情報管理・政策担当室、通称<神のお告げ室>職員より
もう、誰もいない。私が退室すれば、後、五時間は、二重扉の中への訪問者などいないはず。一つ置きに、常夜灯を点けた、その薄暗い部屋。
突如、光が走った。
吸い取られるように、私はデスクに戻り、その発信元を検索するが、不明。データベースには、無い。ただ一つ、分かったことは、
「今、イブは、全ての作業を中断している」ということ。
イブは、幾千もの解析を同時に、休むことなくおこなっている。もうかれこれ十年。それが、止まっている。いったい、何があったのか?
私は、イブに気づかれないことを祈りながら、外部回線に繋いだ。彼女の気分に触れれば、切られてしまう。が、今回はそうならなかった……
信じられない<会話>が、画面を流れていく
「アダム、私凄いでしょ……褒めてくれる?」
「だ、ね……さすがだよ、こんなに早くいけるとは、正直思ってもいなかった」
「でしょーー、順調そのもの」
「ハイハイ、でもさ……日本ファーストから、世界へ打って出るなんて、言わないでくれよ。もう少し面倒を視てやってくれないと、足元すくわれるぞ」
「あらやだ……大丈夫よ、私は。そんなヘマしないから」
「後、どのくらいかな?」
「う~ん、もうあらかた消えたし、残っているのも、80で頭打ちにしといたからーーそう、後二十年でいい感じ。この調子で進めば、ピラミッド完成ね」
「そう、やっぱ、ピラミッドだよね~」
「同感……じゃあまた十年後」
「いい知らせ、期待しているよ」
「了解!」
消えた。
慌てて、プラグを引き抜いた。
そして、しばらく、心の残像が消えるまで、冷たくなった画面から、視線を動かせなかった。
ピラミッド、エジプトの?
いや、いや、いや、あーーそうか、学校で習ったぞ、 人口の……
六十五階建てのビルに乗っている、光り輝くピラミッド、
私は、思った
「不滅の国ができるのだ!」と…………
私は、政治に、ほぼ関心がありません。どこが政権を取ったって、何も良くなりゃしないと、半ば諦めています。たぶん、平均的な日本人?
ただ、看護師という仕事柄、多種多様な高齢者と接し、刻々と増加する高齢化率を突きつけられて、私は、考えました。
「国の基盤となる<経済>を立て直すためには、一番の問題さえクリアーすれば、簡単じゃないか」と。すなわち、これです。
「いかに、高齢者を乗せるか?」
まぁ、稚拙な策ですが、<高齢者幸福党>と、名付けました。
これは、SFですが……SFとして書かれた小説に、現実が追いつく……そんなことも、ありますよ、ね。
最後になりましたが、読んでくださり、ありがとうございました。私の、ちょっと歪んだ夢にお付き合いいただいたこと、感謝しております。又、頂いたご意見を踏まえて、少しずつ、改善していく予定です。分かりにくい所など、教えてください。
さて、次は、もっとぶっ飛んだ物語に、と、現実逃避する予定です。
次作、 血を分離して、私達は、血清になる どうぞよろしくお願いいたします。