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世紀末の帝國  作者: 独楽犬
第11部 内陸侵攻
93/110

プロローグ

 いよいよ新章。今度は陸戦です。

中華人民共和国丹東市元宝区ハマタン鎮

 激しい砲撃がハマタン鎮と鴨緑江の間にまたがる山地に撃ち込まれた。師団砲兵の155ミリ榴弾砲、歩兵連隊の持つ各種の迫撃砲、さらには野戦重砲兵連隊の203ミリ榴弾砲やMLRSまで砲撃に参加していた。

 その間にハマタン鎮では挺身第1連隊が出撃の準備を進めていた。夜が明けて戦線が安定すると、最後まで戦場に投入できなかった第4中隊がヘリコプター機動で連隊主力と合流した。これで挺身第1連隊の全中隊が揃ったわけだが、その間に連隊が被った被害は甚大だった。

 これまで戦場で戦っていた3個中隊は、負傷者が後送され、残る将兵をもって再編成されたのだが、その人員は3個中隊揃っても通常の1個中隊分の兵員程度しかいなかった。新たに投入された第4中隊をあわせても2個中隊だ。挺身第1連隊はたった1日で将兵の半分を失ってしまったのだ。

 それでも挺身第1連隊の士気は高かった。逝った仲間の仇をうち、自ら道を切り開くべく銃を手に取ったのである。

 挺身第1連隊の将兵たちが攻撃位置につく頃になると、砲撃は目標である山中からその周辺に照準が移っていった。砲撃は挺身第1連隊の背後、ハマタン鎮の北の縁にも行なわれた。これは中国軍が増援を送ったり、突撃した挺身連隊の背後を襲撃するのを防ぐための措置である。上空では援護の為にコブラ攻撃ヘリコプターが飛び、攻撃の準備は整っていた。

 挺身連隊の進撃路に落ちる砲弾の数が減って、ついに最後の一弾が着弾した。それを見た連隊長の稲村中佐は各中隊長に繋がる無線の発信ボタンを押した。

「突撃せよ!」

 一斉に250人の兵士が山中へ向けて突撃した。その頃、山の反対側では韓国軍第一師団も同様の攻撃を山中の中国軍に向けて発起していた。



 中国軍は鴨緑江とハマタン鎮を隔てる山中の中国軍部隊―北上する韓国軍を阻止する第861連隊と挺身連隊撃滅に失敗した第862連隊―を日韓両軍が挟撃しようとしているのだと推察した。そして残る砲兵火力や予備部隊をこの一帯に集中することをルー・タオラン師団長は決めた。ここが日韓軍の主功だと判断したのだ。




同振安区九連城街道

 丹東市の一帯は日露戦争において両陣営の陸軍部隊が激突した地であり、今でもその戦跡を見ることが出来る。

 九連城はロシア軍が北上する日本軍部隊を迎え撃つべく布陣した場所であり、日本軍は守備するロシア軍に向けて砲兵の間接射撃―砲陣地から直接観測できない山越しの目標を、前進した観測員の誘導で射撃する射法。野戦での使用は鴨緑江の日本陸軍が世界初とも言われる―を浴びせるとともに、正面からの突破を避けて部隊をロシア軍を包囲するように渡河させた。日本軍の迅速な渡河に驚いたロシア軍はハマタン鎮まで後退し、そこでも追撃してきた日本軍と激戦を繰り広げている。日露戦争における陸軍の最初の勝利であった。


 ここ九連城にも旅順に遺したような忠魂碑が建立されている筈であるが、捜索第20連隊の兵士達にはそれを訪問し、先人たちを偲んでいる暇は無かった。

 夜間に対岸を渡った捜索20連隊は、集結を終えると九連城方面に斥候を繰り出し、中国軍の防備が薄いことを確かめた。そして挺身連隊と中国軍が激しい夜戦を繰り広げている間に連隊主力は九連城まで移動した。この動きを中国軍が感知した様子は無かった。それから第20師団主力から1個機械化歩兵大隊が続いて、到着した。

 そして朝を迎えて挺身連隊と韓国軍が山中の中国軍に対して強襲を実行した。激しい砲声が西から聞こえてくるが、まだ攻撃の時ではない。兵士達は辛抱強く司令部のGOサインを待った。

 連隊長である椿日向大佐は自分の装甲車の中で師団司令部の命令を待っていた。そして無線の呼び出し音が鳴った。大佐はすぐにマイクを手に取り発信ボタンを押した。

「こちらカツラギ、どうぞ」

<カツラギ、こちらオジカ。作戦開始だ>

「オジカ、こちらカツラギ。了解。交信終わり」

 いよいよ出陣である。椿は配下の全中隊と配属された機械化大隊へと繋がる無線の発信ボタンを押して、攻撃開始を示す符丁を叫んだ。

「ムラサメ!繰り返す、ムラサメ!」

 強力な2個大隊相当の兵力を持つ強力な機甲部隊となった捜索第20連隊の車輌が次々と発進して行った。挺身連隊と韓国師団に目が向いて無警戒、無防備となった土地をハマタン鎮を目指して突進していった。

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