』

『こんなおっさん、いなかったんだよ』

『え?』

『いなかったんだよな!』

『え、あ、は、はい。 この世界に転移してきたのは三名の若者達だけでした』

『……ああ、そう言う事だ。

 こいつは、地球人じゃない。

 現地の人間で、この天上界に来てない。 いいな?』

『理解しました。

 現地人と同じ言語を使えるようにだけしときましょう』

『そうだな、直ぐ死ぬと思うが、万が一、現地人と接触して騒ぎになり他の神に知られたら大変だからな』

『この間抜けで粗暴な顔を見てくださいよ。

 知能も低そうですし、直ぐ死にますよね』

『ああ、勿論だ!』



「などと声が聞こえた気がしないでもないが、まぁ、気にしてもしょうがないだろう。

 さてと、転移してきたはいいが、ここはどんな世界なのかしら?

 出来たら、魔法なんかある世界なら嬉しいな」

 俺は背中に背負ったデカいリュックを降ろし、中から水筒を取り出し水分補給と洒落こむ。

 普段から異世界に行っても困らないように、このデカいリュックに色んな物を入れて行動していた俺の勝利だ。

 流石は、俺。

 この抜け目の無さに、自画自賛、脱帽だぜ!

 ただ、近所から痛い奴と思われてたのがアレだが、気にするな、俺!

 思い出すと悲しくなる。


「んな事より、フフフ、ハハハハハ!

 日本だとモテなかったけど、ここなら、モテモテだぜ!」

 根拠のない自信に裏打ちされた俺は、これからの出会い(主に女の子)に胸をときめかせる。

 キラキラと曇りなき眼で下心満載の俺は、力強く歩みだす。

 いざ、人のいるところを目指すのだ。




◇◇◇



 森を彷徨っている。

 全然、人影がない。

 変な動物とかは見かけたが、怖いし近づかないが、どんだけ広いんだ森!

「全然、森を抜けれないじゃないか!」

 やり場のない怒り。

 善良でお人好しの俺が、なぜ、こんな目に。


 そんな俺の目の前に緑色した小人が歩いてい

「ゴ、ゴブリンだ!」

 ファンタジー!

 出ましたよ!

「い、いや、モンスターだよな?! これは、ヤバいんじゃないのか、いずれ最強の力を持つ事になる俺だが……」

 俺は、慎重にならざるを得ない。

 何故なら、敵の戦闘力が未知であり俺の戦闘力も未知なので当然だろう。

 極力無謀な事はしたくない。

 こんな時、ステータスの確認をしたいところなのだが、そんな便利機能が見当たらなかった。

 森を彷徨い歩く中、なんど「ステータスオープン」と叫んだ事か!

 話が違う。

 いや、出来るとかって聞いてないけど。

 異世界転移の基本オプションだろ?

 その他オプションとして、アホみたいに強くなってビキニアーマーの美女とイチャイチャ出来る権利獲得は当然だよな?

 確かに若い娘さんも良いが、俺としては熟した女性の方が好みで……

 そんな事より、今ある危機だろ、俺!

 どうする、どうすんだよ?

 いや! 俺は、泣き言など言わない。

 何故なら、前向きだからだ!

「よし、殺られる前に……」

 ありがたい事に向こうは、まだ俺に気づいていないようだ。

 俺は、リュックの中からホームセンターで購入した鉈を取り出す。


「よ、よし」

 無骨な刃物を手に、覚悟を決める。

 ……出来るのか?

「虫も殺した事のないような、この俺に」

 呟いていた。

 落ち着け俺。

 ……うん。

 虫は殺した事ある。

 殺虫剤とかバンバン使った事あるし。

 いや、だからって人なんて殺した事がある訳がない。 当たり前だ。

 小動物だって殺した事ないよ、考えた事もない。

 ほら、俺って動物好きだし。

 猫とか犬とかイジメる奴っているけど、なんでそんな残酷な事が出来るんだろうね?

 全くもって理解に苦しむぜ。

 ストレスが溜まってるなら、風俗行くとか自分で処理するとか建設的な事をすれば良いのにと思う。

 なぜ、そんな健全な思考が出来ないのだろうか?

 世も末だぜ。

 こっちにも風俗があるのだろうか?

 どっちにしても、これから生活していく上で金がいるだろう。

 日本円なんて使える訳もないだろうから現金を手に入れないと…… 


「うん」


 余計な事を考えていたおかげで、ゴブリンが俺に気づいた。


「……」

「……」


 俺とゴブリン、互いに目を見ている。

 目を逸らしたら襲い掛かってくるんじゃねぇか?

 怖ぇぇな。

 ……どうしよう。

「殺るっきゃないだろう!」

 俺は鉈を振り上げて、ゴブリンに突進!

 殺される前に殺せ!

 俺は、前向き、前進あるのみだぜ!

「うおおおおおぉぉぉぉぉきえぇぇぇぇーーー!!」



「は? え? うぎゃああああああ!」


 ゴブリンが叫び声をあげて逃げ出した。

 俺の気迫に押されたか?


 勝てる!


「逃げるんじゃない!」

 俺は、逃げるゴブリンを華麗に追った。



「刃物を振り回して追ってくる! 僕、何もしてないのに、なんなの?!」

 叫ぶゴブリン。

 イカれた人間が突然刃物を持って向かってきたので逃げた!

 必死に逃げるゴブリン。

 だが、狂人は尚も奇声を発し追いかけてくるではないか!

 半狂乱になりながら、必死で逃げるゴブリンは、自分の集落へと急いだ。


「うおおおおおぉぉぉぉぉきえぇぇぇぇーーー!!」

 森にアキラの声がこだまする。





◇◇◇



ゴブリンの集落――


 獲物を狙うハンター事、俺、黒田 明はゴブリンの集落に到着した。

 ゴブリンを追っていたら、この場所に着いたのだ。

 俺は、鉈を仕舞う。


「皆さん、こんにちは! 僕、黒田 明です!」

 俺は礼儀正しく挨拶した。



 俺を取り囲むようにして殺気立っているゴブリン達に向かっての挨拶だ。

 冷静にちゃんと話せば解るよな? な?

 落ち着け、ゴブリン。


「初対面だと言うのに、皆さん僕に敵意むき出しじゃないですか。 そんなの野蛮ですよ!」

 俺が何をしたと言うのか? 当然抗議させてもらう!

「お前! 問答無用に襲い掛かってきたじゃないか!」

 俺に追い掛け回されていたゴブリンが叫びやがった。

 まったく、余計な事を。

 イライラしながら俺は、叫んだゴブリンを睨む。


「人間を殺せ!」

「どうせ、盗賊か冒険者崩れだろ!」

「ゴブリンの亜種か?」

「なんて凶悪な顔を!」

「不細工!」

「マズそうだ!」

「野蛮!」

「頭おかしい!」


 ああ、ほら、他のゴブリン達も騒ぎ出した。

 めんどくせぇな!


「黙れ!

 こっちが下手に出れば、調子に乗りやがって!

 紳士的な俺が平和的に話をしているのに、どうしてお前達は、話すらまともに出来ない!

 なぜ俺の様に理知的になれないのだ?」


「……」

「……」

「……」


 ゴブリン達が黙った。

 俺の言葉に感動して我が身を顧み反省しているのだろう。


「お前にだけは言われたくねぇよ!」


 ゴブリンの誰かが言った。

 フフフ、そうか……

「何だと、この野郎! 今言った奴は誰だ! 前に出ろ、この野郎!」


 俺はゴブリン達と殴り合いの喧嘩になった。




 焚火の明かりが辺りを染める。

 ゆらゆらと揺れる炎。

 爆ぜる薪のパチパチとした音。


「だから、俺は異世界からこの場所にやって来た!」

 日本酒の一升瓶を傾けてカップに何杯目かの酒を注ぎながら俺が言った。

「異世界ってどこよ?」

 隣に座るゴブリンが自分とこの地酒を手に聞いてきた。 

 勧められたが、お腹が痛くなっても嫌なので俺は持参した自分の酒を飲んでいる。

「日本って国だよ!」

 言っても解んないだろうけど。

「聞いた事ない」

 でしょうね。

 そりゃそうだ。


 なんで俺達が仲良く座って酒を飲んでるか?

 そりゃぁ、殴り合いで疲れた俺がリュックから酒を出して飲んで、ゴブリン達にも飲ませたら、こいつ等も自分達の酒を持ってきて酒盛りが始まったから。

 別に悪い奴等でもなさそうだ。


「アキラは、人間の癖に変わった奴だな」

 変わった奴と言われたが、近所じゃ変人扱いだったし、そんな扱いには慣れてる。

「俺は、俺だ。

 他人にどう思われたって、俺だから」

「そりゃそうだ、アキラの言う通りだ。

 人間と酒を飲んでる俺達も十分変わってるか?」

「そりゃ、生きてりゃ酒くらい飲まなきゃやってらんないだろ。

 ほらほら、お前等もっと飲め飲め!

 今日は記念すべき俺の異世界転移の初日だからな! 夜通し飲むぞ!」

 俺はゴブリンの肩を抱いて一升瓶を掲げた。

 ゴブリン達の笑い声が広場に広がる。



 思ってたのとは少々違う展開だが、これから先長い人生いろいろあるだろう。

 楽しければ良いじゃないか。

 俺は、楽しむ為に異世界にやってきたのだから!

さあ、頑張っていきましょう!

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