ログアウトの条件を満たしたようなので
宿屋には当然だがグレードが存在する。グレードが高いほど宿泊費は高くなるが、それは宿泊費が高い=グレードが高いという訳ではない。グレードの高い宿であるほど部屋前にガードマンがいたりサービスが良かったりするため、危険は少なく肉体や精神の疲労を回復させるのに適していく。対してグレードが低い場合、複数の宿泊者と同衾することになる、個室に鍵が存在しないので侵入自由、飯がマズい、ベッドがボロい、馬小屋、などなど危険が伴ったり不衛生だったり逆に疲れるなどの不都合も発生するので、宿選びは非常に重要な事項である。最低条件の見分け方はキレイで、値段が(周囲の宿の中で)それなり以上で、個室で、鍵をかけられる、というのがわかれば大体大丈夫である。あとは店主の人となりを信頼できれば大体言うことなし。なお本編では――
『ログアウト条件を満たしました』
「んぁ!?」
さっそく宿屋で部屋を借り、部屋鍵で中に入れば突如スクリーンが出現した。
それは一番最初の真っ白な空間で見たものと同じUIであり、違う点を上げるのならば文字を読む声が無いということ。というより、この世界のゲーム的部分に触れていなかったからゲームをしていた意識すら軽く忘れていた。
「そういえば、適切な方法でログアウトをしないとログアウト時の私に色々と不都合が出るみたいなニュアンスだったっけ」
つまり今の状況がログアウトするために適切な状態だというわけだ。今までとの違いがあるとすれば宿屋の個室に入ったこと……プライベート空間とかそういう場所にいるからかな。
「あー、だから一泊って表現じゃなくて24時間使えるって言ったのか……」
食事に関しても部屋を借りている時間内であれば3回までなら無料で食べれると言っていた。
今の時刻……は、どれぐらい経ったんだろう。時計は無いし、一応まだお昼すぎてないだろうなぁ、ってことはわかるけど正確には謎。
となれば今は一段落してるし、ログアウトをするのにうってつけの状況であるのだから、ログアウト方法を模索してみてもいいだろう。
「まずは……ログアウト!」
『ログアウトを行いますか?』
模索する必要はまったくなかったですね。
嫌な予感がしたのでベッドに横たわってからログアウトを実行した。
「っ……」
現実からゲームの中へと入った時と同じように。
木目の天井だった筈のそれはなんの前触れもなく無機質な天井へと変化していた。その急激な変化に脳が拒否反応を起こしたのか、小さな頭痛と目眩が襲いかかる。
「今度からは目をつぶるかアイマスクでもした方がいいかも……」
未だに非現実と現実の境界が曖昧な私は、ここは現実であると意識付けるため、部屋の姿見の前に立つ。
「はぁ……」
そして自分の姿を認めて無意識に吐き出されたのは落胆だった。
いやいや、でもあの世界に戻れば私はあの姿になれるのだ、だったら落ち込む必要はない。私の理想は、私の手の届く位置にもうある。
時間を確認してみれば、正午前。かれこれ2~3時間はゲームをしていた。意識は連続しているけれど、肉体は寝たきりだったからかちょっと気怠さを纏っている。そして空腹感も。
「軽くストレッチしてからお昼にしよ」
今日のお昼はそうめん。夏の風物詩の料理。錦糸卵、おろし生姜、ハム……は難しいので鶏のつみれ、焼きなす。
「さぁてお次は母さん?」
「最高難易度無強化ノーコンティニューに挑戦かしらね~」
「じゃあボクはバグ有りRTAでも走るかなぁ……最近見つけたんだけど――」
昼食の片付けも済んだところで、両親は脇目もふらずにゲームに戻っていった。私が言えた義理じゃないけど、あの人達ゲームのし過ぎでは?
「ノアはこの後はどうする?」
「あー……」
正直なところ、今すぐにでも【Saga Frontier】を再開したい気持ちがある……んだけど、お祖父ちゃんに声を掛けられたおかげというかおかげで、部活に顔出さないとマズいな、ということを思い出すことが出来た。
そして私の午後の予定は決まった。
「30分後に部活に行こうと思う」
「そうか、じゃあわしも準備する」
「うん」
今後は書けたら時間の節目にでも投稿しようと思います。大体6:01分に書き上げたりして7時投稿になるんですけどね……
あ、でも18時以降に書けたら翌日の6時に投稿しますので、18時までに更新が無かったら翌日に(ガバがなければ)投稿されるんだなふーんと捉えていただければ幸いです。