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【Saga Frontier】 ver_0.01  作者: へるぷみ~
【フェーズ1】年下先輩はジーニアス
16/36

拡張された現実に弾丸をぶっ放せ

エネミ――!」

「正中ッ!」

()――!?」

 人間の肉体というのは腕よりも脚の方が力が強いというのは想像するのに難くなくない。立つのは苦でもないのに、逆立ちが辛いのはそういうことだ。

 あと足の指じゃ引き金引けないから足癖が悪くなるのは多少はね?

 防弾チョッキは弾丸による肉体の損傷から身を守るが、物理エネルギーを完全に消せるわけじゃない。押し込まれた際の衝撃はあるし、当たりどころが悪ければ骨折だってする。

 大事なのは怯ませるということ。それが悶絶する程の威力でなくとも、強制的に吐き出され乱された呼吸は軽いパニックを起こさせるには十分だ。

「一つ!」

 兵士の格好をした仮想敵の喉元、顎に一発。虚を空けて死亡判定を受けた兵士が砂のように無数のポリゴンになって溶けていく。無論最後まで眺めている時間はない。状況は既に動いており、今の発砲音によって近くにいた他の兵士たちは周辺の警戒をしている。

 腰を低くし家屋の壁を走り、

「て」

「二つ!」

 角で出会した一人の隠れていない鼻先に風穴を開ける。

 足を止めずに崩れる粒子を浴びながら、残弾を頭の中で数えて壁があった家に侵入。

 クリアリング。次。

 AR射撃は体力を必要とするが、それ以上に求められるのは精神力だ。集中力と言い換えても良い。故に重要なのは時間。

 15人の標的を30分以内に殲滅する際の一人あたりの時間は2分。キリキリ行かないと時間切れはすぐそこだ。

「スリーマンセル……」

 少々開けた場所に3人が陣取っていた。互いに死角を潰しているからどこから攻め込んでも速やかな発見と対処がされる。となれば……

 持ち込むことこそ出来ないが倒した兵士は携行していた武器を落とす。大体はアサルトライフルや予備マガジンだが今回のような複数の敵を相手することを想定してるなら……手榴弾だって落ちている。

 ピンを外して1秒調整、投擲――3秒、3人の中心へと落ち。

「手榴弾!!」

 一人は飛来した物体を見逃さず、一人は何かが背後に落ちた音に反応し、一人は仲間の声に仰向けになって前方へ向かって飛び――5秒、起爆。

 背にしていた壁面を伝って炸裂音、壁が剥がれる音、砂埃が舞う。破片が隣家の壁面に刺さったのを確認したのと同時に突入。一人は投げ返そうとした最中に起爆しからか既に肉体を崩し始めており、一人は背を向けているものの背に無数の破片が突き刺さり背中からポリゴンが溢れて消えていく。残る一人だけがほぼ無傷。

「3、4……5!」

 狙うはまだ体勢を整えきれていない一人。馬乗りになって起き上がりを阻止し、頭を掴んで地面と接吻してもらおう。そして覗くうなじに向かって銃口定めて引き金を絞る。

 残り10人。

 巻きで行こう。


 ツーマンセルで室内にいた二人は背後から一人を投げてもう一人にぶつけて転倒、開いた口とヘルメットが外れてむき出しになった脳天を撃ち抜いて6、7人目。ここでリロード。

 音に引き寄せられたのか様子見に来た一人を対処している最中に共に行動していた一人が合流。最初の一人を盾にしつつそいつの持っていたアサルトライフルで二人は蜂の巣になった。8、9。

 二組のツーマンセルはスタングレネードと手榴弾を併用、仕留めきれなかった三人の一人は横っ面に膝を叩き込み、二人は眼房の風通りが良くなった。10、11、12、13。


「残り一人は狙撃手として、もう一人は護衛にでもついてる? いやそれはありえない」

 ここでわかったことは、最初に私を狙撃した相手は作戦範囲外からの狙撃であり、私がその最後の一人の懐へと潜り込むことは叶わないということ。じゃあ残り一人が今更のこのことどこかで彷徨っているというのはおかしい筈なんだけど。

「なっ――!?」

 どこにいるのかと身を捩った瞬間、私の頬にチリと音を立てて、細く赤いテクスチャが肌の上から上書きされる。それは最初と同じ、だけど場所が明らかに違う。ってことは二人目の狙撃手?

「ッッッ」

 考えるのは後、まずは北と西からの狙撃を避けるべく住居に避難。

 十字配置の狙撃とかお祖父様今回は殺意が高すぎでは?

「北には行けないでも……」

 荒れた室内に散乱したガラス片を窓から晒し――

「っ!」

 一瞬反射した発火炎マズルフラッシュから一拍おいてガラス片が砕け散った。

 目に入ったわけじゃないけど、空気中に散ったポリゴンの光に目が奪われた。

 しかしそれでわかった、西の狙撃手の位置は作戦範囲内の距離にいる。

「つまり西から狙撃銃を奪えってことね……」

 なんとなく、どうして今回のAR射撃がこんなに難易度の高いものなのかはわかった。というか最後の瞬間のためだけに今回のお膳立て(ミッション)を設定したってこと? さすが何日も同じ場所でスコープ覗くお仕事をしていただけはありますよあのお祖父様……

「となればまずはどうやって西の狙撃手に肉薄するか……」

 今の私の位置は大体北東あたり。そこへ西からの狙撃が可能ということは、ほぼ中央の大通りにさえ身を出さなければ撃ってこない北の狙撃手と違って西は広い視野で狙ってくる。

 最初の難関は家から出ることか……

 身を晒さないように家の中を移動しつつ、射線を限らせるために北上。作戦範囲内と外を隔てる外壁を盾にすれば北からの狙撃は防げるとしてそこから西に移動しよう。

「使う場面が無いから残してたけど、スモークグレネードはこの為にあったわけだ」

 チャンスは一度きり。煙を焚く場所を間違えれば影から身を出した瞬間に終了することは前提として……放り込む場所は遮蔽物の一切ない中央大通りしかない。

「ふー……」

 残り時間は10分は切ったところか。集団で固まっていたおかげで時間には余裕が出来ている。

 集中は……大丈夫、正直さっきので一気にキマった。


 駆けろ――

「っ」

 足を止めるな――

「っっ」

 タイミングを誤るな――

「ッッッ!!」

 勝負は一瞬、隠れていた家屋で唯一無事だった最後のガラス窓をぶち破り、砕け散ったガラス片たちと共に私は飛んだ。

 着地の衝撃を全身で逃し、勢い殺さず前転。立ち上がって走り出したのと同時に私の踵後方に弾痕が穿たれる。

 スモークグレネードのピンを外し投擲。煙が十分に広がるまでに確実に次射を避ける。

 光っ――

「ぬぁ!」

 作戦範囲の境、その外壁に向かって跳躍。壁を蹴り、前に向かって進んでいく。肩に赤いテクスチャが上書きされたが行動不能になるものじゃない。

 十分に広がった煙へ突入し、ひたすらまっすぐ駆け抜ける。

 煙を抜けたのと頭上を亜音速の物体が駆け抜けたのは同タイミング。最後のデッドゾーンを私は抜けた。


 ここまでくれば最初にして最後の敵、北の狙撃手のみ。距離を詰められた狙撃手は銃剣突撃をしてきたが、突き出してきた一突きを蹴り弾いて頭部に2発の穴が開いた。

 拾った狙撃銃に残された弾は1発。これを外せば私に北の狙撃手をどうにかする手段は無くなり、時間切れか死亡判定を受けるかである。

「………………いた」

 取り外したスコープを覗いて狙撃手の位置を特定。場所は動いておらず、完全な固定砲台としてあそこに居座っている状況だ。動かない的であることに変わりはないが、ライフル射撃の50mとは比べ物にならない距離だ。ほぼキロとか神業ですよ?

「ふー…………」

 姿勢は最も安定と慣れのある伏射。大丈夫、相手はこちらに銃口を向けていない。一発で決まる場面、当てても外してもその一発で全ては終わる。

「はー…………」

 一発で確実に殺す方法は2つ。脳か心臓か。ただし心臓は相手が伏射姿勢でありこちらよりも高い位置であるため射角的に絶望。よって消去法で頭。

 狙撃手の表情をその目に刻み――


「すー……」


「はー……」


 引き金を引いた。

銃の名称を明記していないのは単にこの部分のお話に関して色々と悩んでるところがあるからです。あと実在の銃を出しても発砲エアプ勢の私ではその銃の特徴や癖を知りません。一応ハンドガンの装填数は9~10発――これは先込め分も含めて――ぐらい、手榴弾関連はピンを抜いて安全装置から手を放して5秒後に起爆を基準にはしました。狙撃部分とか戦闘部分に関しては「いやこれ15(ほぼ16)の出来る技術と身のこなしじゃないだろ」というのが書いてる筆者本人のツッコミどころさんですが、天岩戸という特殊環境下でほぼ日常的に行ってきたAR射撃などという兵士育成プログラムを経験してれば出来なくはない、という設定としました。萎えさせたらスマン。でもこれファンタジー混じりのリアルなので……という感じの裏話でした。薄味の戦闘シーンばっかだけど一撃必殺というか人は銃弾に直撃したら死ぬんだよぉ!なのであっさり目に感じることにご了承ください。

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