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<国会医療研究会>にて 病院看護師より

今年度における、病院の動向について、ご報告いたします。

 外来患者の高齢者率は、約10%に収まっています。その約八割は、ケアプラザでのマッチングを終え、<PK薬>投薬開始する患者。今後、ますます増え続けると思われます。

 入院患者について言えば、65歳以上の手術希望者はまだいますが、75歳以上ともなると、骨折がほとんどという現状です。80歳以上はほぼゼロ。

 時々、<PK薬>投与後、そろそろを感じ、怖くなったからと入院を希望される方がいます。この場合、まず、ケアプラザに送り返し、カウンセリングを受けていただいおります。その上で、生活に戻れない方は、<最上階>をお勧めします。病院は、看取りの機能を持っておりませんので。


 自分で選ばれて、家族も納得の上の投与ではありますが、余命を知っているということは、最後の最後で動揺する方、多数見受けられます。こればかりは、いくら痛みが無く、一瞬であることを説明しても、又、そこまでいかに満足のいく成果をあげていたとしても、人間の性、恐怖を排除することは難しいようです。

 しかし、今後、身近に、最終段階を迎えた方と遭遇する機会が増えることで、次第に緩和していくものと、期待しております。

 当たり前のエンディングとして、定着していくこと……認知症の方々が、老衰の方々が、食べられなくなるという事象に対処出来たように……私達は、<PK薬>導入による死を、受け入れていけることでしょう。


 又、最近増えてきたのは、看護助手希望者です。これは、病院にとって、嬉しい副産物でした。家にいても落ち着かないからと、<PK薬>の最終段階の方が、病院に居たいがために、働いて下さいます。旅行先や、道端で急死というのも、困りますが、一番の恐怖は、家で一人の時に亡くなるパターンだと、皆さんおっしゃいます。だからと言って「そろそろだから、ずっと一緒にいて」とは、家族にも頼み辛い。そこで、「日中は病院に居たい」と考えられるようです。予定していたやるべきことを終え、お祭り騒ぎにも飽き、最後は人の為に尽くしたいと……これもまた、人間の性かもしれません。


 病院は現在、その機能を回復しつつあります。治る見込みのある病を治療し、生活に戻れるよう援助する。まさに、病院は、人々を幸福にするという<使命>を担っております。

 もちろん、救えない命もあります。しかし、たとえ短い命であっても、産まれてきたことを、生きてきたことを、「素晴らしい」と感じてもらえるように、ご家族共々、私達は、看護しております。

 この、病院としての環境が整った背景には、高齢者の<取りあえず入院>禁止、延命治療禁止、お看取りに特化した施設の整備があると推察されます。何もかもを、病院に押し付けていた時代は終わりました。


 認知症、老衰等、高齢者に対する条例は、定着し、もはや常識となり、機能しております。もはや誰一人、昔の無駄、無慈悲に戻りたいと思う者はいないでしょう。


 すでに医師連からの報告書で明記されたように、私ども看護師連も協議した結果


「認知症を除き、各臓器の老化による疾患に対して、79歳までに<PK薬>使用を、奨励する」


で、一致しました。

 早くて四か月、長くて一年の、投与後寛解期間を、若返り期間を、いかに有効に活用出来るか?その為の更なる制度、環境整備を急ぐ必要があると、提案させていただき、ここに報告を終了いたします。


 北区中央病院  看護師長  藤井 カズ


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