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世紀末の帝國  作者: 独楽犬
第11部 内陸侵攻
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その3 新たなる戦いに向けて

 今回は次回以降の戦いに向けた状況説明会です。

 作戦2日目、日韓陸軍は鴨緑江対岸に橋頭堡を築き、さらなる奥地への攻撃を進めていた。その作戦を担うのが2個方面軍―日本陸軍の朝鮮軍と韓国陸軍第一方面軍―、5個軍、15個師団に及ぶ大兵力である。




 飯田大将の指揮する朝鮮軍は3個軍(軍団規模)を指揮下に置き、新義州から主力として瀋陽市を目指す北進作戦の要であった。配下の軍は日本の第三軍と韓国第一軍及び第七軍である。

 先頭を進むのは日本陸軍第三軍である。第三軍は近衛師団、第六師団、第二〇師団の3個師団を持ち、さらに今回の作戦にあわせて韓国陸軍第一師団が配属されていた。日本陸軍の3個師団師団も完全に機械化された甲師団であり、先頭を進んで機甲戦力を以って山岳地帯を突破し、瀋陽市周辺に展開する中国軍機甲部隊を撃破する任務を帯びる。

 これは韓国陸軍にも共通していることであるが、第二次世界大戦以来アメリカ陸軍の影響を強く受けるようになった日本陸軍は戦車師団及び機械化師団の編制にアメリカ陸軍の生み出したコンバットコマンドシステムを導入した。日本陸軍甲師団は師団司令部の下に3つの旅団司令部を持つ。この旅団司令部は一部の直轄部隊を除き配下に固有の部隊を持たず、機械化歩兵大隊6個と大隊規模の戦車連隊4個を状況に応じて適宜組み合わせて配属し実戦に臨むのである。

 戦況に応じて柔軟な部隊運用が可能である強力な部隊であり、特に近衛師団と第二〇師団は保有する全ての戦車を新鋭の四四式戦車に更新済みの優良師団であった。この両師団の戦車連隊に配属された四四式戦車のほとんどは後期型で120ミリ滑腔砲と複合装甲、高度なセンサー・射撃統制装置を装備する戦後第三世代戦車に類する相応しい戦闘車輌であり中国軍が保有するあらゆる戦車に勝ると考えられている。

 第六師団は1個連隊のみ四四式戦車を装備し、残りの3個連隊は旧式の三四式戦車を装備していた。三四式戦車は105ミリライフル砲を装備する戦後第二世代戦車で、中国軍の保有するほとんどの戦車に対して優位に立てると考えられているが、中国の新鋭戦車に対しては若干分が悪いといわれている。

 また各師団も装甲化された捜索連隊を保有する。四八式重装甲車の2個中隊と四八式歩兵戦闘車の2個中隊に加え、1個中隊ずつ自前の戦車部隊―すべて四四式戦車である―まで保持する強力な装甲部隊である。

つまり第三軍の3個師団は12個の戦車連隊と3個の捜索連隊で合計して740輌程度の戦車を保有することになる。

 また第三軍の3個師団は合計で18個の歩兵大隊を有するが、これらの部隊は全てが機械化されている。歩兵全員が装甲車に搭乗して移動するのである。そのうち近衛師団と第二〇師団のそれぞれ2個大隊が、第六師団は1個大隊が四八式歩兵戦闘車を配備する部隊である。35ミリ機関砲に対戦車誘導弾を装備して対戦車戦闘も可能な四八式の存在は中国軍装甲部隊に対する日本軍の優位な点の1つだ。しかし残りの13個大隊は依然として古い二六式装甲車を保有する。典型的な装甲兵員輸送車APCである二六式は近代改修で20ミリ機関砲を搭載して火力を強化しているが、装甲が薄く敵装甲車輌との戦闘に不安が残る。

 またこれらの師団の砲兵も完全に機械化されている。主力は三一式一五糎半自走砲で、射程19kmの30口径155ミリ榴弾砲を装備する自走砲である。射程が最新の各種火砲に比べて劣るが、自走できるというのはそれを補っても余る利点となる。対砲兵レーダーの登場で精密な対砲兵射撃が可能になった現在の砲兵戦では、射撃後にいかに迅速に移動できるかが勝負の鍵となる。射撃の準備に手間と時間がかかる牽引砲に比べると、自走砲は生存性が格段に高いのである。第三軍にはこの自走砲が1個師団あたり72門。あわせて216門を装備している。

 それに加えて各師団砲兵連隊には噴進(ロケット)砲大隊が1個ずつ配属されている。36連装130ミリロケット砲を装備する自動貨車(トラック)を24輌配備して、瞬時に広範囲を制圧することが可能なのである。また130ミリロケット弾は従来型で射程20キロ、新型弾なら射程36キロを誇り、共産軍の多くの火砲をアウトレンジから攻撃できる。

 さらに第三軍には朝鮮軍司令部直属の野戦重砲兵第一五連隊が配属されている。同連隊は203ミリ自走榴弾砲2個大隊36門とMLRS多連装ロケット砲1個大隊18輌を装備している。

 また第三軍には韓国軍から第一歩兵師団が配属されている。第一歩兵師団は他の3個師団とは異なり韓国陸軍第一軍の師団と同様に純然たる軽歩兵師団である。彼らの任務は日本軍の甲師団3個が機動戦を展開できる平地に達するまでサポートすることだ。

 第一歩兵師団はトラックにより自動車化はされているし戦車や砲兵のような重火器部隊も配下に収めているが、あくまで師団の主力は徒歩歩兵であり戦闘能力の真価は近接戦闘で発揮される。

 第二次世界大戦は枢軸軍による電撃戦によって始まり機甲部隊による機動作戦の有効性を全世界に示した戦争であったが、しかし逆にそれが万能でもないことも示した。極東戦線においては山岳地帯が多く機甲部隊が機動力を発揮できる余地があまりにも少なかったのだ。代わって活躍したのが軽歩兵部隊で、彼らは山岳地帯をものともせず敵の後方への浸透作戦を繰り返して多大な戦果を挙げた。その効果は現在でも健在であり、韓国第一歩兵師団は第三軍の戦略予備として、機甲部隊が強力な抵抗に遭遇したときに森林地帯を迂回して敵に側面攻撃を仕掛けるという任務が与えられていた。

 この時点で第三軍は、先頭を進む第二〇師団が湯山城鎮を占領し、当面の目標である鳳城市に大手をかけた。そして、その後ろには韓国軍第一師団が待機し、他の機甲部隊も鴨緑江を渡河しつつあった。


 その後に続く予定なのが韓国陸軍第一軍であった。第一軍は第二機甲旅団と第九、二五の2個軽歩兵師団から成る。

 第二機甲旅団は韓国国産のK1戦車を装備する2個戦車大隊と1個機械化歩兵大隊、砲兵大隊とその他支援部隊から成る機甲諸兵科連合部隊で、いわば小型の師団である。旅団は軍の先頭を進んで進路を切り開く任務を帯びている。

 そして、その後に2個の軽歩兵師団である第九歩兵師団と第二五歩兵師団が続くのである。彼らの任務は鴨緑江から瀋陽までの間に連なる山岳地帯の中で遊撃部隊による後方襲撃を企てるだろう中国軍から友軍の兵站戦を守ることだ。

 さらに必要に応じて他の方面への増援に派遣されることも想定されている。


 そして最後に北上する予定の韓国軍第七軍は韓国陸軍内に4個しかない機械化師団のうち2つ、すなわち帝都師団と第二〇機械化歩兵師団の2個師団が集中配備されている。韓国陸軍の切り札とも言うべき機動打撃軍団なのである。

 その2個師団も帝國陸軍と同様にコンバットコマンドシステムを導入しており、状況の変化に機敏に対応できる強力な部隊となっている。この2個師団に課せられた今回の任務は瀋陽市周辺の中国軍撃破に向かう日本軍第三軍を援護するとともに、瀋陽から北へ向かい四平で韓国軍第一方面軍に属する第六軍と連絡を確立することである。



 一方、韓国軍第一方面軍も国境を越え、中国側に橋頭堡を築いていた。

 江界市方面から通化方面に進撃するのは韓国軍第六軍で、第五機甲旅団を先頭に奥地へと進んでいた。その後に第二六機械化歩兵師団及び第三〇機械化歩兵師団の2個師団が続く。この2個師団も日本陸軍の甲師団と同様にコンバットコマンドシステムを導入した強力な機甲部隊となっている。この1個旅団、2個機械化師団をもって中国東北部の交通の要衝である四平市への打通を図るというのが第六軍の計画だ。

 そして、その後には後方連絡線維持の為の軽歩兵師団が2個、第七歩兵師団と第一五歩兵師団が続く。第一五歩兵師団は全ての発端となった国境線での偶発的な戦闘を指揮したオ・チャンソク曹長が所属する部隊である。

 第六軍は今のところ大きな抵抗に直面せず北進を続けていたが、中国軍のゲリラ的な後方襲撃は続いており、対策に躍起になっていた。そして目指す先の通化市中心部には中国軍の守備隊が居て、激しい戦いが繰り広げられることが予想された。


 そして中韓国境の東端から吉林を目指すのが日本陸軍第四軍の2個旅団、3個師団である。この中で機甲部隊と呼べるのは韓国軍から配属された第三機甲旅団のみだ。第二機甲旅団や第五機甲旅団と同様に2個戦車大隊と1個機械化歩兵大隊で編制され、軍の貴重な機甲兵力として先鋒を務めている。

 第二機甲旅団とともに軍の打撃力を考えられているのが、日本陸軍の第五師団と第二四師団である。

 第五師団は広島を編制地とする明治以来の部隊で、これまでの戦争では常に軍の先鋒として戦地に派遣されていた。この部隊は機甲部隊には数えられないものの、歩兵部隊は装輪装甲車で機械化され、また戦車も全て三四式であるものの、3個の歩兵連隊に1個中隊ずつ、それに師団直轄の戦車連隊に3個中隊の計6個中隊84輌も装備するなど有力な兵団だった。

 一方、第二四師団は台湾防衛の中核となるべく整備された部隊で、1個歩兵連隊―歩兵第四七連隊―は二六式装甲兵車で機械化され、さらに戦車連隊はやはり三四式戦車装備の部隊であるものの6個中隊編制となっている。こちらも第5師団に勝るとも劣らず強力な兵団だ。

 そして、軍の最後尾で後方兵站線確保の任務を帯びるのが名古屋を編制地とする第三師団である。第三師団は前の2個師団と異なりごく普通の軽歩兵師団であるものの、それ故に山中での戦闘で威力を発揮すると期待されていた。

 さらに第四軍は山岳地帯が戦場ということもあり、そうした場所での戦いを専門とする精鋭部隊が配属された。それが山岳戦第一旅団である。この部隊は空挺旅団と同様に挺身集団に所属する緊急展開部隊であり、日本アルプスの厳しい自然環境の中で鍛え抜かれた山岳戦専門の精鋭部隊である。

 第四軍は鴨緑江を渡り、中国軍戦車部隊の待ち伏せを受けたものの、韓国軍第二機甲旅団が撃破し、延辺朝鮮族自治州の州都である延吉市を占領した。朝鮮族の多い土地柄ということもあり、韓国軍も参加する第四軍に対しては友好的であるという。

 そして、作戦2日目はさらに北を目指して進撃を開始し、次の目標である敦化市へ向けて街道を進んだ。そして中間地点にある安図県の中心部を確保し、敦化市占領へ大手をかけた。




 これが作戦2日目における大陸の戦況である。3日目には鳳城市、通化市、敦化市の3つの都市を巡って激しい攻防が行われるのは確実であった。

 そして3日目の朝を迎えた。

 しかし劇中で日本陸軍が展開している戦力と現実の自衛隊を比べると…泣ける。

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