【オコジョ@なろう垢】のツイート 「ただの会社員だった私が異世界で賢者として称えられる驚きの理由」
ただの会社員だった私が異世界の宮殿に召喚された。
「お待ちしておりました。青い鳥の賢者よ」
「あなたの活躍のお陰でこの世界は破滅の運命より救われました」
そう告げたのは、七色に輝く物干し竿を持ち、お鍋の蓋を抱えた好青年だ。
聞けば彼は魔王サイアークを打ち倒し、王国を救った勇者だそうだ。
「えっと、なぜ私がここに召喚されたのでしょうか?」
私は勇者の格好の奇抜さに驚きつつ、緊張と興奮が入り混じった声で尋ねる。
「あなたの助言により僕が魔王を倒せたのです。そのお礼をしたいです」
「いや、何かの間違いですよ。私は貴方なんて知らないですし」
物干し竿を武器にする知人は持ち合わせていない。
「ああ、直接お会いするのは初めてでしたね。【オコジョ@なろう垢】様」
「な、なぜその名前を知っているんですか!?」
【オコジョ@なろう垢】は私が持つツイッターアカウントだ。自作の宣伝やほかのなろう作家さまとの交流に用いる。
「僕の名前は【ライデン@なろう】です。こう言えば分かりますか?」
「あっ、よく交流させていただいていたあの!?」
「はい、オコジョ@なろう垢様からアドバイスをいただいていたライデン@なろうです」
思い出した。いきなり自作の小説の相談を振りかけてきた人だ。
『王様が50Gしかくれないのはどうかと思う』とか『女騎士の裸を見てしまった時の釈明方法』などに関して助言をした思えがある。
まさかそれが現実の事とは夢にも思わなかった。それどころか面白半分で助言した気がする。
「オコジョ@なろう垢様の助言は大変有益でした。その中でも特に魔王の攻略法は役立ちました」
「まさか!?」
「助言の通り、魔王のブレスは耐火性に優れるお鍋の蓋で防ぎ、物干し竿は魔王の肛門に突き刺してやりました」
勇者ライデン@なろうは屈託のない笑顔でそう告げる。
この助言を与えた時の私は酔っぱらっていたのだろう。そんな倒され方をした魔王が気の毒でならない。
「ちなみにライデン@なろうさんの【@なろう】ってどんな意味なのですか?」
ふと気になった私はその疑問を本人にぶつけてみた。
「ああ、これは【救世主になろう】という意思表明を示してみたんです」
「しかし、凄いですよね。ツイッターという世界にはたくさんの救世主がいるとは」
その後この世界に戻ってきた私はこの体験をツイッターに投稿した。
【@なろう】をつけた本物の勇者が沢山リプライして来た。
読んでいただきありがとうございました。
以上が顔が見えないインターネット社会ならではの不思議なお話でした。
ふと考えると、インターネットも一種の異世界だなと思い執筆しました。
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