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その9 くっころ アレクサちゃん

読者の評判が余りにも悪かったら、乙女版に切り替えるで!


アレクサちゃんが乙女なままの展開やな

そちらでもストーリーは破綻せんしな



王国暦 23年 


冬の訪れを前にして、遊牧民たちは宿営地を構築し、長期戦の構えを取っていた。

秋の最後の攻勢で王国主力軍を攻め切ること叶わず、いまだに北方辺境さえ突破できずにいる。


暗い天幕の中、獣のように二つの息遣いだけが響いていた。

アレクサは自分が牝であることを思い知らされていた。

圧し掛かられるたびに打ち身が傷み、太腿や脇腹の傷が開いて再び出血し始めるが、アレクサは歯を食い縛り、声一つ洩らさなかった。

幾度経験しようとも、精を流し込まれる感覚には慣れなかった。


天幕の外より、声が掛けられた。

「セオイ兄者、いるか?」耳慣れぬ言葉であった。

だが、アレクサは、敵の捕虜を訊問する過程で、ある程度のタラン語を理解していた。

「ウルダイか」

アレクサに圧し掛かっていた影が、地の底から響くような声で応える。

……己が虜囚の身になってから、タラン語の学習が役に立とうとはな。

皮肉に思い、アレクサは笑った。

「バイカンもおります」

「よかろう、入れ」

アレクサを抱きかかえながら、天幕の主が応える。

何時、休むのか。

アレクサを打ち倒した男は、既に7日以上続いている凌辱を中断する気配はない。


入って来た男たちは、狼の毛皮を巻いた東方の人種であった。

偉丈夫ではない。どちらかと言えば、小柄であろう。

しかし、肉体に贅肉は一欠けらもなく鍛え上げられており、扁平な顔の細い瞳には、冷酷な冷たい輝きが力強く踊っている。

アレクサをまるで目に入らぬように、天幕の主を真っ直ぐと視線を向けた。

「女など抱いてる場合ではないぞ、セオイ兄者。

 そろそろ軍議を始めようではないか」


影の中でセオイは動きを休めずに言い放つ。

「俺の手を煩わせるな。 北方は、王国の一部に過ぎん。局地戦など、貴様の手勢で充分だろう。

ウルダイが顔を顰めた。

「王国の虫けら共、堅陣を築いて守りに入っておる。

 奴ら、それなりに馬を駆り、弓も上手い。我らの知らぬ技術も使っている。中々に厄介」


闇に包まれた巨大な天幕の忠臣より、嘲笑の気配が伝わって来た。

「貴様らの手には余るか。ウルダイよ。

 だが、奴らの馬術など、所詮、足萎えの都市民のもの。

 よかろう、尻尾の毛も生え揃わぬ子狼共には勝てても、本物の飢狼共には及ばぬと思い知らせてやる」


「セオイ兄者よ!愚弄するか!」

顔を赤くしたウルダイだが、セオイの言葉に歯軋りしつつも怒りを抑えた。

「だが、王国の騎士ども、侮れぬ。

 オム兄者でさえ斬られた相手ぞ。

 大言するのはいいが、相手を侮るは危険であろう」

 セオイが笑ったのか、天幕の空気が揺れた。

 アレクサを放り投げる。

「そこにいるのが、オムを斬った例の騎士よ」


「なんと、あの黒き死か!」

バイカンが驚きに目を見開いた。

「オム兄を斬ってのけたが、このような女であったとは……」

ウルダイも驚愕したのか、呻きを洩らしている。


「連中の馬術など、我らにとっては児戯に過ぎぬ。

馬にただ跨った他の地虫共よりは歯応えがあるがな。

熊であろうと、獅子であろうと、群れなす狼には勝てんと思い知ることになる」

王国より遥か北東に独自の勢力を持つ諸侯イーゴリ公が旗印が、たしか熊であったな。

風の噂に聞いたルーシア諸侯が、タラン騎馬軍の侵攻を退けたは真実であったか。

肩で呼吸しているアレクサの顔を、ウルダイが掴んで値踏みするように眺めた。


「ほう。まだ、熟しておらぬが、中々の美貌ではないか」

闇の中、ふたたび、影に笑った気配が在った。

「バイカン、ウルダイよ。俺は、この女を娶ることにしたぞ」

「それは正妃と言う事か?」

「単騎で殿を務め、力尽きるまでにタランの勇士を百も斬り倒した女だ。

さぞ、強き子を産むだろう」


30万の騎兵の支配者たるその男が、手足を鎖に拘束されたアレクサの顎に手を向け、言い放った。

「気に入ったぞ。俺の子を産め」

王国語であった。

アレクサは無言であった。睨み返す。

「屈さぬなら、四肢の腱を斬り、目を潰し、舌を切って焼き、自害できぬようにする」

アレクサは揺るがぬ。死も、喪失も、覚悟の上だ。

「兄者よ。惨くはないか」

流石にウルダイが顔を顰めたが、狼が如きセオイは厳しき顔を歪めぬ。

「こいつに俺の子を産ませる。強き母胎があればよい。

勝者は敗者の全てを奪い取るが草原の掟。

我が父大ハーンも、自らの片目を奪った俺の母にそうやって子を産ませた」

アレクサが初めて笑った。氷のような冷笑であった。


「……強情な女だ」

天幕の影にちらりを視線を送った。

「もう一度、痛めつけろ。明日の朝までだ。眠らせるな」

気配もなく、痩せた男が控えていた。

医学の発達した南方はムルラが暗殺者だった。

骨の端を削られる。神経を針でつつかれる。

いかな痛みであれば、アレクサを屈服させることは適わなかった。

拷問されるたびに気絶した。耐えるには其れが一番楽であったからだ。


「……母胎を損ねるやも知れぬぞ」

首を振るうバイカンに、セオイは平然と応えた。

「それくらいでは死なぬ。四肢を矢で射抜かれても、牙で近衛を食い殺しおった。

こやつに産ませた俺の子は、世界を喰らいつくすであろう」

ウルダイが兄に向き直った。

「気が変わるかも知れん。少し待ってやれんか」

それからアレクサの傍らにしゃがみ込み、囁きかける。

「お前が蒼き狼が血の一族となることを受け入れるのであれば、兄も許すであろう」

反応を返さない。心が壊れたのか。正気ではないように見えた。


天幕の外から除く外の光景に、顔を上げてそこにいる馬を見つめた。

アレクサの手足は重りに繋がれている。太い鎖であった。船の錨を繋ぐ鎖である。

如何にアレクサと言えども、引き千切ることは適わなかった。

疲れ切った身体に動かせるのは、首だけであった。

視線だけで馬を見つめる。

「……おまえは、美しいな」

じっと見つめる。馬もじっとアレクサを見つめていた。


王国暦 26年 11月 セダンの野


1000の騎兵がトゥーレ伯が本陣4000に強襲を掛けてきた。

恐ろしく速い襲撃であった。

各々200騎の5隊に別れ、周囲を駆けまわっては突然に長弓で兵を射抜き、突出した陣を背後から削り取ってはまた離脱する。

「敵襲!」

喚いた兵の首に矢が突き刺さり、其の儘崩れ落ちた。

「盾を連ねよ!槍を崩すな!弾き返してやれ!」

本陣で陣頭指揮を執っているリール子爵ギョームが声を枯らして指示を出す。

戦術指揮に関しては、トゥーレ伯マルセルを上回ると言われた男であった。

トゥーレ伯が兵もまた、中原で指折りの精兵。

必死の覚悟で応戦するも、縦横無尽に動き回る東部騎兵の動きに完全に翻弄され、防戦一方であった。


「此れほどの騎兵が一千騎だと!馬鹿な!」

ギョームが喚いた。

アレクサ軍は、恐ろしく強くなっている。

かつてのアレクサが手勢は、襲来せしタランの騎馬民族に及ばず一敗地に塗れていたが、敗北より3年の歳月にいかほどの鍛錬を積んだものか。

いまや、タランの騎馬軍団相手にさえ味わった事が無い、洗練された馬術を持って、トゥーレ軍団を翻弄している。


絶えず走り回る騎兵の集団を相手に短くも激しい戦闘。

晴天に乾いた大地に凄まじい砂煙がもうもうと舞い上がり、立ちこめて視界を制限しつつあった。

「此れでは、矢が!」

クロスボウを構えた士官が、ギョームを仰ぎ見た。

「密集している我が軍は狙い撃ちではないか!それが狙いか!」

動き回るアレクサの騎兵には、矢は当たらぬ。

馬上より狙い定めては、かなりの威力を持つ射抜く長弓で狙い撃ちを繰り返す。

「それにしても奴ら!矢を何本持っている!

既に10度は斉射している筈ですが、矢の尽きる様子は見えません!」


騎馬隊は、東国秘伝の騎射で走りながら射抜いてくる。

1000騎全員が練達の射手であり、一本一本が狙い定めた必殺の一矢。

騎馬民族の騎士でさえ及ばぬ恐るべき技であった。


200騎の集団が5つ。1騎当たり10の矢を放てば、1万本の狙いすました弓射となる。

外縁の防御力が、確実に削り取られつつあった。


「他の軍団はなにをしている!」

ギョームの声に伝令の騎士が首を振った。

「第8陣は、手一杯だと!第6陣は増援を求めております!」


ふざけるな!

増援が欲しいのはこちらだった。

第6陣、第8陣が相手をしている2000騎も練達の騎手が揃ってはいるのであろう、当初は素晴らしい躍動感に警戒したものだが、今本陣に襲い掛かってきている1000騎に比べれば、随分と手緩い相手であった。

少なくとも、その機動も、練度も、中原諸侯の常識の範疇に収まっている。

対するアレクサ直属の1000騎は、尋常ではない。

タランが精鋭【炎狗】にも匹敵。或いは凌駕せんばかりの練度ではないか。


四方八方からの絶え間ない騎馬狙撃。

他の軍勢であれば、早々に統制が乱れ、士気を削り取られて、とっくの昔に潰走していたであろう。


組織だった防衛戦を維持しているのは、一重に主将と副将の卓越した手腕によるものであった。

後方から総大将トゥーレ伯は活力のある中隊を再編成しては、ギョームが前列と交替させることで凌いでいるが、退却も進撃も侭ならない。増援も来ない。

この場の手持ちで最善を尽くしつつも、手立てが尽きつつあった。


変幻自在の用兵と言うべきか。

西方世界広しと言えども、此れほど柔軟に騎兵を操る者は他におるまい。

それがいまや、東方諸侯を率いて王国に牙を剥いている。

ギョームは歯噛みする。

なんと愚かな!

いつなんどき、理由も分からず引き返した騎馬民族がふたたび襲来するかも分からぬ!

いま、王国のつわもの共が内輪揉めをしている場合ではないと言うのに!


大音声で指示を徹底させた。

「砂塵に紛れての騎兵突撃が奴らの狙いぞ!

 総員、決して持ち場を離れてはならぬ!持ち応えよ!」


パイクの槍兵たちも、クロスボウを持った弓兵も、最前列は、今や血塗れになって呻いている。

身体に数本の矢を突きたてながら、なお仲間を庇う為に盾を掲げている兵士も少なくないが、騎馬隊の機動が早すぎる。

正面からの矢は防げようとも、真横に通りすがりからの狙い撃ちには手の打ちようがない。


本陣が丸裸になるのは、もはや時間の問題であった。

右翼と左翼の第6陣、第8陣は完全に押されており、統率を失いつつあった。

アレクサに破られた各軍勢も、短時間に統制を取り戻すのは難しいであろう。

少数の兵を割いて、追い打ちに追い打ちをかけて叩いているやも知れぬ。


だが、矢はいずれ尽きる。とギョームは見ていた。

騎兵射撃だけでは、堅陣を破ることは出来ぬ。

アレクサの用兵は変幻自在に見えて、基本は外さない。

必ず、いずれかの集団にアレクサが潜んでおり、充分に攪乱し、かつ抵抗力を削り切った時点で止めとなる突撃を行うはずであった。

そしてその止めを行うは、アレクサ率いる最精鋭の役目に他ならない。

どれだ。どの部隊にアレクサが潜んでいる?


本命を見切る。見切って迎え撃つ。さもなければ、勝ち目はない。

そっ首を晒されるのはこちらとなるであろう。


いまだ統制を保っているのは、辛うじて中心部にいる八百がいいところ。

その他の部隊は、矢を射かけられる外縁の様子と走り回る騎馬隊の馬蹄に攪乱され、恐慌が伝播していた。此れでは使えぬ。


心を静め、恐らく機会は一度だけであろう。

200を率いる他の四人も、いずれ名の知れたる騎士に違いあるまいが、しかし、アレクサを討ち取らねば、戦には勝てぬ。


突入してくる瞬間に討ち取ってくれる。

だが、徐々に肌で感じる圧迫感が増してくる。

途轍もない何かが近づきつつある。その感覚を覚える。

先刻よりも悪寒が強まった。

歴戦の将としてのギョームの勘が全力で警鐘を鳴らしていた。

「槍衾!戦える槍兵は、前に出よ!いそげい!」

叫ぼうとした瞬間に全身を雷鳴のように貫いた殺意にはっと振り返る。


駆けまわる黒い影。その背後、彼方の野より、影から影に紛れて、黒の奔流が殺到してくる。

最初に襲撃してきた1000騎は、その全てが攪乱の為の囮。

崩れ去る瞬間に、本命の突撃が来るに違いない。それも間違い。

全てがアレクサが来るまでのおぜん立てであった。


砂煙の向こう側。走り回る200騎の影から、一本の矢のように500騎の騎兵が飛び出し、其の儘、突っ込んでくる。突撃を受けるまで、ほんの数秒しかない。


アレクサ・バルクホルンの突撃。

一瞬前まで、まだまだ持ち応えられよう、統制が取れていた前衛が一撃で崩壊した。

黒い疾風。その先頭に立つは、アレクサその人であった。

ギョームを認めたのか、その口元に獰猛な笑みが浮かぶ。


アレクサの武は天を穿ち、その用兵は地の果てまでを征しうるやも知れぬ。

少なくとも五千までの兵を率いた戦と限定するならば、王国にアレクサ・バルクホルンと並ぶ将はおらぬだろう。だが、老将ギョームには、かつての僚友アレクサを赦せなかった。


「此れほどの力を持ちながら、何故、乱を望む!アレクサ!

いや、力を持ったが故に奢って乱を望んだか!」

叫びながら、リール子爵ギョームが大剣を抜き放った。


王都を焼き、王国の東方軍団を粉砕し、騎士団総長を討ち取り、王都近郊の諸侯軍を叩き潰した。

もはや王権はかつてないほどに揺らいでいる。

僅か二十年で平和が崩れ、再び戦乱の時代に戻ると言うのか。

かつてない危機が王国に襲来し、外に向かって団結せねばならぬこの時に!


「語るに及ばず!行くぞ!ギョーム!」

アレクサの気勢。

おう!と、ギョームが迎え撃った。


老将ギョームが白馬を駆けさせ、巨大な方天画戟と二合、三合と撃ち合う。

だが、闘将ギョームと言えども、アレクサには及ばなかった。

アレクサの方天画戟が速度を増してギョームの大剣を断ち割り、其の儘に老将軍を両断した。

「神々よ!我らを見捨てたもうたか!」

中原にその名を響かせし勇将ギョームの、それが最後の叫びであった。



アレクサが500騎は、ギョームもろともに前衛をぶち破ると、其の儘に三方向に分かれて、トゥーレ軍本陣を内から4つにぶち破った。


 ■  ↑ ■

 ←    →

   ギ×

 ■ 侵入口■


※矢印から離脱。■が分割されたトゥーレ軍。



いかな堅陣も内から攻められては、持ちこたえられぬ。

槍衾とクロスボウの方陣は見る影もなく崩壊し、戦闘はいまや完全な乱戦に陥っていた。

だが、右を見ても、左を見ても、なぎ倒されるはトゥーレ伯軍の兵ばかり。

馬蹄に踏み潰された軍監が芋虫のように痙攣している。

「お、おのれ!叛徒め!尋常に立ち会えい!我が名は、べオぎゃぴ!」

剣を抜き放って喚いていて老騎士がすれ違いざま、黒騎兵の一撃に首を撥ね飛ばされる。


本陣中央部に到達したアレクサが、トゥーレ伯マルセルを睥睨していた。

その背後では、黒騎兵が凄まじい勢いでトゥーレ伯の兵たちを蹂躙していた。

右後ろの従う騎兵の槍には、リール子爵ギョームの首が無念の形相で掲げられている。


「……伯父上」

茫然と呟いたマリーが抜刀した。

「おのれ!」

裂帛の気合いを発し、仇に飛びかかろうとした瞬間、

「殺すな」

アレクサがトゥーレ伯を見つめたまま呟いた。

横合いから唸りを上げて飛んできた複数の槍での殴打に、女騎士の身体が宙を舞った。

「……あぁ、がぁ」

地面に落ちて、無様に痙攣する。

鉄の胸鎧も歪み、激痛に身を捩ることしかできぬ。

「懇ろに弔ってやるがいい」

ギョームの首を投げて寄越した。

憎悪の眼差しでアレクサを見つめてから、力尽きたのか。マリーは白目を剥いて気絶した。



蹴散らされつつある味方の兵を眺めてから、トゥーレ伯マルセルは旧友へと向き直った。

「……勝てるだけの手筈は整えていたつもりだったが……

流石だ、アレクサ。騎兵を使わせれば、王国で1、2を争うだろう」

アレクサに匹敵する騎馬隊の指揮官は、王国でさえそう多くはない。

そして、その人物もまた王国への忠誠が疑わしいと来ている。


「……残り1人は、イレーネか。

だが、あれは王家の為には動くまい。簒奪の野心に燃えておるからな」

マルセルとアレクサの問答に甲高い金切り声が割って入った。

「それは、貴女でしょう!」

ドレス姿の王国の女官であった。

だれだ、こいつと言いたげに一瞥してから、無視したアレクサがトゥーレ伯に視線を戻した。


「……好き好んで反乱を起こしたわけでもない。

今考えれば、王子を人質に東部の独立を引き出す術も在ったな」

「そうすればよかっただろう」

マルセルが言うと、アレクサは何処か困ったように呟いた。

「だが、これから先の人生、このバカ王子と暮らす羽目になっていたのかと考えた時、つい腹立たしくなってな。力が入って捻ってしまった」

まるで虫を叩いて潰してしまってから、それがちょっとは値の張る蟋蟀だと気づいたとでも言いたげな言いぐさであった。

「そんなに酷かったのか」

「そんなに酷かったのさ。本当に」

マルセルの呆れたような声に、アレクサが其の儘に返す。

どこか昔に戻ったような和やかな空気が一瞬だけ流れた。


エフェメラだけが、顔を真っ赤に染めて拳を握りしめて震えていた。


アレクサは、遠い彼方を見つめるように天を見上げ、次の瞬間、改めてマルセルを睨みつけた。

「分かっておろう。我が前に立ちはだかるのであれば、例え何者であろうとも生かしてはおけぬ。

 例え、それが友であろうとも」


アレクサの蒼い瞳には氷原の冷たい輝きが戻っていた。

「……よく知っている。君は、そう言う女だ」

トゥーレ伯マルセルが、家宝の長剣を引き抜きながら、懐かしそうに微笑んだ。

「全然、変わっていないな。初めて会った時のままだ」


みんな大好き姫騎士のくっころやでー


今度こそ、ニーズを掴んだ(確信

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