砂漠の王
前作とヒーローの外見が同じだ?
マイブームなので気にしないでください。
その国は砂漠にあった。隣国には豊かな森が広がっているというのに、かの国にはどこまでも広く死の砂漠が広がっていた。
数百年前までは多少なりともまだ緑があったという。だが、今は見渡す限り砂の海だ。
日が高いうちは容赦なく日光が照らし、日が落ちれば氷点下にまで冷え込む。かろうじて残っているオアシスが枯れるのを恐れ、細々と過ごしていた。だがこれはこの国だけではなかった。
かの森の王国の周囲は皆、同じように砂漠化が進んでいたのだ。そして砂漠化が進めば進むほど、森の王国は栄えていく。まるで、森が周囲の緑を奪い取っていくようにすら思えた。
そしてかの王国はますます増長する。先王の時代、王の娘の一人を愛人として召し抱えると一方的に通達されて以来、砂漠の国と森の王国との間は常に緊張状態にあった。なお、通達された王の娘は国のためならばと泣く泣くかの国へと向かい、そして数年後にまるで飽きたおもちゃを捨てるようにして追い出された。
あの森さえなければ、恐ろしい砂漠を生き抜いた屈強な兵士たちがすぐさま国を蹂躙してやるというのに、全く忌ま忌ましいことだった。
だがそれも、二年前までのことだった。
「パスクアル様、やはり国境の変化は確かなようです」
「そうか」
部下の報告に、砂漠の王、パスクアル・ベイティアは少し考えた後にうなずいた。国境の変化。それは一年前から受けていた報告だ。かの国との国境沿いにある砦。そこにはまるで何かで線を引いたかのように、かの国とこの国との間に砂漠と緑というはっきりとしたラインが敷かれていた。
だがそれが、一年前唐突に破られたのだ。まるで森から緑があふれるように気が付けばこちら側に木々があふれ出ていたという。何かの前兆かと思われたそれは、二年経った今、砦が木々に飲み込まれようとしているという。
「どうしますか?」
「実際にオレがこの目で確認しよう」
砂漠の王はそう言って王座から立ち上がった。部下たちの視線が自然に上に上がる。部下が膝をついているということもあるが、砂漠の王自身がかなりの長身なのだ。
砂漠の民は褐色の肌に赤い髪を持っている者が多い。もちろん黒や茶の髪の者もいるが、多くはその色だった。そして男女ともに砂漠を生き抜くための屈強な肉体を持っている。
王もまた、その例にもれず浅黒い肌に赤い髪、そして金の瞳を持った屈強な男であった。その容貌は整ってはいたが、目つきは鋭く、どちらかと言えば恐ろしい印象が先立っている。
もちろん決して見掛け倒しではない。砂漠の王は、剣の腕も魔術の腕も諸外国に名をとどろかすほどの実力者だった。砂漠の国の王は血筋だけでは決まらない。実力をもって勝ち取るものだからだ。
だがそれが、森の国からは蛮族と嘲笑される所以であったが、砂漠の民もまた森の乙女との誓約のために、血族に縋り付くしかない腰抜けの集団と嘲笑していた。