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【Saga Frontier】 ver_0.01  作者: へるぷみ~
【フェーズ1】年下先輩はジーニアス
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人々は壁の内側にいる 衣

テーラーさん。ゴシックな喪服に身を包んでおり、鍔広の帽子を目深に被り、口元のあたりだけわずかに透過しているベールを纏っている。素肌を完全に晒している箇所はなく、レースの手袋と口元の部分だけが辛うじて肌の覗いている場所である。街で唯一の仕立て屋であり、服から装飾品、一部金属までなら防具にいたるまでの全てを個人で作成している。年齢は不明。ただ一説では街の興りからずっといるのではないかという噂が立っているが、確かめたものは誰一人としていない――大体笑ってごまかされるか聞いた当人が何も言えなくなってしまう――。ただ言えるのは、現在生きている最高齢の住人でさえテーラーさんの前に立てばボケは治るし謙ってしまうため相当凄い人であるということだけがわかっている。色白の肌、先端が青紫色の白髪、紫色の瞳と紫色の口紅を差している。身長は大体120~140cmぐらい。なにがとは明記しないがデカァいッ。

 肉が在ると無いの差は非常に大きく、ぷるぷるしていた腕もふるふるするぐらいには楽になっていた。

 お金が入った革袋はハンターさんが当然しまい込み、骨と牙と爪が詰まった革袋を抱えて私達は肉屋を後にする。

「お次はテーラーさんとこに行く」

 仕立て屋(テーラー)。さすがにここまで来れば間違いない。この世界の人たち……NPCに固有名称とされるものが無い。狩人ハンター肉屋ブッチャー……そして仕立て屋(テーラー)。それぞれがそれぞれ、職種とするものを自身や他者を称する際に用いているのだから。他の同じ職業……商売敵もだけど、そういう人たちとはどういう区別で呼ばれることになるのかは実際にその光景を目にしないとわからないけれど、ここまで連続して職種を称しているんだから、何の関係もないとは言えないだろう。

 考え込む私がハンターさんの話に傾聴していると思ったのか、彼はそのまま話を続けていく。

「あの人は人が身に着けるという分野に関しては右に出る者がいない……と、オレは思ってる。この街に住んでる奴なら何かしらは絶対にあの人の作品を身に着けているといっても過言じゃねぇぐれぇにはな」

「……それ個人どうこうで出来ることじゃないと思うんですけど……お店を開いてるなら、他に従業員さんとかいるんですよね?」

「あの人が誰かを雇ってるとことか見たことねぇ」

「現実的な限界があると思うんですけど……」

 今ハンターさんが身に着けている服も件のテーラーさんが仕立てたというのなら、それを個人で作るのには慣れてて時間は掛かる筈だ。それをこの街に生きている人ほとんどにしているとなれば、時間に労力と必要なものは乗算的に増えていくはず。個人で出来る範疇じゃない。

 がしがしと後頭部を掻きながら、彼は不服そうな表情。

「つってもなぁ……あの人ってオレが生まれ――」

 そしてその不満を吐き出そうとした時、

「あらぁハンターちゃん、女の子にお荷物持たせてぇ、自分は何を言おうとしたのかしらぁ?」

 喧騒の中、背後から小さくしかしはっきりと、間延びした女性の声が耳を通り抜けた。

「げぇっ、テーラー!?「こらぁ目上の人にはぁさんをつけなきゃダメでしょぅ?」……さん……」

「え?」

 真っ先に反応したのは恐らく陰口を吐こうとしていたハンターさん。驚愕と恐れとその他マイナス方面に振り切った表情で振り返ったその視線の先、そこには真っ黒……喪服とされる衣装に身を包んだ人物が立っていた。

「こんにちわぁ、お嬢さん、ぁたしテーラーって言うのぉ。よろしくねぇ」

 ゆったりとした動作だと言うのに、気付けば目の前に立っていたその女性は、顔を覆う黒のベール越しに私を見上げていた。

「シノ、って言います……よろしくお願いします……」

 吸い込まれそうになる雰囲気に呑み込まれながら、絞り出すようにかそれとも引き出されるように返事を私はしていた。

「シノちゃんねぇ。なんだか随分な格好をしてるけどぉ、なにかあったのぉ?」

「実はその、森で迷って……フォレストウルフに襲われて……もう駄目だぁって時にハンターさんに助けていただいて……その時に返り血を顔に浴びまして……ハンターさんにはフォレストウルフの素材を運搬する報酬に街までの案内を……」

 拙くても、それでも話さなければという気持ちが前面に押し出され、ここまでの経緯を私は話していく。

「そうだったのぉ。大変だったわねぇ。ねぇハンターちゃん」

「お、おぉ、はい! なんだですか、テーラー……さん!?」

「命の危機にあった女の子を助けたのはいいことです。おねぇさん、嬉しいわぁ」

「おね――いえはい」

「でもぉ、こぉんなに重いものを持たせて、それの報酬が街までの案内ぃ、なんてことはぁないわよねぇ?」

 蛇に睨まれた蛙という諺を体現しているといっていいぐらいに、二人の関係ははっきりしていた。テーラーさんはハンターさんの腰ぐらいの身長だというのに、見下ろしているハンターさんの表情は青ざめていて、見上げているテーラーさんの唇はニッコリと弧を描いていた。

「ほ、報酬に関してはちゃんと考えていましたよ!? この後テーラーさんのところでフォレストウルフの毛皮とか骨で、嬢ちゃんの服を仕立てて貰おうと……! オレたちゃ大物が捕れた日ぐらいは贅沢するが、基本は必要な分を必要なだけをモットーにしてるんです、今回は肉だけで十分だったから、必要ない分は――」

「だいじょうぶよぉハンターちゃん、そんなに必至にならなくてもぉ」

「え……あ、あー、くそ、人が悪いですよテーラーさん……」

「うふふぅ、ごめんなさいねぇ」

 え? ん?

 ハンターさんが必死の形相で弁解をしていたこと思いきや、テーラーさんは口元を手で隠して笑い、それにハンターは毒気を抜かれた表情で安堵のため息を漏らす。私の報酬に関することで話していたのはわかっていたし、私としては命あっての物種だったので街という安全圏まで案内してもらった時点で助けって貰った分も合わせて報酬として十分だと思っていた。だからこそ、まさかハンターさんがそこまでしてくれようとしたということに驚きつつも、どうして今の話をテーラーさんがハンターさんに喋らせたのかがわからなかった。

「シノちゃんも、ごめんなさいねぇ。いきなりのことで驚いたでしょぉ?」

「それはまぁ……はい……。ただあの、今のは?」

「いいのよぉ、シノちゃんは気にしなくてもぉ。それじゃあお店に行って、まずはお採寸、しましょうねぇ」

「え、いや、ちょっと、いきなりうわうそ、力つよっ!? え、え、えぇ!?」

「はぁ……」

 この後めちゃくちゃ採寸された。

なんか前の話の予約投稿失敗しちゃって変な時間に投稿してしまいした、寝る前の思考力で書いてるってことがはっきりわかん……ますねはい。……許して? あと今後もやらかしますがよろしくお願いしますね?

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