モンスターは獣を襲わない
2019/07/20 大幅な改稿を行いました
「無事かどうかはわかりませんけど、武器手に入りましたね」
「うん。……そういえば、アリクイは一度も口出ししてくることなかったけど、何かあったの?」
「ああいう職人な人っていうのは、余人が関わると話がややこしくなるんですよ。身内ならともかく、赤の他人が口出ししようものなら本当に武器を売ってくれなくなる可能性がありましたから。それに自分の命を預けるものを選ぶんです、誰かの意見じゃなくて自分の意思で選べばそこに後悔は生まれないでしょう?」
「それは……そうかもだけど」
「さてシノ、全財産を叩いたからには今日泊まれる筈の宿代も無くなりました!」
そう、宿の個室を借りれる時間は24時間。夜ぐらいに借りたとはいえ夜になったら追い出される。つまりその時間までに最低限もう一泊できるだけのお金を稼ぐ必要がある。
「そしてシノ今のシノには武器があります」
腰に帯びた銃に触れば、冷たい重みが伝わってくる。
選択肢は2つ。外に出るか、出ないか。
野垂れ死になんて選択肢は存在しない。
そしてこうも誘ってくれている彼女に対し、今の私は応えることができる。
「……アリクイ、私とパーティーを組んでくれる?」
「はい、喜んで!」
街の外から中へと入った経験はあったけど、中から外に出るのはこれが初めてだった。
街の石壁に目を奪われたのと荷物を運んでたこともあって周囲を確認するだけの余裕はなかったけれど、街の周辺は草原、そのさらに周辺は森に囲まれているというのがここの特徴らしい。見渡せば草と木だ。
整形された石を敷き詰めて舗装された道は森の奥へと続いている。この道がどこに繋がっているのかはわからないけれど、荷馬車を操る人たちはそのどこかから来ているんだろう。
「なんていうか、想像以上に色んなのがいるけど」
「あー、モンスターとか獣がですか?」
そう、驚くべきことは草原ゆえに見晴らしがよく、そして草を喰む草食動物、私の知ってる虫とはスケールの違う虫、遠目では全裸の子供にしかみえないガブリンが目に映ることだった。
「肉食系の獣は森に潜んでるのがほとんどで、時折草食系の獣を狩りに森から出てくることがあるそうです。で、なぜかモンスターは人間しか襲わない。獣にとってモンスターは基本的に害が無いからまったく意に介していないんだそうです。だからぱっと見ると歪な生態系になっちゃってるんですよねー」
モンスターは人間しか襲わないねぇ……
「それで、狩りをするにしてもどうするの?」
「そうですねー、草食系の獣は現実と同じで警戒心が高く、健脚ですから無理に狙うのはやめたほうがいいと思います。シノの銃で試すっていうなら構いませんけど?」
「それはおいおいにする」
「となれば、モンスターを倒して結晶集めをしましょう。あそこに見える大きい虫とか、まぁ明らかに普通じゃないでしょ、っていう生物やこっち見て真っ直ぐに襲いかかってきたのは基本モンスターですので。ちなみに派手にやると周囲のモンスターはどんどん寄ってくるので気をつけてくださいネ?」
やめてよ、それ私の放った流れ弾が別のモンスターに当たって連戦になるみたいなフラグを立てるのは……
「ちなみにお聞きしたいんですけど、シノの腕は? わざわざ選んだってことは扱い慣れてるってことですよね?」
「他人と比べたこと無いけど……それなりには。あとはこの銃の癖次第かなぁ」
口径こそ一般的な拳銃のものだが、銃のサイズは大型に属している。反動とかブレもわからないから、撃って慣れるまでには時間が掛かりそうだ。
「じゃあ最初は慣らし目的でガブリンでもいきましょう」
「ん、わかった」




