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砂漠の王と森の聖女  作者: れん
12/18

side 森の乙女4

今回は短めです

 パスクアルと番になった。

 申し込んだのは私からで、手合わせをするのかとワクワクしていたけれど、結局手合わせはしなかった。


「お前では俺に勝てん」


 真っ向からそう決めつけられてむっとしたので、いつか絶対に倒してやろうと思う。


「パスクアル、様」

「言いなれないのなら様をつける必要はない」


 最初に名を教えられたこともあったせいか、どうにもパスクアルに「様」をつけるのは苦手だった。だから本人がそう言ってくれるのはありがたかった。


「お前、番になったら何をするのかわかっているのか?」

「わかってる。春になると交尾をして、夏になると雌は子を産む」


 精霊や妖精に雌雄はないが、森の動物にはある。それくらいの知識はある。と、リリアーナがパスクアルを少しだけ睨みつけると、なんだか生ぬるい視線を向けられてしまった。


「いや、人間は季節はあまり関係ないんだが」

「……交尾する?」


 そうか、獣と人は違うのか。と、リリアーナは頷いてパスクアルを見上げた。パスクアルは左手で顔を覆ってしまった。


「ベニータ! 貴様リリアーナの情操教育はどうなってるんだ!」


 パスクアルが部屋の外に向かって叫ぶと、ベニータが飛び込んでいた。


「やったよ! アタイたちはちゃんとやったよ! なんなら姐さんたちも頑張ったよ! でもどうやっても獣思考が消えないんだよ!!」


 パスクアルの叫びに負けじとベニータが叫ぶ。そんな二人の言い争いをリリアーナは不思議そうに見ている。


「もう、いいじゃないか、パスクアル様。いっそパスクアル様の好みに育てればいいじゃないか」


 そう言って首を振るベニータに、パスクアルは頭を抱える。

 言いたいことだけ言ってさっさと部屋を出て行ったベニータは、去り際に「パスクアル様にかわいがってもらいな!」と、リリアーナに発破をかけていくのを忘れなかった。


「うん、頑張る」


 ベニータにそう言うリリアーナはほぼ間違いなく何を頑張るかわかっていないだろう。


「パスクアル、私頑張って可愛がられて、いっぱい子を産むね!」


 そうじゃない。と、はっきり言えない意外な繊細さを持っていた男は、その日から同じ寝室になったというのに、ただ同衾するだけで済ませていたという。




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