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【Saga Frontier】 ver_0.01  作者: へるぷみ~
【フェーズ1】年下先輩はジーニアス
12/36

人々は壁の内側にいる 銃

スミス。病的なまでな銃職人だが、ちゃんと銃以外の仕事もする。ちなみに仕事に関するやる気は2割ぐらい落ちてる。理想の銃を作るため、古今東西から技術として流用できそうなものを集め、魔法・魔術にも手を出し始めている。ちなみにハンターが使っている銃はその魔的な技術を流用していたりする。街で生まれた人ではなく、東の東から流れてきた。

彼の助手……というか職人見習いとして弟子入りしているアプレンティスちゃんがいる。あまり職人すぎて時には仕事をほっぽり出す師匠の代わりにお店の切り盛りをしており、腕は腕でも経営の腕が最近上がっていることに彼女は複雑な心境。師匠と違って街生まれの街育ち。

「2~3日後にはぁ、出来るからぁ、忘れずにねぇ?」

 という言葉で私はお店から送り出されていた。

「おぅ、案外早く終わったな……」

「ハンターさん。良かったんですか、あの……」

「ま正直こうなることはある程度想定してたんでな、嬢ちゃんが気に病む必要はない。さっきも言ったがオレたちに必要なのは贅沢じゃねぇ、その日を満足に生き、森の獣たちが勢力を拡大しないように監視し管理する。金が有りすぎれば仕事というものに意義はなくなり、堕落する。やがて金が無くなれば仕方がないと森に行き……死ぬ。だから将来的にオレの命を救った礼ってことで、納得しておけ」

 納得……は仕切れないけれど、好意を無碍にすることも出来ず私は頷いた。

「……よし、そんじゃあ最後はスミスのところに行くぞぉ。コイツの調整はあの爺さんしか出来ねぇからな」

 ハンターさんが掲げたのはライフル銃だ。スミス……職人スミスで銃に関係してるとなればガンスミスってことだろうか。お爺さんで職人ってだけで私の中の印象は頑固一徹とかそういう言葉が似合う人になったけど……


「なんじゃ若造が、ガキ侍らせて大人ぶりおって」

 わぁお。

「開幕からひでぇな爺さん。嬢ちゃんはまぁ成り行きで街案内をしてるだけで侍らせてねぇよ。それより、銃のメンテナンス、ナイフも一緒に頼むわ」

「ふん、お主ツケが溜まっとるのを忘れとるのか? それともこの老いぼれなら時間を置けば忘れるとタカを括っとるのか? 先にそっちの支払いをせい」

「わ、わかってるわかってるって、覚えてたし爺さんが忘れるわけねぇのは知ってるよ。金には多少余裕が出来たんでな、だから久々に寄ったんだからよ」

「ならさっさと出せ」

「…………」

 なんというか、想像と実際がここまで一致してると言葉も出ないって感じですよね。見た目風貌はさすがに違うけど、それでも口調と態度が強い。あとハンターさんが実はダメ人間に部類する人なのではとか思い始めたけど命の恩人にそんなことを思っちゃダメだよね!

「それで、オマエは冷やかしに来たのか?」

「え、あ、私ですか!?」

 ぼーっとお店の中を眺めていたら、唐突に鋭い視線を向けられた。

「他に誰がおる。金もないのに店の敷居を跨いだと? まぁその格好で金を持っとるとは思わんがな。ん?」

 フォレストウルフの素材が入っていた革袋と毛皮をテーラーさんに預けてきた私の今の格好は顔の周辺に返り血を浴びてボロボロのよれよれになった布の服を身に纏っている状態だ。客観的に見て乞食とか物乞いとかに間違われてもおかしくないし、実際間違ってない。

「じょ、嬢ちゃんは顔見せに連れてきただけなんだよ。ほら、見ての通り素寒貧だし?」

「そう言ったじゃろうが。なんじゃ若造、ガキを拾って養おうとでも思っとんたんか? 万年金無しで?」

「金がねぇのは事実だけど、余分に持たないようにしてるだけだ! あと嬢ちゃんとはそういう関係じゃねぇ!!」

「カッ。金無しは全員そう言うんじゃよ。まぁ――」

「シショー! 準備でき……ってあ、お客さんですかぁ! いらっしゃいませ~」

 白熱し始めていたスミスさんとハンターさんの言い合いに割り込むように、お店の奥から一人の少女が顔を出した。私達の姿を認めると、彼女は破顔してお辞儀をしてきて。

「やぁスミスちゃん! こんにちわ!」

「ちっ」

 それに対してさっきまで顔真っ赤の表情をしていたハンターさんが一瞬でその表情を崩し、だらしない顔……俗にいう鼻の下を伸ばして手を振った。

 そしてスミスさんは話の腰を折った彼女に対してなのか、それとも態度を急変させたハンターさんに対してなのか、これ見よがしに舌打ちをしていた。多分これハンターさんに対してだな。視線の鋭さが更に増したし。

「あ、ハンターさんですか! 今日もシショーに銃のメンテナンスを依頼しに来てくださったんですね! それで、そちらの方は?」

「金無しじゃ。アプレンティス、仕事だ。準備が出来たならさっさと始めるぞ」

「わ、わかりました! それじゃあハンターさん、それにえーっと……」

「シノです」

「はい、シノさん! バタバタしちゃってすいませんけど、失礼しますね。またのご贔屓を~!」

 嵐のように現れたアプレンティスという少女は、また嵐のように去っていき、お店の中に取り残されたのは私とハンターさんである。ちなみにハンターさんが置いていたライフル銃とナイフ、お金の詰まった革袋をスミスさんは持っていっていた。

「それじゃあ嬢ちゃん、こいつが最後の報酬だ。服の方はテーラーさんがどうにかしてくれるから良いとして、もし武器なんかを用立てる必要があったらココに来るといい。偏屈だし気難しい爺さんだが腕はいいんだ」

「あとアプレンティスさんがいる?」

「そうそうあの無垢で元気な姿に明日も頑張ろうと……ってそうじゃねぇよ! ……取り敢えず、他にも場所はあるが()()()()案内できるのはここまでだ。というわけでついでじゃない目的地に行こうか」

「わかりました」


 そうして連れてこられた場所は、

「いくら治安が悪くなくても、路上で女が寝るには危険だからな。寝泊まり出来る場所は知って損じゃない」

 つまるところ宿屋であった。

 当然だけど私に看板に書いてある文字がなんて書いてあるのかはわからない。ただ、そうなんだろうってことはわかる。

「ここは下が食堂で上が宿になってるし、個室で錠前もある、金は掛かるが水桶と布も提供してくれるから入れたり尽くせりだぜ。そんで、ほれ」

「うわっと、と……」

 投げ渡された小さな革袋。危うく受け取れば金属の擦れ合った音。中を除けば数枚の硬貨。

「一日と少し過ごすには余裕があるぐらいには入ってる。これでオレからの報酬は終わりだ」

「その、何から何まで……ありがとうございます。命だって助けてもらったのに」

「よせよせ、何度も言うが嬢ちゃんをあの時助けなければオレは今日フォレストウルフを狩れなかったし、たとえ狩れたとしてもほとんどが土に帰ってたんだ気にすんな」

「それでも、本当にありがとうございました」

「……おう。それじゃあオレぁ酒でも飲もうかねぇ」

「まだ昼ですよ?」

「仕事はしたんだ、飲む権利はあるだろう? じゃあな嬢ちゃん、縁があったらまた会おうぜ」

「はい」

 そう言って、命の恩人でありこの世界で多くのことを教えてくれた彼は去っていった。

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