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それは、奇跡の物語(それは、終らない苦しみの物語)

 女は、とある王国の海の深くに住む魔女だった。

 魔女は人魚姫に薬の効果を説明した後、薬を作って渡す。


 人魚姫は魔女が舌を失った事を心配しつつも感謝して薬を飲む。


 王子に拾われた人魚姫は、毎夜あの浜辺へとやってきては足を海に浸け、歌を唄う。


 毎夜城を抜け出す人魚姫を心配して後をつけてきた王子はそこで美しい声を聞く事となる。


 王子に気付いた人魚姫は自分が王子を助けた人魚だということ、自分が王子を慕っていることを打ち明ける。

 王子は人魚姫を抱き寄せ今まで気づかなかったことを詫びた。

 そして、自分も人魚姫を忘れられず、その面影を追い求めていた事を語った。


 そうして王子と人魚姫は結婚する。


 そうして奇跡が起きた世界が終わる。










 ▽ ▽ ▽










 ()は、どこか分からない白い世界に立っていた。


「やぁ、君かいバグの正体は」


 ()の前に真っ白な男が立つ。


「僕かい?僕はこの世界の管理者であり観察者。まぁ、君たちにとっての神みたいなものだよ」


 ()は、なぜ神が自分の前に現れたのかを尋ねる。


「そうだな……簡単に言えば君が邪魔したからかな」


 ()は、邪魔をしたとはどういうことかを尋ねる。


「僕はこの世界を繰り返すようにしている。それはひとえにあの人魚姫の悲哀が見たかったから。幾度となく続く最高のショー。それを君がぶっ潰したのさ。ハッピーエンドなんて面白くない」


 ()は、憤慨する。


「うるさいなぁ、いいよもう。もう僕の力ではあのハッピーエンドは変えられない。絆が繋がっちゃったからね。もし絆を断ち切るほどの力を使えば上位存在が黙っていないし」


 ()は、安堵する。理解出来ない言葉は存在したものの、人魚姫の幸せは変わらないと気づけたから。


「だから僕は君を見ることにした。君が絶望して全てをぶち壊すショーを」


 ()は、尋ねる。ショーとは何かを。


「今は分からなくていいさ、ただ一つ。終わらせたいならこのナイフを人魚姫の胸に刺せばいい。それで世界が終わるだろう。さぁ、君も戻る時間だ。精々いい顔をしてくれよ」


 ()の意識が薄れていく。薄れゆく意識の中で、煌めくナイフの刃だけが頭から離れなかった。

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