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【Saga Frontier】 ver_0.01  作者: へるぷみ~
【フェーズ1】年下先輩はジーニアス
3/36

どうして朝っぱらからゲームが出来るんですか?

後々触れることになりますが、ちょっとややこしいので先に情報の開示をば。ノアは天岩戸生まれの天岩戸育ちの日本人です。ただ母が純イギリス人で父がロシアと日本のハーフです。つまるところノアは純イギリス人のハーフで、日本人とロシア人のクォーターということですね。

天然の遺伝子改良は神の気紛れを生み出す……が?

 夏である。

 7/21(土)、日照降雨風雷その他自然現象というものから隔離された天岩戸は、暑いから学習を中断するという名目で導入された夏季休講に意味なんて存在しないというのに、上でやってんだからしょうがねぇだろ一応ここは日本なんだから、とかいう異常の中に正常を持ち込もうとする異常によって、私が所属する高天原学園もまた夏休みに入ったのは昨日の7/20(金)と記憶に新しい。

 とはいえ名目上の夏休みだ、学園での講義は行われないけれど、毎週提出しなければならない夏休みの宿題(講義課題)があるのでのんべんだらりと出来るわけではない。あと部活は普通にあるので、()()部長に目を付けられないためと、腕を鈍らせないためと、お祖父ちゃんの「今日は行かないのか?」という視線が胸突き刺してくるため、適度に出る必要がある。部活に関しては最近だと祖父孝行が主立ってきてる気もするんだけど……それは気にしないことにしよう。

「日課も終わり……っと」

 健康的な生活を義務付けられてるわけではないが、やりたいことをやる一番の方法は夜はやること無くなったらさっさか寝て、朝になったらさっさか起きることである。人これを早起きは三文の徳と言う。

 とりあえず一番集中できる早朝に課題の一つを終わらせ提出そうしんし、脳が覚醒してきたところで体型と運動能力の維持のためにしている日課《ランニングと柔軟》を済ませてしまう。

「おぉノア、Доброеутро(おはよう)

Доброеутро(おはよう)お祖父ちゃん」

 帰宅した私を出迎えたのは祖父だった。未だ視力2.0(自称)を保っているらしいこの人は、背筋も曲げずに視線の高さに展開している仮想液晶スクリーンを正面に見据えながら、すり足をして腕を振るっていた。

「私先にシャワー浴びるよー」

「そうか、ゆっくりしてきなさい。二人もまだ起きてきていないし、朝食までには時間があるだろう」

「あれ、二人ってことはお祖母ちゃんは……?」

「……работа(仕事)

 あー……

「またですか……」

 祖母が何をしてるかの詳細は知らない。ただあの人が俗にいうワーカーホリックというやつであることは知っている。一週間家に帰ってこないことはザラだし、家に帰ってきても家に2日以上滞在しているのを見たことがない。公と私の比率が9:1ぐらいの生き方をしている人だった。唯一祖母の詳細を知っているのが父さんなんだけど、実の母であり上司である祖母にあれこれ言うのは難しいようだった。

одинокий(さびしいのぅ)……」

「あ、あはは……。お先入りまーす」

 気持ち肩を落としてしまった祖父を尻目に、私は自室から着替えを引っ掴んで浴室へと逃げ込んだ。


「あー、そろそろ髪切らなきゃダメかな」

 鏡に映る私の姿を見つつ、伸びてきた髪を摘む。さすがに昔みたいにここまで髪が伸びていても変だのなんだのを言ってくる人は減ったけれど、どうにもその時の視線や言葉、空気が体に染み付いてしまって伸ばすという事自体に気後れしてしまっている自分がいた。それに住めば都……とはちょっと違うけど、何年も同じ髪型を続けているとそれに慣れてきてしまって変化させようという気持ちも湧いてこなかった。だけど一番の理由は、奇異の目をこれ以上惹かないで済む、というのが大きいのかもしれない。

「ハサミは……あー、そういえば万彩ばんさいに頼まれてたんだっけ……」

 湿気らせた髪を適当に切ってしまおうとハサミを探し始めたところで、級友の一人に土下座をされたことを思い出していた。あの時は万彩のお家芸ともいえる泣き落としならぬ()()()()()をされ、呆気に取られて承諾してしまったのだ。

 まぁ彼には手入れ道具とか技術とかを色々と融通して貰ってるから日頃の感謝と思えばいいだろう。

「よし、ばっちし」

 汗を流し、手入れも終わり。着替えも終了。

 そろそろ二人も起きてくる頃合いだし、今から朝食を作り始めればちょうど良さそうだ。


 仲良く起床してきた父母と祖父、私は食卓を囲んで朝食を摂る。これが朝の風景であり、時々祖母が混ざるというのがパターンだった。

 パンにソテーした魚の切り身、野菜のスープに栄養調整飲料(白)を残らず平らげれば、日常の始まりである。

「さーて、今日こそ2時間切りを目指すぞー。前回のガバさえどうにかすれば記録更新は確実だー」

「アナタ前回のガバって肝心なところでアイテムチェックを怠ったのが原因じゃない。誰に何を持たせたのかぐらい覚えてないと、()()轍を踏んじゃうわよ?」

「おいおい母さん、それを言うなら二の舞を演じる、もしくは同じ轍を踏む、だろう?」

「あら、そうだった? 日本語って複雑ねーうふふー」

「あははー」

 腹ごなしにと言わんばかりにRTA(ゲーム)を始めた父に、それに付き添うように手には携帯ゲーム機を握った母。土曜のというか、休日は基本ゲーム三昧な二人である。

「ちょっと出てくるな。お昼には戻ってこられると思う」

「あ、うん、いってらっしゃい」

 祖父はそう告げて家を出た。行き先は……尋ねなくてもわかるしいいか。

「それじゃあ私も、ゲームをしましょうかね」

 昨日はお預けを喰らったゲームをすべく、私は自室へと足を向けた。

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