英雄の力に目覚める
Долгое время нет!
何故か夏休みなのに投稿ペースが落ちてるカトユーです。とりあえず、今回は長めの話にしてみました。(内容が濃いとは言っていない)
「それでは、ただいまより神のお告げをお聞きいたしましょう。」
派手な装飾に包まれた、おっさんが神官のようで、その一声で自分の周りは純白の光に包まれた。あまりの輝きに目をつむり、次に目を開けた時は何もない白い空間に浮いていた。
「カサイ」
「は、はい!」
咄嗟に返事をしたが今の声は何なんだ?ロボットのような無機質な声が聞こえてきた。
というか、シルフィさん?言ってたことと全然違うんですけど?
「とりあえず、そなたにステータスを見せよう。」
そんな自分の心境を無視して話は進んでいく。いやいや、何で何にもないはずの空間からフワッとカードが出てくるの?驚きつつ、ステータスの載っているカードを見て、もう一度驚いてしまった。
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名前 カサイ Lv.1
職業 英雄 伝説の勇者 戦士 剣士
ランク S
体力 1580
魔力 610
能力 A
スキル
・全てを切り裂く一振り
・限界突破(全ステータス三倍)
・最強のリーダー(パーティーメンバーの体力と 魔力が常に二倍)
・火力バカ(魔力が大幅ダウン及び魔法がほぼ無効)
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うーむ、よくわからん!
ただ、最後はバカにされてることはよくわかった!言い換えればただの脳筋だろ。
「カサイよ。我からの願いはただ一つ。魔王から人々を救ってくれ。」
そう言われると同時に、さっきの部屋へと戻った。
「では、カサイ殿。ステータスを見せてもらえるかな?」
そう言われたので、ステータスを見せるとハープスブルク王は驚きを隠せないでいた。
「なんじゃ、このステータスは!Lv.1でこれほどのステータスの者はなかなかいないぞ!それに、称号も伝説の勇者に英雄。すごいじゃないか!」
お?結構良さげなステータスなの?よかったー、これで低くて見捨てられたらたまったもんじゃないよ。
でも、スキルのとこスルーしたでしょ。
「カサイさん!私にも見せてもらっていいですか?」
お父さんが興奮するのを見て気になったであろうシルフィが見に来た。
「もちろん。どうぞ。」
そう言って、真剣な表情でステータスカードを見る。そして、ステータスカードを持っている手が震え始める。
ばっと顔をあげると、
「すごいです!今の時点で能力がAなら努力すればSSSだって夢じゃないですよ!」
努力すれば、か。どうしよ、努力が一番苦手なんだけど。
「それに、スキルだって充実してじゃないですか!」
お、スキルも見てくれたのか。
「最後の火力バカ?についてはよくわかりませんが、最強のリーダーなんてまさに勇者にふさわしいスキルですよ!これで勇者パーティーは無敵ですね!」
そう言われると、恥ずかしいな。でも、このステータスってチートだよね。特に火力バカなんて裏を返せば、魔法が効かないってことだろ!
ステータスに大喜びしている自分に、早速王様が剣の練習をするように言ってきた。
「カサイ殿、とりあえず[全てを切り裂く一振り]を試してもらい。そこでだ、我が一族には勇者のための聖剣がある。それをカサイ殿に預ける。ついてきてくれ。」
そう言って、ハープスブルク王と自分、シルフィのみの三人で移動した。
「カサイ殿、ここから向かうのは我が一族の宝物が全て置いてある宝物庫に向かっておる。そこには、強大な力を持つ魔道具などもあり存在自体を秘密にしているような物がたくさんある。それ故、この場所は秘密にしてもらいたい。」
ほおー!そういうとこって、レアな物がいっぱいあるよね。防具とかももらえたりするのかな!
ところが着いたのは簡素な扉の前だった。あっれー、おっかしいぞー。
若干落胆していると、ハープスブルク王が扉に手をかざした。すると、扉が青白く光って巨大な魔方陣が現れた。自分が初めて見る魔方陣に驚いていたが、ハープスブルク王は気にせず扉を開け部屋の中へと入っていった。部屋の中は通路になっており、ハープスブルク王を先頭に前へと進んでいった。
「さっきの魔方陣は何なの?」
「あれは、宝物庫のロックを解除する魔方陣で、当代の王しか使えません。」
気になったのでシルフィに聞くと、あの魔方陣は初代の王が自ら作ったものだという。そして、あの魔法の解除は代々受け継いでいて、その魔法以外では決して開かないそうだ。
扉の魔方陣について話を聞いているうちに通路を抜けて、円形の部屋に入った。
「凄いな······」
入った部屋はバスケコート一面分の広さがあり天井までは十メートル以上あるだろう。そして何より気になるのは、壁一面の引き出しだ。
部屋の様子に驚いていると、ハープスブルク王は無数にある引き出しから、迷わず進んである一つの引き出しの前に止まり、こっちを向いた。
「カサイ殿、この引き出しを開けてみてくれ。」
ハープスブルク王の前には、まわりと変わらない引き出しがあった。
「どうしてですか?」
「ここに、聖剣がある。そして、この引き出しは勇者と認められた者にしか開けることはできぬのだ。」
そういうことか。逆に言えば、ここで開けなかったら勇者ではないということになるのか。······絶対開いて下さい!
心のなかでバッドエンドを想像してしまったが、とりあえず引いてみた。
スーッと意図も簡単に開いてしまった。もっと、派手な演出がよかったなーと思っていると、ハープスブルク王が唖然としていた。どうしたんだと思っていると、
「今まで誰も開けたことがなかったのに、こんな簡単に開いてしまうとは!」
いやいや、あなたが勇者として召喚したんでしょ。勇者かどうか疑われていたことに驚いた。
しかし、そんなことを気にもならないほど存在感があるのが目の前の聖剣だった。いくら王といえども聖剣の存在は伝説上の物で誰も見たことが無いらしく、
「ほーう、これが聖剣なのか······」
と呟いていた。
一声で言うと、カッコいい。それに尽きる。刀とは違い、ずっしりとした重みを感じる見た目だが、華々しい装飾等は一切なく、実用性のみを追求したデザインだった。
恐る恐る手に取ってみると、思った通り重くて両手で持たないと支えられなかった。しかし、思いの外グリップはよくて、手に馴染んでいる気がした。
そして、頭の中にこいつの真名が入ってきた。なんか、もともと知っていたかのように記憶にあるのは、「❰神剣❱ティルヴィング」だった。エクスカリバーではないのか、まあもとはアーサー王伝説に出てくる剣なんだけどね。
これは、北欧神話かな。それぐらいしか思い出せんけど。
「ティルヴィングか。」
なんとなく呟いてみたら、突然金色の光に包まれた。
「「「うわっ」」」
突然のことにみんなが驚いていると、やがて輝きが失せて、目の前に金色に輝く剣があった。あれ、これはパワーアップしちゃったパターン?だって、さっきまでシンプルなデザインの剣が真名を呟いて、輝く剣になったんだよ!きっとなんかあるよね!
剣を見ると、グリップ部分にはドラゴンらしきものが二つ描かれていた。ガードにはよくわからない文字が並んでいた。あと、なんかオーラを感じる。
「た、試しに振ってもらえぬか?」
ハープスブルク王に言われたので、上から下へと軽く振ってみる。すると、ブオンッと音と共に旋風が起きた。
え?
「きゃあっ!」
「ぐふぅ!」
あ、やっべ。なんか二人を吹き飛ばしちゃったわ。
「カサイ殿、なんじゃその力は?」
飛ばされたがしっかり受け身の姿勢をとれたのか、ハープスブルク王は何事もなかったかのように立ち上がった。あのー、この攻撃を受けて無傷な王様って何?
「いえ!軽く振ったはずなんですけど······」
「何!それでは、スキルを使ったらどうなってしまうのだ!?」
どうなるもこうなるも今よりもっと強い一撃が繰り出されるんだろ。
「うむ、思った以上に強力な力であるな。しかし、その力が未知数では困るな。」
そういうと、ハープスブルク王は少し考えた素振りを見せたあと、何故か邪悪な笑みを浮かべて、
「カサイ殿にちょうど良い相手がいるのだ。一回、手合わせしてもらってはどうだろう?」
なるほど、それなら対戦相手との勝負結果でどのくらいのレベルか図れるだろう。
「いいですけど、その相手とは?」
そう聞くと、ハープスブルク王はとびっきりの笑顔で、
「エンゼラント王国王宮騎士団団長だ!」
と言ってきた。団長のところに話にいくと言うので、自分達もハープスブルク王と一緒に宝物庫をあとにした。
よろしければ、評価をば。
m(_ _)m