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その7 アレクサちゃん 包囲網

帰路を急ぐ東部諸侯の軍勢であったが、アレクサが懸念した通り、度々の妨害に悩まされていた。


森の道であった。前方が倒木によって塞がれていた。

歩兵の列が足を止めたところに、左右の木立より矢の雨が降り注いでくる。

「森の中!伏兵だ!」

前衛の兵士が盾を連ねて防いでいると、三百ほどの騎馬と歩兵が鬨の声と共に飛び出してきた。

恐らくは、近隣の豪族の軍勢であろう。


と、奇襲を受けた東部諸侯の軍勢からも、黒い影が次々と飛び出した。


真っ先に迎え撃ったは、東部でも剛の者として知られる隻眼のドレー。

「くかっ!」

呵々と笑いながら、襲撃を掛けてきた軍勢に躍りかかり、先鋒にいた騎士を一撃で落馬させ、背後にいた農兵にすれ違いざまに重さ8斤のハルバード(4.8キロ)を叩きつける。

馬上で矛槍を振るう、その凄まじい膂力から繰り出される重量と速度に粗末な革服を着込んだ歩兵が耐える術もない。

腹部に叩きつけられた威力に、人間が文字通り真っ二つに両断された。

凄まじい光景に、豪族の軍勢は凍り付き、脚が止まった。


次いで飛び出したは、漆黒の鎧の女騎士フェーベル。

「くそっ、後れを取った!ドレーめ!」

罵りながら長槍を振るい、農民兵の頭を叩き割る。


棒立ちとなった軍勢に、恐るべき東部武者たちが雪崩のように襲い掛かった。

一瞬にして十数名がなぎ倒された。

残りは恐怖の絶叫を上げ、逃げ惑う。森へと逃げ込む者もいる。

「鏖殺しろ!」

矛槍を投げ捨てたドレーが、剣を引き抜きながら馬を駆って木立へと飛び込んでいった。


退却する軍勢は、帰路を急ぐものだ。

侵略者の背中を狙うが、中原に根差した郷士豪族たちの定石であった。

だが、アレクサ軍は、比較的に緩やかな足取りで東国へと引き換えした。

時に、奇襲してきた兵を一人、二人敢えて見逃し、逃げ込んだ先を確かめもする。

抗うものを一々相手にしては、念入りに潰していく。

それが郷士や豪族の一族であれば、戦士は元より、女子供まで容赦なく首を刎ねられた。

一罰百戒の見せしめであった。


東部勢が退却するところ、数知れぬ村や砦、館が焼き払われ、地平には常時、無数の黒煙が薄くたなびいている。

「我らに逆らうのであらば、中原東部は悉く灰燼と化すであろう」

アレクサの言に、土着の豪族たちは震えあがって恭順を誓った。

王都への留学中、田舎者の東部貴族の娘を親切にもてなした農民の一家だけが、反逆者の縁戚であったにも拘らず見逃されたものの、他に例外はなく、陥落した城市の広場では、抗った諸侯の晒し首の前に一族と主たる部下の首塚が屋根より高く積み上げられた。


「此れは愉快だぜ。今まで、こそこそ隠れて尻尾を出さなかった連中が、てめえからのこのこ姿を見せてくれるんだからなぁ」

襲って来た軍勢を鏖殺して隻眼のドレーが笑った。狩りのように戦いを楽しんでいる。

「土民共、自分から殺されに出てきたようなものだ」

「まったく楽でならんですな」

周囲に散って死体から戦利品を漁っていた徒士の兵たちも、そう言って笑い声を上げた。


引きずり出す為、逃げる振りをする。兵たちは、そう説明されていた。

故に、兵の意識が違う。追われている。逃げているとの認識は薄い。腰を据えて戦える。


斧の血糊を布きれで拭いながら、フェーベルが眉を潜めた。

「だが、連中め。いくら叩いても後から後から湧いて出る。

 まるで地の底から湧いているかのようだ。いい加減、血の匂いにはうんざりするぞ」

隻眼のドレーが尖った歯を剥き出しにして凶相をくしゃりと歪めた。笑みを浮かべたつもりらしい。

女騎士のフェーベルを腕で抱き寄せ、匂いを嗅いだ。

「腐りかけの血と臓物の混じった埃っぽい匂い。肉を焦がす炎の匂い。戦場の香りだ。

 いい匂いだ。俺は好きだ」

「きさまに聞いた私が馬鹿だった」

フェーベルは鼻を鳴らして突き放し、主将アレクサの籠る陣幕へと顔を向けた。

「行きはよいよい、帰りは恐いと。立て続けに襲撃を受けて軍の足も鈍っている。

 差し当たり大将に命運を託すしかない我らだが、さてアレクサはなにをお考えか……」


そう呟いたフェーベルの視線の先、騎馬が一騎駆けこんできた。

「……うん?あれは」

斥候の東部騎士であった。

「ご注進!御大将はいずこにおわすか!?」

総大将アレクサがいるであろう『二枚並んだ鷹の羽』の軍旗の下に駆けこんでいく。


「何ごとか、在ったようだな。殿が追撃を受けたか?」

乱れた髪を紐で纏めながらフェーベルが呟くと、隻眼のドレーが咆哮した。

「丁度いい!雑魚ばかりで喰い飽きていた所だ!」



「後方15里に王国軍を確認。およそ4000!此方に真っ直ぐ、接近中です」

諸侯の集まった陣幕の高座にて、床几に座したアレクサが斥候の報告に肯いていた。

王国での1里は、およそ4キロ。平坦な道を人が1時間に歩ける距離とほぼ同等であった。

時間的距離とほぼ同義であったが、大軍になれば当然に移動速度は低下する。


彼我の距離は60キロ。

通常、敵地を進軍中の軍勢が敵勢を発見できる距離ではないが、東部武者はよく馬を駆る。

アレクサは立て続けに斥候を放ち、本隊の周囲に円の形に哨戒と偵察の網を織り上げていた。

同時に主要な街道には、練達の軽騎兵を複数派遣して、軍の接近を監視させてもいる。

帝国との戦の時など、最長で200キロ彼方から、敵を察知して本隊へと報告してのけた騎兵たちであった。


無論、王国軍の方でも別の手段でアレクサ軍の位置を把握しているであろう。

そもそも、戦場は王国が中原。小細工を弄する必要さえない。

バルクホルンが王国軍の一翼を担った時にそうであったように、狼煙や伝令、伝書鳩を駆使し、各地の城市や砦と盛んに情報をやり取りしているに違いない。


「数は2000……少ないな」

2000とは、アレクサ軍が最後尾に喰らい付いた王軍の数である。

その背後より更に2000が追随していたが、これは戦闘に加わらずに距離を取っていた。

帰国を急ぐとしても蹴散らすのは容易い数だが、無論、総勢ではあるまい。


「……追撃にしては、少なすぎる」

銀髪のザカーのみ疑問を呈したが、アレクサはそっけなく肯いただけであった。

「或いは、功を焦った部隊の突出かも知れんな」

「先頭集団か。恐らく後続がいるが、殿は大ゲッツぞ。心配はあるまい」

大ゲッツは、攻守に欠ける処なき百戦錬磨の老将である。

諸将が口々に意見を戦わせる中、ザカーのみが地図を眺めてぼそりと呟いた。

「……気に入らんな」

アレクサを見るが、腕組みしたまま、無表情で目を閉じている。




各地に派遣されていた守備隊が合流しつつあり、アレクサが軍勢は総数38000まで膨れ上がっている。

軍勢が膨れ上がる程にその動きが鈍るは、抗えぬ戦争の法則であった。

40000を数える大軍ともなれば、隊列は全体で7里(20キロ)の長さにも及ぶ。

前衛が予期せぬ遭遇戦を始めた場合、最後尾が合流するまでに1日が掛かる計算であった。


東部諸侯が兵のうち18000が騎兵であり、12000が徒士であった。残り8000が牛馬の輜重隊である。

東部諸侯は此れを8000から2000程度の小軍勢に分け、退路を急がせていた。

他に降った豪族や諸侯の兵士で嵩増しした2万ほどが、各占領地へと派遣されている。


後衛は3000。老ゲッツであれば、充分に殿の任を果たすであろう。

万が一、支えきれぬ大軍が攻め寄せるならば、中軍が合流して反転攻勢に出ればよい。


万全の構えである。が、どうにも胸騒ぎが抑えられぬ。杞憂であろうか。

そう思いながらも、警戒を密にせよ、とザカーは命じた。

「此処数日、本国との連絡が途絶えがちなのも気に掛かる。

 引き続き、偵察を続けよ。斥候を絶やすな。

 動きが在らば、遂次、報告させるのだ」


陣幕から出ていく伝令と入れ違いに、先刻とは別の斥候が陣幕へと駆け込んできた。

「ご注進!北の街道より軍勢が南下中!数は少なく見積もって1万以上!」

「……なに?」

絶句したザカーが総大将を振り返ると、アレクサが立ち上がり獰猛に笑っていた。

「……随分と時間が掛かったが、ようやく食いついたか」



王国は、広大無辺の領域を誇っている。

古代王朝が征する前、中原と称される領域には、かつてガリシアと言う国があった。

その旧ガリシアの地だけで、南北200里(800キロ)に渡る。

およそ他の大国に匹敵する領域の広さであった。


「数は、4万をやや下回ると思われます。

 恐らくは、トゥーレ伯を中心とした中原北東部の諸侯かと」

片膝をついての騎士の報告に、ザカーが舌打ちした。 

「なるほど。王都を包囲中に中原諸侯に手を廻していたか」


中原諸侯にとっては地元での防衛戦であるだけに、足手纏いの輜重隊も抑えられる。

故に、兵数が即ち戦闘部隊の実数に近しいと見ることが出来る。



「それにしても……北ガリシアだけで4万とは些か信じがたい

 ……北部諸侯は本当に混じっていないのか?」

フェーベルの問いかけに騎士が肯いた。

「ハッ!旗からするに、北部ガリシアの諸侯が中心かと!」


中原より戦火が遠ざかること20年。もっとも豊饒なる大地を抑えし中原諸侯の富強たるや、東方諸侯の想像を絶していた。


「今は秋の農繁期、麦の刈り入れを行わねばならぬ時期でこれか」

「冬の農閑期であれば、3倍から5倍は動員されたであろうよ」

「なんと、我らは同時に2つの王国を敵に廻したかのようだぞ」

夕餉に徴発した豚の肉を喰らいながら、口々に言い合う諸侯であったが、口調は楽しげであり、畏れの色は見えぬ。

肯いたアレクサが、口の端を吊り上げながら焚火の前で足を組み直した。

「……トゥーレ伯は、北方諸侯への備えであった。

 役立たずのアラミス伯が、我ら東方諸侯への備えであったのと同様にな」

 腕組みしながら少し考え、焚火に食べ終わった骨を投げ入れる。

「彼奴を動かしたと言う事は、王家め。

 北の支配者であるアトラスと何らかの取引をしたのかも知れぬな」

主君の物言いに部将のモルト士爵が呵々と笑った。

「同じ4大貴族でも、アトラス家より、我らバルクホルンの方が恐ろしいようですな。姫君」

「姫は止せ」


「で、どうなさるおつもりか?

 時を置けば、中原北部だけでなく、他の中原諸侯も動き出すやも知れませぬぞ」

白銀のザカーが問いかけに、アレクサは当然のように一言で応えた。

「踏み潰す」




紋章をしるした軍旗が、勇壮に翻っていた。

北部ガリシア諸侯の軍勢37000は、長い隊列を連ねて街道を南下している。

王家の要請に応じ、アレクサ・バルクホルン及び東部諸侯との戦いに赴くのである。

既に中央ガリシアの諸侯軍が、アレクサによって木端微塵に粉砕されている。

とは言え、ろくに戦を知らぬ王都近隣の諸侯と、ガリシア北部において精強な北部諸侯の叛乱に備え、また騎馬民族との戦いに明け暮れている北ガリシア諸侯では、同じ中原でも兵の練度も編成も装備も質がまるで異なっている。


行軍は順調であった。天気は晴天であり、踏み固められた街道は堅く乾いている。

羽根飾りを付けた兜の騎士、長槍を連ねた歩兵たち、飾り帯を付けた士官がクロスボウを背負った歩兵たちに檄を飛ばしている。

通り過ぎる農村で少年や少女が歓声を上げるのに答えて、トゥーレ伯爵マルセルは手を上げた。


「この精兵であれば、さしもの叛徒共も打ち破れましょうぞ」

勇壮な行進を目にし、王家からの軍監ヴェーシル卿が満足げに肯いた。

傍らで、慣れぬ馬上にフラフラしている令嬢が「そうだと良いのだけれど」と肯いている。


馬から転げ落ちそうになった令嬢を、逞しい腕が素早く抱きとめた。

「おっと、お嬢さん。危ないですよ」

令嬢が、トゥーレ伯爵の胸に寄りかかった。

「ん……エフィ、馬に乗るのが殆ど初めてで」

髭が素敵なナイスミドル。えひぃ!


胸を高鳴らせつつ微笑んでいるエフェメラ・グリーンに、伊達男の伯爵が笑いかけた。

「筋はよさそうだ。馬と気持ちを通じあわせるのが上手い。

そう言う子は、良い騎手に慣れる素質がある」

「あ、ありがとうございます」


「グリーン嬢!なにをしている!無礼であろう!離れぬか!」

戦えぬエフェメラに護衛としてつけられた老騎士が叱りつける。


「きゃ、恐い!」

叱りつけられたエフェメラが半泣きになったが、老騎士は微塵も遠慮せずに言い放った。

「ご無礼掴まつった。伯爵閣下。さあ、離れなされ」


「あ……ご、御免なさい」

子犬のようにしゅんとしてみせるエフェメラ。

「構わん。構わん。また寄りかかってくれ」

離れていくエフェメラを見ながら、だらしなく相貌を崩しているトゥーレ伯。


拍車の背後で女騎士が一人咳払いした。

「可愛い娘だ。そうは思わんかね?」

女騎士が首を横に振るう。

「あれは、腹に一物持ってますよ」


「それがまたいい。可愛いじゃないか」

トゥーレ伯マルセルは、社交界において数々の美女と浮名を流してきた色男である。

エフェメラのあざとさを見抜いていたが、それを含めて愛でている。

女騎士はそんな主君とエフェメラのどちらに呆れたのか。ため息を漏らした。


「あの書記の娘。なにを好き好んで戦場までやって来たのやら」

「……彼女な、恋人と父親をアレクサに殺されたそうだ」

伯爵が微笑んだままに答えた。

「それは……」

絶句した女騎士を眺めて、伯爵が片目をつぶった。


「つまりだ。乙女じゃない。互いの合意があれば、責任を取る必要もない」

女騎士が苦虫を潰したような表情になった。

「……少しは、ご自重なさってください。まったく。王家からの使者の一員ですよ」

いや、他の女文官や騎士に被害がいかないなら、それはそれでいいのだろうか。

首を傾げつつ、思案する女騎士。


「それにしても、相手はアレクサか。

 気を引き締めて掛からねばならんぞ。マリアンヌ」

「アレクサ・バルクホルンをご存じなのですか?」

女騎士が意外そうに尋ねてきたが、伯爵は一瞬だけ沈黙した。

「3年前に北の戦役で肩を並べた」

マリアンヌが絶句した。


王国の遥か北東の彼方より、数多の国々を滅ぼしながら、数十万の騎馬民族が来寇した。

マリーの身内も、幾人となくその戦いに出征し、そして帰ってこなかった。


「……辛うじて退けたがな。酷い戦だった。

アトラスは当主が戦死し、バルクホルンも深手を負った。そして、アレクサも癒えぬ傷を負った」

トゥーレ伯爵マルセルは、淡々と呟いた。

瞳はどこか遠い果てを見ているかのように、在らぬところを彷徨っていた。

或いは、過去の戦場を見つめているのかも知れない。


「では、アレクサ・バルクホルンと閣下は戦友だったのですね」

ぽつりと呟いた女騎士の言葉に、トゥーレ伯はやわらかに微笑みを浮かべた。

「あんな戦は二度と御免だが……互いに幾度と救い、救われもした。

 今度は、敵か……まったく、世は侭ならんものだな」




トゥーレ軍の長蛇の列を眼下に見下ろす丘陵の頂で、東部勢の騎将たちが集結していた。

「トゥーレ軍は、南北に長く隊列を伸ばしています。

 横合いから奇襲をかけて分断するには、絶好の好機かと」

横合いに立つ騎士の提案をアレクサは一顧だにせず退けた。

「あれは騎兵への誘いだ。マルセルの何時のもの手よ。

 彼奴は陣形を信じられぬほど素早く変化させる」


「ドレー、フェーベルは二千を率いて両翼より攻め上がれ。

マルセルの本陣は、全軍の指揮を執り易き中軍に位置しているであろう。

全軍を一つの組織として動かすのが、彼奴のいくさの故な」


「……マルセル?」

訝しげに呟いた部将の一人バウアーに、アレクサが髪をかき上げて舌打ちする。

「……ん。ああ、トゥーレ伯のことだ。

 バウアーは、トゥーレ伯の後背を遮断し、可能な限り増援を阻止せよ」

髪をかき上げながら、眼光鋭くアレクサはトゥーレ軍の中腹を睨みつける。

「我が軍が敵を前衛より貫き、総大将の首を上げる!

 それまで敵の本陣を拘束するのがお前たちの責務!ゆくぞ!」



「……敵襲!前衛の部隊が敵襲を受けました!」

トゥーレ伯の本隊に伝令が駈け込んで来たのは、太陽が中天からやや西へ傾いてからであった。

「数およそ2000!旗は、双翼の紋章!アレクサです!アレクサ・バルクホルンです!」

「来たか、アレクサ!」

伊達男の伯爵が、嬉しそうに笑っていた。


「馬鹿な!バルクホルンが軍勢は、20里も南の筈!」

王家よりの軍監ヴェーシル卿が喚いていた。

「騎兵のみで飛ばしてきたのだよ。彼女の何時もの手だ」

トゥーレ伯は、快活に笑っている。


襲撃を知らせる為の角笛が次々と吹き鳴らされている。

「えひぃ!」

「斥候はなにをしていた!ええい!」

動揺して奇怪なしゃっくりを繰り返している令嬢に、狼狽し、喚いている老騎士を既に相手にせず、トゥーレ伯は、味方に次々と伝令を飛ばし始めた。

「本陣は後退しつつ、陣形を整えろ。各軍団は槍兵を前に!

後衛の部隊に前進と伝令。本陣と合流させる。

第9陣は、本陣左手に。第7陣は、本陣の右手を守らせろ!」

先刻までの優男とは同一人物と思えぬ大音声で指示を行き渡らせている。


トゥーレ伯及びガリシア北部諸侯の軍勢は、街道上において全13段の部隊に分かれていた。

伯爵の本陣は第8陣に位置している。


「第1陣が突破される前に、出来るだけ陣形を整える!」

長さ13尺(4メートル)のパイクの列の後ろに、クロスボウを展開させ、トゥーレ伯は角笛の響く彼方を睨みつけた。

「アレクサは、両翼に騎兵を展開させている筈だ。

 本陣を拘束し次第、本人が突っ込んでくるぞ!」



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