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【Saga Frontier】 ver_0.01  作者: へるぷみ~
【フェーズ1】年下先輩はジーニアス
19/36

Let's、6,6タイム!

天岩戸では0時を境に6時間の消灯時間になる。公共施設その他の電力供給が最低限になり、街の明かりは一斉に消える。申請を出せば消灯されない場所もあるが、天岩戸は実質的に6時間の間灯りの一切が消える。

6,6タイムは【Saga Frontier】において消灯6時間の間に突入する時間である。端的に説明すれば現実時間の6時間の間、ゲームを行っているテスターの体感時間が6日と6時間になるというもの。分にして9000分。こうすることで【Saga Frontier】内の時間は現実時間の1日で1週間経過することになる。

6,6タイム中にログアウトした場合、ゲーム時間で6時間を超えた時点で消灯時刻を超えたものとして現実時間午前6時に起床する。それ未満であればゲーム内滞在時間と同時間後に起床する。

逆にログインの際には現実時間×25分にスタートする。午前1時にログインすればゲーム内では25時間経過したところでスタートする。この時空腹や喉の渇きがほぼ最低値なので安全に食料確保出来る状態を作っておかないと危険。

じゃあ6時間以内に一回ログアウトしてもう一回ログインしたらどうなるの? という疑問に際し、6,6タイム中に一度でもログアウトするとログイン制限が掛かるので、現実時間午前6時を超えないと制限は解除されない。

 今、私を邪魔するものは何も無い。あるとすれば時間。

「……お腹が空いたな?」

 今日の夕食はブイヤベースだったことを覚えている。ブイヤベース憲章は満たせてないが、マルセイユじゃないのでノーカン。正確に言ってほしいならブイヤベース風スープ。

 だが問題はそこじゃない、ゲームの中で数時間ぶりにベッドから起き上がった私は空腹を覚えていた。あと喉も乾く。これはさすがにおかしい。

「…………現実とほとんど変わらないってことは、シノシノでお腹は空くし喉は乾くのか」

 そう考えてみればまったくこの空腹に違和感が無くなった。というか昼夕と食べてないって意識した途端に早くメシを寄越せと私の胃が叛逆を起こそうと蠢き始めた。

 この空腹感をどうにかせねばと部屋を出て階段を下りれば夕食時だからかテーブル席のほとんどは顔を赤らめ手には木製ジョッキ、なみなみ注がれた液体を呷って騒ぐ客大勢。彼らを尻目に空いていたカウンターの席へ座って店主に鍵を提示する。それが食事を摂るというサインであり、ちらりとこちらを一瞥した彼は雪崩のように押し寄せる注文――主にアルコール臭のする液体――を捌きつつ、忙しなくオーダーを告げる給仕の女性がカウンターに置かれる料理飲み物を両腕一杯に抱えて運んでいく。

「先がけ一杯」

「あ、どうも」

 目の前に置かれたのは周囲の人たちと同じ木製ジョッキ。

 口に含み――

「んんっ、げほっごほっ!?」

 鼻を抜けるパンの香りがしたかと思った瞬間、アルコールでむせた。

「ビールはまだ早かったみたいだな」

「ビール!?」

 確かに麦から作ったという点ではパンもビールも同じだけど、これなんていうかパンを水に溶かした飲み物って感じでしたけど!?

「無理に飲むな、代わりにこっちだ」

 いや一口飲んだ時点でやめようとか思ってたのでいいんですど……

「一応聞きたいんですが、こっちは?」

 まだまだビールの残ったジョッキを回収した店主は別のジョッキを出した。私の残したビールを呷って口元を拭った彼は一言、

「ミードだ」

 とだけ告げて料理へと戻ってしまう。

「ミード……」

 ジョッキを覗き込む。木の色と薄暗い照明で色はわかりにくい。ただパンの匂いはしないのは確かだ。

 いざ。

「ん……おいしい」

 一口目で感じたのは甘み。ついでほのかなアルコール。お酒なのは変わらないんですね……。ただ、さっきのビールに比べれば遥かに飲みやすかった。

「気に入って頂けたようで」

「おいしいです」

「ビールも慣れれば美味いからまたチャレンジしてくれ。ほれ」

「おぉ……!」

 料理が並べられる。大きな木のお皿には骨付き肉、火の通った野菜、切り分けられたパン。そして臓物を煮込んだと思しきものが底の深い器に入っている。

「いただきます」


「おいしかった……」

 独特の風味をした肉は天岩戸じゃ滅多に食べれない牛肉のステーキや羊肉を思い出させる食べごたえであった。大味であったがそれが旨さを引き出している。

 ミードもアルコールが入ってるから飲むのは良くないとわかってるんだけど、飲みやすいし味の強いものを食べたらまた飲みたくなってと止まらなかった。店主も一杯飲み終えたらすぐにもう一杯出して「おまけだぞ?」とか言われてしまえば飲まざるおえなかった。へへへ本当仕方がなかったんですよ。

「しかし飲みすぎた、かも……」

 2杯とはいえ、ジョッキになみなみ注がれたお酒を飲んだからか、めっちゃ顔が熱い。頭もちょっとボヤケている。そして眠い。

「うーん……」

 このまま外に出るのも、と思い部屋へと戻りベッドに倒れ込む。

 はふ……

 あダメだこれは……

 寝よう……


『現実時間0時0分0秒を過ぎました』

『天岩戸における消灯時間に入ります』

『6,6タイムに突入しました』

『テスターの皆様、点灯時間までの6時間……』

『6日6時間の間、この世界をどうぞご堪能ください』


「むにゃ……すやぁ……」

お酒は二十歳になってから。いいね?

お酒に関するアレコレは別にお酒得意なタイプじゃないし舌によって意見が様々です。ちなみにシノ(ここ重要)はお酒少し強めですが初心者なので上手な酔い方と飲み加減が下手ですね。食べてはいますが水とかほとんど飲んでないので、水分ほとんど摂ってませんし。

ビールは現在主流の炭酸が入った(または抜いてない)ものじゃないです。調べれば出てくる「飲むパン」というのがしっくりくるお酒。

ミードはみんな大好き(偏見)蜂蜜のお酒ですね。こいつに関しては蜂蜜に水で発酵させたもの。地域によったりで他にも香草とか入れてるとこもあります。


余談だが、初日に6,6タイムの存在に気づかず消灯時間前にログアウトし、翌日にログインしたら6日と数時間飛んでいて餓死したり宿の外に放り投げられていたり身ぐるみ全部剥がれてたり市民権を剥奪されてたり体の部位が欠損していたり生贄として吊られてたり××されてたりとテスターの大半を初見殺しして天岩戸限定SNSを大いに炎上させた。(なお作った会社への連絡先に文字の羅列を送りつけたらダエモンさんが一通一通丁寧に返してきたことで不満の捌け口がSNS上にしか無くなったのも火の手が大きくなる要因だった)

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